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飼料の安全性評価基準及び評価手続の制定について

(別添)
 飼料の安全性評価及びこれに必要な試験項目等に関する基準については、「飼料の安全性評価基準の制定について」(昭和63年4月12日付け63畜B第617号農林水産省畜産局長通知)及び「養殖水産動物用飼料の安全性評価基準の制定について」(平成3年2月13日付け2畜B第2103号農林水産省畜産局長・水産庁長官通知)を定め、飼料の安全性確保を図ってきたところである。
 近年、バイオエタノールの生産増加による飼料原料価格の高騰等を背景に、飼料原料の多元化が急速に進行していることから、従来の飼料の安全性評価基準では飼料としての適否等の判断が難しいものが増えてきている。また、規格・基準を定めた上で、飼料としての製造等を認めることが適当と考えられるものもある。このような情勢の変化に対応するため、本基準において、必要に応じて農業資材審議会等の意見を聴きつつ、飼料の安全性評価を行った上で、規格・基準を定める仕組みを明確にするものである。
 なお、本評価基準は、現時点における科学的水準を裏付けとして定めたものであるが、個別の飼料の評価は、従来どおり、この評価基準に照らし、かつ、その時点における安全性等に関する新しい知見及び当該飼料の特性等を考慮し、その適否を判断することとなる。
飼料の安全性評価基準及び評価手続
Ⅰ 飼料の安全性に関する基本的条件
(1)飼料は、その使用が原因となって生産された畜水産物(家畜等の肉、乳その他の食用に供される生産物という。以下同じ。)が人の健康をそこなう可能性を生じたり、家畜等に健康被害が生ずることにより畜水産物の生産を阻害したりする可能性があるものであってはならない。
(2)飼料は、家畜等に対して相当の安全域を有するものでなければならず、毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)に基づく毒物若しくは劇物として指定されたものであってはならない。
Ⅱ 対象となる飼料
 本基準は、次の飼料を対象とする。
1 我が国において対象家畜等に対する使用の経験のない飼料
2 天然物から抽出して製造していたもので飼料として使用の経験があるものを新たに化学合成法による製造に切り換えるなど大幅に製造方法を変更した飼料
3 製造過程で飼料又は食品製造に使用されたことのない酵素、微生物、調整剤等を用いている飼料
Ⅲ 評価に必要な事項
1 次のものは、スクリーニングとして各々記載された試験を実施し、その結果問題が認められなかった場合には、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号)第50条に基づく飼料製造業者届等に添付するものとする。
(1)飼料として使用の経験のある菌を用いて製造した発酵飼料
① 給与対象となる家畜等に応じて鶏ひなの成長試験、豚の飼養試験、牛の飼養試験又は養殖水産動物の成長試験を実施する。
② 飼料の特性に応じて鶏卵のふ化試験、魚卵のふ化試験又はマウスの小核試験を実施する。
③ 飼料の特性を勘案して、重金属、かび毒、残留農薬等の分析を実施する。
(2)製造過程で飼料又は食品製造に使用されたことのない酵素、微生物、調整剤等を用いている飼料
① 給与対象となる家畜等に応じて鶏ひなの成長試験、豚の飼養試験、牛の飼養試験又は養殖水産動物の成長試験を実施する。
② 必要に応じて鶏卵のふ化試験、魚卵のふ化試験又はマウスの小核試験を実施する。
③ 飼料の特性を勘案して、重金属、かび毒、残留農薬等の分析を実施する。
