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飼料添加物の動物試験の実施に関する基準について

63畜A第3039号
昭和63年7月29日
農林水産省畜産局長、水産庁長官
 農林水産大臣が,飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号)第2条第3項の規定に基づき飼料添加物の指定を行おうとする場合又は同法第3条第1項の規定に基づき基準若しくは規格の設定等を行おうとする場合は,同法第2条第3項又は同法第3条第2項の規定に基づき農業資材審議会の意見を聴くこととされており,同審議会がこれらの審議を行うに際して,その指標となる飼料添加物の評価基準については,先に「飼料添加物の評価基準の設定等について」(昭和52年4月5日付け52畜A第1200号,52水漁第1111号農林省畜産局長,水産庁長官通達。以下「評価基準」という。)をもって通達したところである。今般,評価基準に基づいて実施される試験資料の信頼性の一層の確保を図るため,試験の実施に関する遵守事項等を取りまとめた「飼料添加物の動物試験の実施に関する基準」(以下「本基準」という。)を別添のとおり定めたので,下記事項に留意の上,貴管下関係者に対する周知徹底方よろしくお願いする。
 なお,本基準の設定は,昭和60年7月30日に決定された「市場アクセス改善のためのアクション・プログラムの骨格」において,昭和63年度中(昭和63年7月30日まで)に飼料添加物のGLP制度の導入を検討することとされた措置に対応するものである。
1.本基準の導入の趣旨について
 本基準は,飼料添加物についての安全性及び残留性に関する試験を実施する際の遵守事項を定めたものであり,農業資材審議会が飼料添加物の指定又は基準・規格の設定等についての審議を行うに当たり必要とする資料の信頼性をより一層確保し,飼料添加物の安全性評価をより的確かつ厳正に行おうとするものである。
2.本基準の適用時期について
 本基準は,昭和64年8月1日以降に開始する試験から適用するものとする。
3.本基準の適用対象試験範囲について
 本基準は,飼料添加物の指定,基準・規格の設定等のために必要な安全性及び残留性に関する試験のうち次に掲げる試験を適用対象とする。
ア 一般毒性試験
(ア) 単回投与毒性試験
(イ) 反復投与毒性試験(短期)
(ウ) 反復投与毒性試験(長期)
イ 特殊毒性試験
(ア) 世代繁殖試験
(イ) 発生毒性試験
(ウ) 発がん性試験
(エ) 変異原性試験
(オ) その他の試験(局所毒性,吸入毒性等)
ウ 対象家畜等を用いた飼養試験
エ 対象家畜等を用いた残留試験
4.本基準適用対象試験の資料の取扱いについて
ア 農業資材審議会における資料の取扱い
 農業資材審議会の審議において,3.のアからエまでに掲げる安全性及び残留性に関する試験(以下「適用対象試験」という。)の成績に関する資料は,本基準又は本基準が準拠するOECD(経済協力開発機構)の定めるGLPに関する原則(以下,これらを「GLP」という。)に従って実施された試験により収集されたものでなければならないこととし,GLPに従って実施されたものでない試験により収集された資料については,原則として同審議会の審議資料として受け入れないこととする。
 なお,日本国外に所在する試験施設において実施された試験により収集された資料については,当該試験施設がOECD GLP原則に準拠していると認められる当該国のGLP基準に適合しており,かつ,当該基準に基づき試験が実施された場合に限り,受入れを認めることとする。
イ GLPへの適合性の確認
 試験施設がGLPに従って適用対象試験を実施したか否かの確認は,必要に応じ,試験施設に対する査察,適用対象試験資料に対する書面審査又は試験施設の運営管理者からの報告徴収により行うものとする。
5.適用対象試験の成績に関する資料への添付資料について
 GLPに従って実施された試験により収集された資料には,原則として次に掲げる資料が添付されていなければならない。
