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遺伝子組換えアマ(FP967)の暫定検査法1

(別 添)
遺伝子組換えアマ(FP967)の暫定検査法1
 本検査法ではアマ穀粒を検査対象とし、DNA抽出精製は、以下の陰イオン交換樹脂タイプキット法(QIAGEN社製Genomic-tip 20/G)を用いる。1検体から2並行でDNAを抽出し、各抽出DNA試料液を用いてリアルタイムPCR法を用いた定性PCR法を実施する。なお、アマ穀粒の検体採取に関しては「飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令等の施行について」(平成15年4月1日付け14生畜第8598号、最新改正20消安第2496号)別添3 組換えDNA技術応用飼料の検査方法 1.1.1.トウモロコシ穀粒の検体採取と同様に行う。
 なお、FP967は米国において安全性が既に確認されており、1%混入基準(平成14年11月26日農林水産省告示第1781号)が適用される。そのため、リアルタイムPCR法を用いた定性法によりFP967の混入が確認された場合には、1%陽性試料液のCt値比率と比較する暫定確認法(相対的定量法)を実施する。
1. アマ穀粒からのDNAの抽出精製
 粉砕試料0.5 gをポリプロピレン製遠沈管(50 mL容)に量り採り、イオン交換樹脂タイプのDNA抽出精製キット(QIAGEN Genomic-tip)を用い以下のようにDNAを抽出精製する。
 試料に、G2 緩衝液*17.5 mLとα-amylase*220 µLを加えて、ボルテックスミキサー等で激しく混合し、37℃で1時間保温する。さらにG2 緩衝液7.5 mL、Proteinase K*3200 µL、及び、RNaseA*420 µLを加え、サンプルがチューブの底に残らなくなるまで撹拌し、50℃で1時間保温する。その間2~3回遠沈管を反転させて試料を転倒混和する。次いで、5,000 x g、4℃で15分間遠心分離し、得られた上清を2 mLずつ2 mL容チューブ5本(計10 mL)に移し*5、20,000 x g、4℃で15分間遠心分離する。あらかじめQBT緩衝液*11 mLで平衡化したQIAGEN Genomic-tip 20/Gに、各2 mL容チューブから上清を1 mLずつ採取し*5負荷する(計5 mL)。次いで、チップをQC緩衝液*1で2 mLずつ3回洗浄した後、チップを新しい遠沈管に移し、あらかじめ50℃に加温したQF 緩衝液*1500 µL を負荷し、DNAを溶出する(溶出1)。チップを新しい遠沈管に移し、さらにQF 緩衝液*1500 µLでDNA を溶出する(溶出2)。次いで、溶出液と等量のイソプロパノールを溶出1と溶出2にそれぞれ添加し、ゆっくり10回転倒混和した後、5分間室温で静置する。12,000 x g、4℃で15分間遠心し、上清を廃棄した後70%エタノール500 µLを添加し、10回転倒混和する。12,000 x g、4℃で3分間遠心した後、上清を破棄し、残った沈殿を適度に乾燥させる。溶出2の遠沈管にあらかじめ60℃に加温した水50 µLを加えて沈殿物を溶解させ、その溶解液全量を溶出1の遠沈管に移し入れ、よく混合し*6、抽出DNA試料液とする。抽出DNA試料液は分光光度計を用いてDNA濃度測定を行う。
*1 G2緩衝液、QBT緩衝液、QC緩衝液、及び、QF緩衝液はキットに付属しているが、足りない場合にはキットの説明書に従って調製可能である。
*2 α-amylase (高濃度品)はNippon Gene社製のもの、又は、同等の活性を持つものを用いる。
*3 Proteinase KはQiagen社製(20 mg/mL)または同等の効力をもつものを用いる。
*4 RNaseAはQiagen社製(100 mg/mL)または同等の効力をもつものを用いる。
*5 沈殿物や上層の膜状の部位を取らないように注意する。
*6 沈殿物(DNA)が溶解しない場合は、65℃で15分間振とう溶解する。それでも完全に溶解できず、不溶物が認められる場合は、12,000 x g、4℃で3分間遠心して得られた上清を新しい遠沈管に移し、これを抽出DNA試料液とする。
2.リアルタイムPCRを用いた定性PCR法
 FP967の検出はGMアマ検知用のプライマー、プローブを用いたリアルタイムPCRとアマ陽性対照用のプライマー、プローブを用いたリアルタイムPCRの2試験を行い判定する。
 GMアマ検知用として、NOSターミネーターとスペクチノマイシン耐性遺伝子の境界領域を検知するプライマー、プローブを用いる。また、アマ陽性対照用としてstearoyl-acyl carrier protein desaturase 2 (SAD) 遺伝子配列を検知するプライマー、プローブを用いる。各プライマーは水に溶解する。プライマー、プローブの塩基配列は以下のとおりである。
GMアマ検知用プライマー対、及び、プローブ
NOST-Spec F: 5’- AGC GCG CAA ACT AGG ATA AA-3’
NOST-Spec R: 5’- ACC TTC CGG CTC GAT GTC TA-3’
NOST-Spec probe: 5’-FAM- CGC GCG CGG TGT CAT CTA TG-BHQ1-3’
アマ陽性対照用プライマー対、及び、プローブ
SAD F: 5’- GCT CAA CCC AGT CAC CAC CT -3’