④ 必要に応じて添加した酵素等が失活していることを示す試験を実施する。
2 次のものは、農業資材審議会において安全性についての評価を行った上で原則として規格・基準を定める飼料として位置付けられた場合には、次のいずれかの事項について明らかにする必要がある。
 なお、残留試験の結果を踏まえ、残留濃度及び飼料の摂取量等から問題がないものであって、変異原性が陰性で、かつ、既知の知見から発がん性が疑われない場合は発がん性試験を、反復投与毒性試験(短期)及び既知の知見等から判断して長期の反復毒性を確認する必要がない場合は反復投与毒性試験(長期)を、既知の知見等から繁殖に対する悪影響が疑われない場合は、世代繁殖試験を省略できるものとする。
 さらに、天然物から抽出されたものが従来から飼料として使用されていたもの、ペット等対象家畜以外に用いられているもの又は食品等で使用されているものと分類学的位置等から安全性に関する知見がある場合には、当該飼料に係る安全性に関する事項は、その一部を省略することができるものとする。
 ただし、省略した場合は、その理由及び妥当性について明らかにする必要がある。
(1)1で問題が認められた飼料及び化学合成法により製造される飼料
① 起源又は発見の経緯及び外国における許可状況、使用状況等
② 規格に関する事項
ア 名称
(ア) 一般名
(イ) 化学名(化学合成法により製造される飼料については、IUPAC名、CAS名及びCAS番号を記載)
イ 化学構造(化学合成法により製造される飼料に限る)
ウ 製造方法
エ 生物学的、理化学的性状(化学合成法により製造される飼料に限る)
(ア) 性状(化学合成法により製造される飼料については、融点及び脂溶性についても記載)
(イ) 確認試験
(ウ) 純度試験
(エ) 含量及び定量法
③ 残留性に関する事項
 対象家畜を用いた残留試験
④ 安全性に関する事項
ア 毒性試験
(ア) 一般毒性試験
① 単回投与毒性試験
② 反復投与毒性試験(短期)
③ 反復投与毒性試験(長期)
(イ) 特殊毒性試験
① 世代繁殖試験
② 発生毒性試験
③ 発がん性試験
④ 変異原性試験
⑤ その他の試験(局所毒性、吸入毒性等)
(ウ) 生体内動態(吸収、分布、代謝、排せつ及び蓄積)に関する試験
イ 対象家畜等を用いた飼養試験
ウ その他
(ア) 自然環境に及ぼす影響に関する試験(植物毒性、魚毒性、環境汚染等)
(イ) その他
(2)飼料添加物の用途以外で用いる生菌剤
① 起源又は発見の経緯及び外国における許可状況、使用状況等
② 規格に関する事項
ア 名称
(ア) 一般名
(イ) 学名
イ 製造方法
ウ 細菌学的性状
(ア) 性状
(イ) 菌の分類学的位置
(ウ) 確認試験(簡易同定法)
(エ) 純度試験(他の細菌等)
(オ) 含量(生菌数)及び定量法(生菌数測定法)
エ 製造用種菌の規格
(ア) 継代の方法
(イ) 保存の方法
オ 品質管理の方法
③ 安全性に関する事項
ア 病原性及び有害物質の生産に関する事項
イ 毒性試験
(ア) 単回投与毒性試験
(イ) 反復投与毒性試験(短期)
(ウ) 生体内動態(分布)に関する試験
ウ 対象家畜等を用いた飼養試験
エ 自然環境に及ぼす影響に関する試験
(3)家畜に対する安全域が狭いミネラルを酵母等に吸収させた飼料
① 起源又は発見の経緯及び外国における許可状況、使用状況等
② 規格に関する事項
ア 名称
(ア) 一般名
(イ) 学名
イ 製造方法
ウ 酵母等の性状
(ア) 性状
(イ) ミネラルが酵母に吸収されていることを確認する試験
(ウ) ミネラルの含量及び定量法
エ 品質管理の方法
③ 安全性に関する事項
ア 菌の分類学的位置等