ア 当該試験が実施された施設の名称,所在地,設立年月日,設立主体,組織,人員構成,敷地面積,試験設備の存する建物及び試験設備の概要等を記載した資料
イ 当該試験に従事した研究者(試験責任者を含む。)の氏名及び業務分担並びにこれらの者の履歴,研究歴及び所属する学会又は学術団体名を記載した資料
ウ 信頼性保証部門の担当者の氏名及び所属を記載した資料
エ 当該試験がGLPに従って実施されたものである旨の運営管理者又は試験責任者の陳述書
オ GLPへの適合性の確認を行う権限を有する政府機関又はこれと同等と認められる関係機関による当該試験施設の査察の評価結果の写し等,当該試験がGLPに従って実施されたことを確認できる資料
 ただし,OECDが作成する,GLPへの適合が確認された試験施設のリスト等により,GLPに従って試験が実施されていることが確認される場合についてはこの限りではない。
飼料添加物の動物試験の実施に関する基準
第1章 総則
(目  的)
第1条 この基準は,飼料添加物の指定,基準・規格の設定等のために必要な安全性及び残留性に関する試験の実施に関する遵守事項等を定め,当該試験成績に関する資料の信頼性の確保を図ることを目的とする。
(定  義)
第2条 この基準において用いる主な用語の意味は,次の各号に定めるとおりとする。
(1) 試験施設とは,試験を実施するのに必要な全ての人員,試験場所及び運営の単位をいう。
(2) 試験場所とは,試験の全部又は一部が実施される場所をいう。
(3) 運営管理者とは,この基準に従って試験施設が運営されていることに関し,責任と権限を有する者をいう。
(4) 試験場所管理責任者とは,管理を委任された試験部分について,当該試験がこの基準に従って実施されていることを保証することについて,責任を有する者をいう。
(5) 試験委託者とは,試験施設に試験を委託する者又は農林水産省に試験成績に関する資料を提出する者をいう。
(6) 試験責任者とは,試験の実施全般に対して責任を有する者をいう。
(7) 主任試験員とは,複数にわたる試験場所で実施される試験において試験責任者を代行し,試験の委任された部分について限定された責任を有する者をいう。ただし,試験責任者が有する責任のうち,主任試験員が関与する試験の試験計画書及びその修正の承認,最終報告書並びに試験がこの基準に準拠していることを保証することについては,委任できないものとする。
(8) 信頼性保証部門とは,試験がこの基準に準拠していることを運営管理者に対して保証するための組織をいう。
(9) 標準操作手順書とは,試験計画書若しくは試験指針(農林水産省消費・安全局長が定める飼料添加物の評価基準,OECD(経済協力開発機構)が定める試験指針等をいう。以下同じ。)には詳細に明記されない試験又は当該試験に関する作業に関係するあらゆる手続を文書にしたものをいう。
(10) 主計画表とは,試験施設における全ての試験に関する作業量の評価又は試験の追跡調査のために必要な情報を記載した文書をいう。
(11) 試験とは,被験物質の安全性評価のため,実験室的条件下における試験系を用いて行われる試験及び対象家畜等を用いて実施される試験であって,効果に関する試験以外のものをいう。
(12) 試験計画書とは,試験実施に当たりその目的と実験方法を定める文書をいい,試験計画書に修正がなされた場合には修正後のものをいう。
(13) 試験計画書の修正とは,試験開始日以降に生じた試験計画書の意図的な変更をいう。
(14) 試験計画書又は標準操作手順書からの逸脱とは,試験開始日以降に生じた試験計画書又は標準操作手順書の予期せぬ変更をいう。
(15) 試験系とは,試験に供される生物学的,化学的若しくは物理学的な系又はこれらを組み合わせた系をいう。
(16) 生データとは,試験での実際の観察及び活動の結果として得られた全ての記録と文書の原本又はそれらの正確なコピーをいう。生データは,写真,マイクロフィルム若しくはマイクロフィッシュコピー又はコンピュータにより読みとり可能な媒体,口述の観察記録,自動化された機器から得られるデータ及び第17条に規定する期間にわたり情報を安全に保管できると認められるデータ保管媒体を含むものとする。