イ 毒性試験
(ア) 単回投与毒性試験
(イ) 反復投与毒性試験(短期)
(ウ) 生体内動態(分布)に関する試験
ウ 対象家畜等を用いた飼養試験
エ 自然環境に及ぼす影響に関する試験
Ⅳ 当局との協議
 Ⅱに掲げる飼料を製造、輸入又は販売しようとする者は、原材料及び製造工程についての詳細な資料を提出して事前に当局と十分協議し、その指示を受けるものとする。
Ⅴ 評価のための資料
1 Ⅳの協議の結果、農業資材審議会の審議に付すこととされた場合には、Ⅲの2で規定された各試験成績等(以下「資料」という。)を提出する。
2 資料は、評価に必要な事項を証明するに足るものとし、主たる試験の実施方法の概要はⅥの1(1)から(8)まで掲げるとおりとする。なお、農業資材審議会が適当と認めた場合には、Ⅲに掲げる評価に関する事項の一部を省略又は追加できるものとする。また、これは飼料としての安全性等を評価するための標準的な試験の実施方法を示したものであり、十分に評価し得る試験成績が得られるならばこれ以外の方法によることもできるものとする。
3 資料は、試験計画及び試験結果がよく理解できるように取りまとめるものとし、資料の用紙の規格は、日本工業規格A4版とし、左とじとする。また、資料が邦文以外の場合には、原則として抄訳を添付するとともに、訳文には翻訳に関する責任者の氏名、所属を記載する。
Ⅵ 試験の実施方法の概要
1 動物試験
(1)鶏ひなの成長試験
(2)鶏卵のふ化試験
(3)マウスの小核試験
(4)豚の飼養試験
(5)牛の飼養試験
(6)養殖水産動物の成長試験
(7)養殖水産動物のふ化試験
(8)その他毒性試験
 「飼料添加物の評価基準の制定について」(平成4年3月16日付け4畜A第201号農林水産省畜産局長・水産庁長官通知。以下「飼料添加物の評価基準」という。)に記載の方法
2 含有成分の分析
 次に掲げる事項については「飼料分析基準の制定について」(令和5年12月1日付け5消安第4714号農林水産省消費・安全局長通知)に記載の方法で行うものとする。
(1)一般成分
 水分、粗たん白質、粗脂肪、粗繊維、粗灰分及び可溶無窒素物
(2)無機成分
 カルシウム、りん、銅、亜鉛、ナトリウム、カリウム、鉄、マグネシウム、マンガン等
(3)重金属
 カドミウム、鉛、クロム、水銀、ひ素等
(4)かび毒
 アフラトキシンB、デオキシニバレノール、ゼアラレノン等
(5)残留農薬
 BHC、マラチオン、フェニトロチオン、パラチオン等
(6)その他有害物質
 PCB、3,4-ベンツピレン、ヒスタミン、エルゴバリン等
別記1
鶏ひなの成長試験
1 試験の概要
供試品を含む試験用飼料を鶏のひなに給与して体重を測定し、その増体重により供試品の安全性を確認する。
2 試験方法
(1)供用動物及び試験区の設定
 制限給与により育成した生後8日令の鶏のひな6羽を1区として用い、試験区として供試品の常用使用量区から無理のない範囲での可能な限り多量の供試品の使用量区までの数段階の試験区及び陰性対照区を設ける。このほか、必要に応じて陽性対照区を設定する。
(2)供用飼料
 抗菌性飼料添加物を添加していない幼すう用配合飼料を基礎飼料として用い、この基礎飼料の原料の一部を供試品等で置き換えて調整する。
(3)供用飼料の給与期間
 供与鶏を各試験区に配分すると同時に、それぞれの供用飼料を給与し、13日令までの6日間継続する。
(4)観察項目
ア 一般症状
 食欲、ふん便性状、活力及び羽毛の光沢等
イ 飼料摂取量
 試験期間中の各試験区の飼料摂取量を測定する。
ウ 体重
 試験開始時及び試験終了時に個体別に測定する。
エ 剖検
 一般症状等から異常を認めた場合には病理学的検査を行う。
3 評価方法
 試験の結果体重が減少したものは、安全性上問題のある可能性があるものとして扱う。
別記2
鶏卵のふ化試験
1 試験の概要
 供試品を含む試験用飼料を採卵鶏に給与し、生んだ卵のふ化状態により供試品の催奇形性を観察し、その安全性を確認する。
2 試験方法
(1)供用動物及び試験区の設定
 産卵鶏の雌10羽程度を1区として用い、試験区として供試品の使用区及び陰性対照区を設けるほか、必要に応じて陽性対照区を設定する。
 なお、供試品の使用区には、無理のない範囲で可能な限り多量の供試品を用いることとする。また、別に人工授精用として雄を確保する。
(2)供用飼料
 抗菌性飼料添加物を添加していない成鶏用配合飼料を基礎飼料として用い、この基礎飼料の原料の一部を供試品等で置き換えて調整する。
(3)供用飼料の給与期間
 7日間程度の予備飼育を行い、その後5週間不断給餌により連続給与する。
(4)入卵数
 100個とする。
(5)観察項目
ア 種鶏の一般症状
 食欲、ふん便性状及び活力等
イ 種鶏の飼料摂取量
 毎週1回、定時に各試験区の飼料摂取量を測定する。
ウ 種鶏の体重
 予備試験飼育開始時、供試品給与開始時及び試験終了時に個体別に測定する。
エ 種鶏の産卵状況
 毎日個体ごとに産卵調査を行い、試験区別に週別の産卵率を求める。
オ 種鶏の卵重
 毎日試験区別に卵重を測定し、試験区別に週別の平均卵重を求める。
カ 受精率
 入卵後5日目に検卵を行い、無精卵を取り除き、試験区別に受精率を求める。
キ 発育中止卵発生率
 入卵後18日目に検卵を行い、発育中止卵を取り除き、試験区別に受精卵に対する発育中止卵発生率を求める。
ク ふ化率
 入卵後22日目にふ化したひなの数をもとにして、試験区別に入卵数及び受精卵数に対するふ化率を求める。
ケ 死ごもり卵発生率
 入卵後22日目の死ごもり卵の数をもとにして、試験区別に受精卵数に対する死ごもり卵発生率を求める。
コ 異常及び奇形ひなの発生率及びその分類
 ふ化したひなは、外観により異常及び奇形の有無を検査し、異常及び奇形の分類を行い、異常及び奇形の発生率を求める。
サ 異常及び奇形死ごもり胎児の発生率及びその分類
 必要に応じて、死ごもり卵は割卵してその胎児を取り出し、外観により異常及び奇形の有無を検査し、異常及び奇形の分類を行い、異常及び奇形の発生率を求める。
3 評価方法
 試験の結果、自然発生率の99%信頼上限値(ふ化率は下限値)を超えたものは、安全性上問題のある可能性があるものとして扱う。
別記3
マウスの小核試験
1 試験の概要
 供試品をマウスに投与し骨髄の赤血球の小核保有率を調べることにより、供試品の変異原性の有無を求め、安全性を確認する。
2 試験方法
(1)供用動物及び試験区の設定
 生後7~8週令のマウス6匹を1区として用い、試験区は無理のない範囲で可能な限り多量の供試品の投与区及び対照区とする。
(2)供試品の投与方法
 適当な溶媒を用い、設定する濃度の懸濁液を調整し、強制的に1回経口投与するか、飼料に混ぜて2~3週間連続して経口摂取させる。
(3)骨髄塗抹標本の作成
 供与動物はいずれも投与後24時間目に頸椎脱臼によりと殺し、直ちに大腿骨を摘出し、子牛血清を用いて骨髄細胞を洗い出し細胞懸濁液をつくり、遠心分離して細胞を集め上清を少量残し、これを臨床検査における血液塗抹標本作成と同様の手技で塗抹する。標本は室温で乾燥させた後、メタノールで固定しギムザ染色を施す。
(4)小核出現頻度の測定
 多染色赤血球を1個体に1,000個観察し、小核を保有する細胞数を数える。
3 評価方法