(17) 標本とは,検査,分析及び保管のために試験系から採取されたものをいう。
(18) 実験開始日とは,当該試験に特有の生データが得られた最初の日をいう。
(19) 実験完了日とは,試験で生データが得られた最後の日をいう。
(20) 試験開始日とは,試験責任者が試験計画書に署名又は押印した日をいう。
(21) 試験完了日とは,試験責任者が最終報告書に署名又は押印した日をいう。
(22) 被験物質とは,試験に供される飼料添加物,化学的物質,生物学的物質又はそれらを含む製剤をいう。
(23) 対照物質とは,被験物質と比較するために試験に用いられるものをいう。
(24) バッチ又はロットとは,均一性を有するとみなされる方法であって,一定の製造期間に生産された被験物質又は対照物質の一定量をいう。
(25) 媒体とは,被験物質又は対照物質を容易に試験系に投与又は添加できるようにするため,混合,分散又は可溶化する目的で使用される物質をいう。
(26) 対象家畜等とは,被験物質を飼料添加物として投与することが予定されている動物をいう。
第2章 試験施設の職員及び組織
(運営管理者の責務)
第3条 運営管理者は,その試験施設においてこの基準が遵守されていることを保証しなければならないものとし,少なくとも次の各号に掲げる事項を行わなければならない。
(1) 試験施設内で管理運営の責務を果たしている者を特定する書類を備えること。
(2) 適正な試験実施のために,知識及び経験を有する十分な人数の職員,適切な施設,機器並びに材料が利用できるようにすること。
(3) 試験に携わる者の資格,訓練,経験及び職務分掌の記録を保持すること。
(4) 職員自らが遂行する職務を明確に理解させ,必要な場合には,その職務の遂行のための訓練を行うこと。
(5) 標準操作手順書を定め,これに従って職務が遂行されるようにするとともに,初版から改訂版まで全ての標準操作手順書を承認すること。
(6) 信頼性保証部門の担当者を指名し,当該担当者が,この基準に従って信頼性保証の責務を果たすようにすること。
(7) 試験開始前に適切な資格,訓練及び経験を備えた者を,試験ごとに試験責任者として指名すること。また,試験責任者の交替が必要な場合には,定められた手順に従って実施し,その記録を文書で残すこと。
(8) 複数の試験場所で実施される試験の場合,適宜,その試験の委任された部分を指導監督するのに適切な訓練,資格及び経験を備えた者を主任試験員として指名すること。また,主任試験員の交替が必要な場合には,定められた手順に従って実施し,その記録を文書で残すこと。
(9) 試験責任者が文書により承認した試験計画書を確認すること。
(10) 承認された試験計画書の写しが,試験責任者により信頼性保証部門に配付されるようにすること。
(11) 全ての標準操作手順書を保管すること。
(12) 資料保管施設の管理に責任を有する者(以下「資料保管責任者」という。)を指名すること。
(13) 主計画表を承認し,保管すること。
(14) 試験に用いられる機器,資材等を適宜供給するように努めること。
(15) 複数の試験場所で実施される試験の場合にあっては,試験責任者,主任試験員,信頼性保証部門及び試験に従事する者の間で密接な連絡体制を確立すること。
(16) 被験物質及び対照物質の特徴が適切に把握されるようにすること。
(17) コンピュータシステムを用いる場合には,この基準に従い,作動確認,操作及び保守管理がなされることを保証するための手順を定めること。
2 複数の試験場所で試験が実施される場合,各試験場所管理責任者(該当する場合に限る。)は,第1項中,(7),(9),(10)及び(15)を除く各号に掲げる事項について責務があるものとする。
(試験責任者の責務)
第4条 試験責任者は,試験の実施全般及びその最終報告書に対して全ての責任を有する唯一の者であるものとする。