 検査の結果、統計的処理により、99%の信頼区間で有意差のあるものは安全性上問題のある可能性があるものとして扱う。
別記4
豚の成長試験
1 試験の概要
 供試品を含む試験用飼料を子豚に給与し、供試品の増給量と増体重との用量-反応直線を解析して得られた可消化エネルギー(以下「DE」という。)とともに、実測のDEを比較することで、その安全性を確認する。
2 試験方法
(1)供用動物及び試験区の設定
 体重が近似したおおむね25kg程度の子豚で、雌、雄及び去勢のいずれかに統一し、3頭以上を1区として用いる。子豚の可消化養分総量(以下「TDN」という。)要求量の60%量の基礎飼料を給与する基礎飼料区と、これにTDNが既知の飼料及び供試品をTDN要求量の7.5%量及び15%量相当量を増給する試験区の計5区を設定する。
(2)供用飼料
 抗菌性飼料添加物を添加していない子豚育成用配合飼料を基礎飼料として用い、この基礎飼料の原料の一部を供試品等で置き換えて調整する。また、各供試飼料にはDE測定用の指示物質として酸化クロム(Cr2O3)を0.1~0.2%、酸不溶性灰分を1.0%若しくは酸化チタンを0.1%ずつ添加する。
(3)供用飼料の給与期間
 7日間程度の予備飼育を行い、その後3週間不断給餌により連続給与する。
(4)観察項目
ア 一般症状
 食欲、ふん便性状及び活力等
イ 飼料摂取量
 毎週1回、定時に各試験区の飼料摂取量を測定する。
ウ 体重
 供試品給与開始時及び試験終了時に個体別に測定する。試験期間中は、1週間間隔で測定する。
エ 実測DE
 給与開始後5日目以降の5日間以上の排泄された便を個体別に採取し、約60℃の通風乾燥及び風乾を行う。ボンブカロリーメーターにより総エネルギー量を、比色法によりCr2O3 濃度、酸不溶性灰分法により酸不溶性灰分若しくは誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法によりチタン濃度を分析し、消化試験法の計算式を用い、供試飼料中のDEを算出する。また、基礎飼料のDE及び各供試飼料のDEを用いて増給した既知の飼料及び供試品のDEを間接的に算出する。
オ 剖検
 一般症状等から異常を認めた場合には病理学的検査を行う。
3 評価方法
 試験の結果、増給量に対して増体重が既知の飼料に置き換えた場合と同等以上の直線的に増加する傾向を示さない場合又は供試品の実測DEが一定値を示さない場合には、安全性上問題のある可能性があるものとして扱う。
別記5
牛の飼養試験
1 試験の概要
 供試品を含む試験用飼料を牛に給与し、牛の反応を観察することによって、その安全性を確認するとともに、有害物質等の体内及び生産物中の残留についても確認する。
 試験は、子牛を用いて行う。さらに、必要に応じ、妊娠牛を用いた試験を行い安全性を確認する。
2 子牛を用いた試験方法
(1)供用動物及び試験区の設定
 おおむね90日令以上の粗飼料に馴致した牛で、雌又は雄のいずれかに統一し、6頭以上を1区として用い、試験区として供試品の常用使用量区、可能な限り多量の供試品の使用量区及び対照区(供試品無給与)の3区とし、いずれも個体管理とする。
(2)供用飼料
 基礎飼料は、試験目的に適したもので、飼養標準に基づいて栄養学的に欠陥のないものを給与する。この場合、供試品給与区と対照区の間に栄養学的に偏りがないよう留意する。なお、その原材料名及び配合割合について明示すること。
(3)供用飼料の給与期間
 3か月間以上連続給与する。
(4)観察項目
 観察項目は、以下のとおりとするが、供試品給与に関連すると思われる異常が認められた場合は、供用動物の一部について供試品給与終了後おおむね2~3週間回復状況を観察する。