2 試験責任者は,次の各号に掲げる事項を行わなければならない。
(1) 試験計画書及びその修正について,日付を入れて署名又は押印して承認すること。
(2) 信頼性保証部門に試験計画書及びその修正の写しを適宜配付するとともに,試験実施中は,必要に応じて信頼性保証部門と密接に連絡をとること。
(3) 試験計画書及びその修正並びに標準操作手順書について,試験に従事する者がそれらを利用できるようにすること。
(4) 複数の試験場所で実施される試験の場合にあっては,当該試験の試験計画書と最終報告書に,全ての主任試験員の役割,試験に関与する全ての試験施設及び試験場所を特定し,明記すること。
(5) 試験計画書で明記した手順に従うとともに,試験計画書からの逸脱が試験の質と完全性に及ぼす影響を評価し,記録を文書で残し,必要に応じて適切な是正措置をとること。
 また,試験の実施中に生じた標準操作手順書からの逸脱を確認し,記録すること。
(6) 全ての生データが記録されていることを確認し,当該確認の日付を付し,署名又は押印すること。
(7) コンピュータシステムが用いられる場合には,当該コンピュータシステムが適正に作動することを事前に確認すること。
(8) データの妥当性に対して責任を有し,かつ,試験がこの基準に従って実施されていることを明確に示すため,最終報告書に日付を付し,署名又は押印すること。
(9) 試験完了後,試験計画書,最終報告書,生データ及び関連する資料を資料保管施設に保管すること。
(主任試験員の責務)
第5条 主任試験員は,試験の委任された部分について,この基準に従って実施しなければならない。
(試験に従事する者の責務)
第6条 試験に従事する者は,この基準の趣旨を熟知し,試験で自らが担当する部分について習熟していなければならない。
2 試験に従事する者は,次の各号に掲げる事項を行わなければならない。
(1) 試験で自らが担当する部分に適用される試験計画書及び必要な標準操作手順書を習熟し,それらに従うこと。また,試験計画書又は標準操作手順書からの逸脱については,文書で記録し,直接,試験責任者又は主任試験員に報告すること。
(2) 生データは,収集後直ちにこの基準に従って,正確に記録することとし,そのデータの質に対して責任を有すること。
(3) 自らへの危険を最小限に抑え,かつ試験の完全性を確保するため,健康に留意すること。また,試験に影響を及ぼすおそれのある作業から除外され得るよう,知り得た健康又は医学的な状態のうち試験の実施に関係する事項につき,試験責任者又は主任試験員に報告すること。
(信頼性保証部門の責務)
第7条 試験施設は,実施される試験がこの基準に準拠していることを保証するために,信頼性保証部門を設けなければならない。
2 信頼性保証部門は,試験手順を熟知し,運営管理者に指名され,運営管理者に対して直接責任を有する担当者からなるものとする。
3 信頼性保証部門の担当者は,保証する試験の実施に関与してはならない。
4 信頼性保証部門は,次の各号に掲げる事項を行わなければならない。
(1) 試験施設で使われている全ての承認済み試験計画書の写し,標準操作手順書の写し及び最新の主計画表の写しを保持すること。
(2) 試験計画書がこの基準に準拠するために必要な情報を含んでいるかどうかを検閲し,その記録を残すこと。
(3) 試験がこの基準に従って実施されているかどうかを確認するために,検閲を実施すること。なお,検閲の実施に当たっては,試験計画書及び標準操作手順書が試験に従事する者に利用できるような状況にあるか否か並びに試験がこれらの文書に従って実施されているかどうかを確認し,その記録を残さなければならない。
(4) 信頼性保証部門の責務に関する標準操作手順書には,検閲に関する次に掲げる方法を明記すること。ただし,(ウ)については,該当しない場合には記載する必要はないものとする。
(ア) 試験に係る検閲
(イ) 施設に係る検閲
(ウ) 試験プロセスに係る検閲
 なお,検閲の記録は必ず文書化し,保管すること。
(5) 方法,手順及び観察結果が正確にかつ完全に記述され,また,報告された結果が正確かつ完全に試験の生データを反映されていることを確認するために,最終報告書を検閲すること。
(6) 全ての検閲結果を書面で速やかに運営管理者及び試験責任者に報告するとともに,必要に応じて,主任試験員及び各試験場所管理責任者(該当する場合に限る。)にも報告すること。
(7) 検閲を実施した試験の段階,実施した検閲の種類,日付及び結果について運営管理者,試験場所管理責任者(該当する場合に限る。),試験責任者及び主任試験員(該当する場合に限る。)にそれぞれ報告した日付を明記した信頼性保証書を作成し,署名又は押印すること。
第3章 試験施設,機器,材料及び試薬
(施設)
第8条 試験施設は,次の各号に掲げる事項について,実施する試験に応じ,該当する事項を遵守しなければならない。
(1) 試験施設は,試験の必要条件を満たし,かつ,試験の正当性を損なうような障害を最小にとどめるため,適切な広さ,構造及び配置を有しなければならない。
(2) 試験施設は,各試験の適切な実施を保証するため,異なる操作が十分に分離されて行われるよう設計されていなければならない。
(3) 試験施設は,バイオハザードである又はそのおそれのある物質若しくは生物が関係している個々の試験系及び個々の試験を分離できるよう,十分な数の部屋又は区域を備えていなければならない。
(4) 試験施設は,試験系の品質の低下がないことを保証するため,疾病の診断,治療及び制御のために利用できる適切な部屋又は区域を備えていなければならない。
(5) 試験施設は,機器の保管に必要な保管室又は区域を備えていなければならない。保管室又は区域は,試験系がある部屋又は区域とは分離し,感染,汚染又は品質の低下を最小限にしなければならない。
(6) 試験施設は,汚染及び混同を防ぐため,被験物質及び対照物質の受領並びに保管のための部屋及び媒体と被験物質の混合のための部屋又は区域を分離しなければならない。
(7) 被験物質及び対照物質の保管室又は区域は,試験系がある部屋又は区域から分離していなければならない。また,被験物質及び対照物質の保管室又は区域は,これらの物質の同一性,濃度,純度及び安定性を維持し,かつ,危険物質の安全な保管を保証するのに適切なものでなければならない。
(8) 資料保管施設は,試験計画書,生データ,最終報告書,被験物質及び対照物質のサンプル並びに標本の厳重な保管及び検索ができるものでなければならない。資料保管施設の設計と保管の条件は,急速な品質の低下から保管物を保護するものでなければならない。
(廃棄物の取扱い及び処理)
第9条 廃棄物の取扱い及び処理は,試験の完全性を損なわないように実施されなければならない。これには,廃棄物の適切な収集,保管及び処理を行うための施設の設置,汚染除去手順及び輸送手順も含まれるものとする。
(機器,材料及び試薬)
第10条 データの作成,保管及び検索並びに試験に関連した環境要因の制御のために使用される機器は,作動確認されたコンピュータシステムを含めて,適切に配置及び設計され,かつ,十分な処理能力を備えていなければならない。
2 試験で使用される機器は,標準操作手順書に従って,定期的に点検,清掃,保守及び較正され,かつ,これらの記録は,保管されなければならない。また,較正は,必要な場合には,国内又は国際的な測定基準に従って行われなければならない。
3 試験で使用される機器及び材料は,試験系に悪影響を及ぼさないものでなければならない。
4 試薬及び溶液には,同一性,濃度(必要な場合),有効期限及び特定の保管条件を示すラベルを表示するとともに,入手源,製造又は調製日及び安定性に関する情報が備えられていなければならない。なお,有効期限は,文書化された評価又は分析に基づき延長することができるものとする。
第4章 操作及び被検物質等の取扱い
(試験系)
第11条
1 物理学的・化学的試験系
(1) 物理学的・化学的データを得るために使用される機器は,適切に配置及び設計され,かつ,十分な処理能力を備えていなければならない。