ア 一般症状
 毎日、外観、行動、食欲、糞便性状等の観察を行い、体温を測定し、異常が認められた場合は適宜その他必要な観察を行う。
イ 飼料摂取量
 原則として毎日測定(粗飼料、濃厚飼料別)し、2週間ごとに飼料摂取量及び飼料要求率を算出する。
ウ 体重
 試験開始時及び試験終了時に3日間連続して測定する。
 試験期間中は2週間間隔で測定する。
エ 臨床病理学的検査
 試験開始前、試験開始後4週間ごと及び試験終了時に次の検査を行う。具体的な内容については(注)を参照。
(ア)尿検査
(イ)血液検査
(ウ)その他の検査
オ 病理学的検査
 一般症状等から異常を認めた場合には、給与期間終了後当該群及び対照群の全頭をと殺・解剖し、次の病理学的検査を行う。なお、途中へい死又は瀕死動物についても検査を行う。
(ア)剖検
 外部及び内部を含む全身の器官及び組織について行う。
(イ)主要器官の重量測定
 脳、肝臓、腎臓、心臓、脾臓、肺、精巣(卵巣)、甲状腺、副腎、下垂体等
(ウ)病理組織学的検査
 臨床観察、臨床病理学的検査、剖検及び器官重量測定において、供試品給与の影響が疑われる場合には、関連器官及び組織について病理組織学的検査を実施する。
3 妊娠牛を用いた試験方法
(1)供用動物及び試験区の設定
 おおむね妊娠3か月以上の妊娠牛6頭以上を1区として用い、試験区として可能な限り多量の供試品の使用量区及び対照区(供試品無給与)を含む2区以上とし、いずれも個体管理とする。
(2)供用飼料
 基礎飼料は、試験目的に適したもので、飼養標準に基づいて栄養学的に欠陥のないものを給与する。この場合、供試品給与区と対照区の間に栄養学的に偏りがないよう留意する。なお、その原材料名及び配合割合について明示するものとする。
(3)供用飼料の給与期間
 おおむね妊娠3か月以上から分娩後2か月間までの間給与する。
(4)観察項目
 観察項目は、次のとおりとするが、供試品給与に関連すると思われる異常が認められた場合は、供用動物の一部について供試品給与終了後おおむね2~3週間回復状況を観察する。
ア 一般症状
 毎日、外観、行動、食欲、糞便性状等の観察を行い、体温を測定し、異常が認められた場合は適宜その他必要な観察を行う。
イ 飼料摂取量
 原則として毎日測定(粗飼料、濃厚飼料別)し、2週間ごとに飼料摂取量及び飼料要求率を算出する。
ウ 体重
 試験開始時及び試験終了時に3日間連続して測定する。
 試験期間中は2週間間隔で測定する。
エ 泌乳検査
(ア)泌乳量
 毎日測定する。
(イ)乳質検査
 週1回乳脂肪、無脂固形物、細胞数、pH、比重について検査する。また、必要に応じて物質検査等を行う。
オ 臨床病理学的検査
 試験開始前、試験開始後4週間ごと及び試験終了時に次の検査を行う。具体的な内容については(注)を参照。
(ア)尿検査
(イ)血液検査
(ウ)その他の検査
カ 病理学的検査
 一般症状等から異常を認めた場合には、給与期間終了後当該群及び対照群の全頭をと殺・解剖し、次の病理学的検査を行う。なお、途中へい死又は瀕死動物についても検査を行う。
(ア)剖検
 外部及び内部を含む全身の器官及び組織について行う。
(イ)主要器官の重量測定
 脳、肝臓、腎臓、心臓、脾臓、肺、精巣(卵巣)、甲状腺、副腎、下垂体等
(ウ)病理組織学的検査
 臨床観察、臨床病理学的検査、剖検肉眼検査及び器官重量測定において、供試品給与の影響が疑われる場合には、必要に応じ関連器官及び組織について病理組織学的検査を実施する。
(5)生産子牛の観察
ア 供用動物及び試験区の設定
 本試験に供した妊娠牛より生産された子牛すべてを用い、いずれも個体管理又は親牛と一緒にした個体管理とする。