(2) 物理学的・化学的試験系の完全性が確保されなければならない。
2 生物学的試験系
(1) データの完全性を保証するため,生物学的な試験系の保管,収容,取扱い及び管理を行うために適切な条件が確立され,維持されていなければならない。
(2) 新しく受け入れた動物等は,それらの健康状態が評価されるまで隔離されなければならない。
(3) 異常死又は疾病が発生した場合は,当該ロットを試験では使用してはならず,必要に応じて,人道的に処分しなければならない。
(4) 実験開始日には,試験系に試験の目的又は実施を妨害する疾病や病的状態が無いことを確保しなければならない。
(5) 試験中に罹病や傷害を受けた試験系は,試験の完全性を維持するために,必要に応じて,隔離して治療処置しなければならない。
(6) 試験前又は試験中の疾病の診断及び治療処置は,記録されなければならない。
(7) 試験系の入手源,受領日及び受領時の状態の記録を保管しなければならない。
(8) 生物を用いる試験系は,被験物質又は対照物質を最初に投与又は添加する前に,適切な期間及び試験環境に順応させなければならない。
(9) 試験系を適切に識別するために必要な全ての情報を,その収容施設又は容器に表示しなければならない。試験実施期間中に収容施設又は容器から移した個々の試験系には,それを識別できるよう適切な表示を行わなければならない。
(10) 試験系を収容する施設又は容器は,使用期間中,適切な頻度で清掃して衛生的な状態が維持されていなければならない。また,試験系と接触する物は,全て試験の妨げとなる汚染が無いことを確保しなければならないものとし,動物の敷料は適宜交換するとともに,駆虫及び消毒薬品の使用は文書で記録しなければならない。
(被験物質及び対照物質の受領,取扱い,サンプリング及び保管)
第12条 被験物質及び対照物質の特性,受領日,有効期限並びに受領量及び使用量の記録を保管しなければならない。
2 被験物質及び対照物質の取扱い,サンプリング並びに保管においては,均一性及び安定性を確認し,汚染又は混同が起こらないように手順を定めなければならない。
3 保管容器には,確認のための情報,有効期限及び保管条件を表示しなければならない。
4 被験物質及び対照物質を適切に識別しなければならない。(例えば,コード,CAS番号,名称,生物学的パラメーター等。)
5 試験ごとに,被験物質及び対照物質の特性が判明していなければならない。(バッチ又はロット番号,純度,組成,濃度その他バッチ又はロットを規定する事項)
6 試験委託者から被験物質が提供される場合には,試験で使用される被験物質の同一性を確認するため,試験委託者と試験施設との間に協力体制を確保しなければならない。
7 保管及び試験条件下での被験物質及び対照物質の安定性が判明していなければならない。
8 被験物質を媒体と混合して投与又は添加する場合,その媒体中での被験物質の均一性,濃度及び安定性が明らかにされていなければならない。
9 被験物質の各バッチ又はロットから分析のために採取するサンプルは,実験期間が4週間未満の試験を除く全ての試験で,飼料添加物の指定又は基準若しくは規格の設定後5年間保管されなければならない。
(標準操作手順書)
第13条 試験施設には,試験施設で得られる全てのデータの質と完全性を保証するために,運営管理者の承認を受けた標準操作手順書が備えられていなければならない。また,標準操作手順書の改訂を行う場合には,運営管理者の承認を受けなければならない。
2 試験施設の各区域で,そこで実施される作業に関係する最新の標準操作手順書が利用できなければならない。また,出版されている教科書,分析方法,論文及びマニュアルは,これらの標準操作手順書を補足するものとして利用することができる。
3 試験に関連した標準操作手順書からの逸脱は,文書で記録され,試験責任者及び必要に応じて主任試験員の承認を受けなければならない。