イ 供用飼料
 飼料は、親牛の全乳ほ育とするが、乳量が不足した場合は、濃厚飼料等で補う。
ウ 供用飼料の給与期間
 生後2か月間給与する。
エ 観察項目
 観察項目は、(4)に掲げる観察項目を必要に応じ行うものとするが、供用飼料給与に関連すると思われる異常が認められた場合は、供用動物の一部について、供用飼料給与終了後おおむね2~3週間回復状況を観察する。
4 畜産物中の有害物質等の検索
 必要に応じて、2及び3の供試牛について、給与開始前1回及び給与開始後2~3回、血液、乳汁、尿、糞便等を採取し、供試品由来の有害成分の検索を行い、その結果に基づき、体内及び生産物中の蓄積状況について検索し、蓄積が認められた場合には、別途飼料添加物の評価基準に従い残留試験を実施する。
5 評価方法
 農業資材審議会等の意見を聴いて評価する。
(注)
(ア)尿検査
 pH、タンパク、ブドウ糖、ケトン体、潜血などの定性検査等を実施する。また、必要に応じ、比重及び沈渣検査等を実施する。
(イ)血液検査
 検査項目はできる限り多項目にわたることが望ましい。なお、各項目の測定には、それぞれ国際的に汎用されている方法及び測定単位を採用する。
 血液学的検査項目:赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値、白血球数、白血球百分率等
 血液生化学的検査項目:GOT、γ-GTP、アルカリホスファターゼ、総タンパク、アルブミン、グロブリン、A/G比、総コレステロール、中性脂肪、血糖、シアル酸、総ビリルビン、尿素窒素、クレアチニン、カルシウム、無機リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、必要に応じてプロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間等
(ウ)その他の検査
 必要に応じて、供試品中の有害物質による消化管粘膜に対する傷害又は胃液の性状・成分に対する影響が考えられる場合には、適宜、糞の潜血検査、第一胃胃液検査(色調、臭気、粘稠性、pH、VFA濃度及び組成、乳酸、アンモニア、細菌及びプロトゾアの数及び構成等)等を実施する。
別記6
養殖水産動物の成長試験
1 試験の概要
 供試品を含む試験用飼料を養殖水産動物に給与して体重を測定し、その増体率等により供試品の安全性を確認する。
2 試験方法
(1)供用動物及び試験区の設定
 供用動物は、供試品の特性、用途等から判断して養殖水産動物のうち適切な種及びサイズのものを用いるものとし、その数は、正常な摂餌を妨げない尾数とする。なお、試験前には予備飼育を行い、試験環境に十分馴致しておくものとする。
 試験区として、供試品の常用使用量区から可能な限り多量の供試品の使用量区までの数段階の試験区及び陰性対照区を設定する。なお、試験精度を上げるため、各区に反復区を設ける。
(2)供用飼料
 基礎飼料として、試験目的に適した組成のもので、栄養学的にみて欠陥のないものを調製し、対照区に給与する。また、基礎飼料の一部を供試品等で置換した飼料を調製し、供試品使用区に給与する。なお、供用飼料は、その原材料名及び配合組成を明らかにし、給餌に際しては、飽食を目安とし、残餌がなく供用動物全体にむらなく摂餌されるよう留意する。
(3)供用飼料の給与期間
 供与期間は6週間とする。ただし、この間に対照区の供用動物の平均体重が3倍に達しない場合には、3倍以上になるまでの期間とする。
(4)飼育条件