4 標準操作手順書は,試験施設において少なくとも次の各号に掲げる分野に規定する事項について作成されていなければならない。
(1) 被験物質及び対照物質
 受領,同一性,ラベル表示,取扱い,サンプリング及び保管
(2) 機器
 使用,保守,清掃及び較正
(3) コンピュータシステム
 作動確認,操作,保守,セキュリテイ,制御変更及びバックアップ
(4) 材料,試薬及び溶液
 調製及びラベル表示
(5) 記録の取り方,報告,保管及び検索
 コンピュータシステムの使用を含めて,試験のコード化,データ収集,報告書作成,索引システム及びデータの取扱い
(6) 試験系(該当する場合)
(ア) 試験系のための部屋の配置及び部屋の環境条件
(イ) 試験系の受領,譲渡,適切な配置,特性,同一性の確認及び飼育の手順
(ウ) 試験前から試験終了時までの間の試験系の準備,観察及び検査
(エ) 試験中に瀕死又は死亡した個々の試験系の取扱い
(オ) 剖検及び病理組織学検査における標本の収集,識別及び取扱い
(カ) 試験区域内の試験系の配置及び設置
(7) 信頼性保証のための手続
 検閲の計画,実施,記録及び報告に際しての信頼性保証部門の業務
第5章 試験計画書及び試験の実施
(試験計画書)
第14条 試験計画書は,試験ごとに,試験開始前に書面で作成され,試験責任者が日付入りで署名又は押印して承認するとともに,第7条第4項第2号の規定に基づき,信頼性保証部門により確認されなければならない。
2 試験計画書の修正は,試験責任者が理由を付し,日付入りで署名又は押印して承認を行い,試験計画書とともに保管されなければならない。
3 試験計画書から逸脱した場合は,その内容が記録され,理由が説明されるとともに,試験責任者又は主任試験員が日付入りで承認し,試験の生データとともに保管されなければならない。
4 試験計画書は,少なくとも次の各号に掲げる情報を含んでいなければならない。
(1) 試験,被験物質及び対照物質に関する事項
(ア) 表題
(イ) 試験の種類及び目的
(ウ) 被験物質の名称,略称又はコード番号
(エ) 対照物質の名称
(2) 試験委託者と試験施設に関する事項
(ア) 試験委託者の名称及び所在地
(イ) 試験の実施に携わる試験施設及び試験場所の名称及び所在地
(ウ) 試験責任者の氏名及び所属
(エ) 主任試験員の氏名及び所属並びに試験責任者から主任試験員に責任が委任される試験の部分
(3) 日付
(ア) 試験開始日
(イ) 実験開始予定日及び実験完了予定日
(4) 試験方法
 参照する試験指針についての記載
(5) その他(該当する場合)
(ア) 試験系の選択の理由
(イ) 試験系の特性(種,系統,亜系統,供給源,数,体重の幅,性別,年齢その他の関連する情報)
(ウ) 被験物質及び対照物質の投与の方法及びその選択の理由
(エ) 被験物質及び対照物質の投与量,濃度,頻度並びに投与又は添加の期間
(オ) 経時的な試験手順,方法,材料及び条件に係る記載
(カ) 実施される分析,測定,観察及び検査の種類及び頻度並びに使用する統計学的方法を含む試験設計に関する詳細な情報
(6) 記録
 保管すべき記録のリスト
(試験の実施)
第15条 試験は,各試験を識別できるよう固有の表示を行わなければならない。試験から派生した標本は,その起源が確認できるように表示されなければならない。
2 試験は,試験計画書に従って実施しなければならない。
3 試験実施中に得られた全てのデータは,速やかに,かつ,正確に,読みやすく記録されなければならない。また,これらの記録には,日付入りで署名又は押印しなければならない。
4 生データの変更は,変更前の記載が不明瞭にならないように行い,変更の理由を明記するとともに,変更を行った者が日付入りで署名又は押印しなければならない。
5 コンピュータに入力されるデータは,データ入力時に,データ入力に責任を有する者により確認されなければならない。また,コンピュータシステムは,変更前のデータを不明瞭にすることなく変更できるよう設計されていなければならない。
第6章 報告及び保管
(試験結果の報告)
第16条 最終報告書は,各試験ごとに作成されなければならない。
2 主任試験員又は試験に従事したその他の研究者の報告書には,当該主任試験員又は試験に従事したその他の研究者が日付入りで署名又は押印しなければならない。
3 最終報告書には,データの妥当性について責任を有していることを明らかにするため,試験責任者が日付入りで署名又は押印しなければならない,また,最終報告書には,当該試験がこの基準に準拠して実施された旨が記載されなければならない。
4 最終報告書の訂正又は追加の手続は,試験責任者が訂正又は追加の理由を当該報告書に明記し,日付入りで署名又は押印することにより行わなければならない。
5 最終報告書には,少なくとも次の各号に掲げる情報が含まれなければならない。
(1) 試験,被験物質及び対照物質に関する事項
(ア) 表題
(イ) 被験物質の名称,略称又はコード番号
(ウ) 対照物質の名称
(エ) 純度,安定性及び均一性を含む被験物質の特性
(2) 試験委託者及び試験施設に関する事項
(ア) 試験委託者の名称及び所在地
(イ) 試験の実施に携わる試験施設及び試験場所の名称及び所在地
(ウ) 試験責任者の氏名及び所属
(エ) 必要な場合には,主任試験員の氏名及び所属並びに委任された試験の部分
(オ) 最終報告書に寄与する報告をした研究者の氏名及び所属
(3) 日付
(ア) 試験開始日
(イ) 実験開始日及び実験完了日
(4) 信頼性保証書
 検閲が実施された試験の段階を含め,実施された検閲の種類,日付及び結果について,運営管理者,試験場所管理責任者(該当する場合に限る。),試験責任者及び主任試験員(該当する場合に限る。)にそれぞれ報告された日付が記された信頼性保証部門の保証書
(5) 材料及び試験方法の記載
(ア) 使用した方法及び材料についての記載
(イ) 参照した試験指針についての記載
(6) 試験結果
(ア) 試験結果の概要
(イ) 試験計画書で規定された全ての情報とデータ
(ウ) 計算及び統計学的有意差検定を含めた結果の内容
(エ) 試験結果の評価及び考察並びに必要に応じて結論
(7) 保管
 試験計画書,被験物質及び対照物質のサンプル,標本,生データ並びに最終報告書が保管される場所
(記録及び資料の保管)
第17条 次の(1)に掲げるものは,飼料添加物の指定,規格又は基準の設定等の後少なくとも5年間,(2)から(8)までに掲げるものは5年間,当該試験を実施した試験施設の資料保管施設において保管するものとし,その後は試験委託者等当該試験成績の所有者に移管しても差し支えないものとする。
 ただし,移管する場合には,試験施設は移管に係る記録を残すとともに,所有者は,当該資料の散逸防止に努めなければならない。
(1) 被験物質及び対照物質のサンプル及び標本
(2) 各試験の試験計画書,生データ及び最終報告書
(3) 主計画表及び信頼性保証部門により実施された全ての検閲の記録
(4) 職員の資格,訓練,経験及び職務分掌の記録
(5) 機器の保守及び較正の記録及び報告書
(6) コンピュータシステムの作動確認に関する文書
(7) 標準操作手順書(改訂前のものを含む)
(8) 環境モニターの記録
2 被験物質及び対照物質のサンプル及び標本を,前項に規定する保管期間より前に処分する場合は,その理由を付し,文書で記録しなければならない。被験物質及び対照物質のサンプル及び標本は,評価に係る期間保管しなければならない。
3 資料保管施設で保管する場合には,保管及び検索が容易となるように索引を作成しなければならない。
4 資料保管施設への出入りについては,資料保管責任者又は資料保管責任者に許可された者のみ可能とする。この場合において,人と物の出入りを記録しなければならない。
(廃業規定)
第18条 試験施設が廃業し,法的な事業引継者がいない場合について,保管物は,当該試験の試験委託者の資料保管施設に移されなければならない。

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