 飼育条件は、飼料添加物の評価基準の主たる試験の実施方法の概要のIの4の(ア)に準ずる。ここに記載されていない供用動物にあっては、適切な飼養管理が行える条件を設定する。
(5)観察項目
ア 一般症状
 摂餌状態、行動の異常、体色の異常及び体形の異常
イ 飼料給与量、体重及びへい死
 一定期間ごと及び試験終了時に各試験区の飼料給与量、平均体重並びにへい死魚の尾数及び体重を測定する。
ウ 増重率、飼料効率及びへい死率
 それぞれ各期間ごとに次の式により求める。
・増重率=(終了時の総体重-開始時の総体重+へい死魚の総体重)×100/開始時の総体重
・飼料効率=(終了時の総体重-開始時の総体重+へい死魚の総体重)×100/乾物換算の飼料総給与量
・へい死率=(期間中の総へい死尾数/開始時総尾数)×100
エ 剖検
 試験終了時に剖検を行う。剖検により異常が認められた場合には、病理学的検査を実施する。
3 評価方法
 試験の結果、試験期間中に体重の減少が認められた場合又は病理学的検査で異常が認められた場合には、安全性上問題のある可能性があるものとして扱う。
別記7
養殖水産動物のふ化試験
1 試験の概要
 供試品を含む試験用飼料を採卵用ニジマス親魚に給与し、受精後の胚の発達状態、ふ化仔魚の状態等から体形異常を観察し、その安全性を確認する。
2 試験方法
(1)供用動物及び試験区の設定
 試験魚の数は、雌雄各10尾以上であって正常な摂餌を妨げない数とする。
 試験区として、供試品使用区及び対照区を設定する。また、供試品使用区には可能な範囲内で多量の供試品を用いる。
(2)供用飼料
 基礎飼料として、試験目的に適した組成のもので栄養学的にみて欠陥のないものを調製し、対照区に給与する。また、基礎飼料の一部を供試品等で置換した飼料を調製し、供試品使用区に給与する。なお、供用飼料は、その原材料名及び配合組成を明らかにし、給餌に際しては試験目的に合致するよう十分に配慮する。
(3)供用飼料の給与期間
 給与期間は、生殖巣の発達が始まる時期から成熟するまでの期間とする。
(4)採卵
 少なくとも5尾以上の雌親魚から採卵後、1尾当たり数百粒の卵を無作為に抽出し、同一試験区の雄から得られた精子により受精させた卵をふ化試験に供する。
(5)ふ化条件
 ふ化水槽の水量、水温、溶存酸素量、光等の環境条件や物理的衝撃等がふ化試験に影響を与えないよう十分に注意する。
(6)観察項目
ア 親魚の一般症状
 摂餌状態、行動の異常、体色の異常及び体形の異常
イ 親魚の体重及び飼料給与量
 試験開始時及び終了時に、供試品使用区及び対照区の試験魚の体重を個体別に測定する。また、試験期間中の各区の飼料給与量を測定する。
ウ 採卵状況
 供試品使用区及び対照区の採卵数を個体別に測定する。
エ 卵重
 供試品使用区及び対照区の未受精卵の平均卵重を個体別に測定する。
オ 発眼率
 供試品使用区及び対照区の発眼卵数を個体別に測定し、受精直後のふ化試験に供した卵数に対する発眼率を求める。
カ ふ化率
 供試品使用区及び対照区のふ化仔魚数を親魚個体別に測定し、受精直後のふ化試験に供した卵数及び発眼卵数に対するふ化率を求める。
キ 体形異常魚の出現率
 ふ化仔魚の外観から体形異常の発生の有無及び異常を、「さけ別枠1978河川型研究グループリポート」(北海道区水産研究所発行 pp.125-138、1979)を参照して分類を行い、ふ化尾数に対する体形異常魚の出現率を求める。
3 評価方法
 試験の結果、対照区の発眼率及びふ化率の99%信頼下限値並びに体形異常魚出現率の上限値を超えたものは安全性上問題のある可能性があるものとして扱う。

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