SAD R: 5’- TGC GAG GAG ATC TGG AGG AG -3’
SAD probe: 5’-FAM- TGT TGA GGG AGC GTG TTG AAG GGA-BHQ1-3’
2.1 リアルタイムPCRを用いた定性PCR法及び暫定的確認法(相対的定量法)(ABI PRISMTM7900)
2.1.1 PCR用反応液の調製
 PCR用反応液は25 µL/wellとして調製する。組成は以下のとおりである。Universal PCR Master Mix*112.5 µL、対象プライマー対溶液(各プライマー、50 µmol/L)各0.4 µL、対象プローブ溶液(10 µmol/L)0.25 µLを混合し、水で全量22.5 µLに調製後、50 ng/µL DNA試料液2.5 µL(125 ng)を添加する。PCR のFP967陽性反応液として、必ずFP967由来DNAの含有濃度を1%に調製したDNA試料液(1%陽性試料液*2)を用い、1%陽性反応液を調製し、検体と同時にPCRに供する。また、PCRのブランク反応液として、必ずDNA試料液を加えないものについても同時に調製する*3。分注操作終了後、真上からシール*4し、完全にウェルを密閉する。このとき、しわが寄らないよう注意し、専用のシーリング用アプリケーターを用いて行う。最後にウェルの底を観察し、底に気泡がある場合は、プレートの縁を軽く叩いて気泡を抜いておく。プレートの確認後、ABI PRISM Optical Cover Compression Pad*5を茶色の面が上になるよう、プレートの上面にセットする。各DNA試料液あたりGMアマ検知用リアルタイムPCRとアマ陽性対照用リアルタイムPCRをそれぞれ2ウェル並行して行うものとする。
*1 Universal PCR Master Mix
 本試薬は粘性が高いため、混合操作を行う際には、混合が確実に行われるように注意する。不十分な場合には、PCRがうまくいかない場合がある。使う直前には必ずボルテックスミキサーを用いて3秒程度混合した後、軽く遠心し、溶液を試料管の底に集めておいてから使用する。また、ウェルに分注する際は、以後撹拌、遠心が困難なことを考慮し、ウェルの底に確実に入れる。
*2 1%陽性試料液
 FP967種子の粉砕物を、非遺伝子組換えアマ種子の粉砕物を用いて1%濃度となるよう重量ベースで混合し、DNAの抽出精製を行い、50ng/µLDNA試料液に調製したもの、又はそれと同等のもの。
*3 Non-Template Control(NTC)
 DNA試料液の添加の際、NTCにはDNA試料液の代わりに水をウェルに2.5 µL添加する。
*4 96ウェルプレート、シール、及び、シーリングアプリケーター
 MicroAmp Optical 96-Well Reaction Plate (Applied Biosystems社)、及び、ABI PRISM Optical Adhesive Cover (Applied Biosystems社)を使用する。シーリングの詳細については製品付属のマニュアルを参考のこと。
*5 ABI PRISM Optical Cover Compression Pad
 ABI PRISM Optical Cover Compression Pad (Applied Biosystems社)を使用する。なお、20回以上の繰り返し使用は、測定結果に影響を及ぼす可能性があるため避けること。
2.1.2プレート情報の設定
 反応に際しては、プレート情報の設定を行わなければならない。設定を行う項目は、検体の配置と種類、及び、プローブ特性である。具体的には新規シート上で、調製したプレートの配置に対応するように気を付けながら、検体の種類(「NTC」:Non-Template Control、「UNKN」:DNA試料液)の設定を行う。またプローブ特性に関しては、NOST-Spec、SADともにReporterが「FAM」、Quencherが「Non Fluorescent」となるように設定する。また、Passive Referenceは「ROX」に設定する。なお、ランモードの設定は9600 emulationモードを選択する。
2.1.3 PCR増幅
 装置にプレートをセットし、反応とデータの取り込みを開始する。反応条件は以下のとおりである。50℃、2分間の条件で保持した後、95℃で10分間加温し、ホットスタート法で反応を開始する。その後、95℃15秒間、60℃1分間を1サイクルとして、45サイクルの増幅反応を行う。Remaining timeが0分となっていることを確認し、反応を終了させた後、測定結果の解析を行う。
2.2. リアルタイムPCRを用いた定性PCR法及び暫定的確認法(相対的定量法)(ABI PRISMTM7700)
2.2.1 PCR用反応液の調製
 PCR用反応液は25 µL/wellとして調製する。組成は以下のとおりである。Universal PCR Master Mix*112.5 µL、対象プライマー対溶液(各プライマー、50 µmol/L)各0.4 µL、対象プローブ溶液(10 µmol/L)0.25 µLを混合し、水で全量22.5 µLに調製後、50 ng/µL DNA試料液2.5 µL(125 ng)を添加する。PCR のFP967陽性反応液として、必ずFP967由来DNA含有濃度を1%に調製したDNA試料液(1%陽性試料液*2)を用い、1%陽性反応液を調製し、検体と同時にPCRに供する。また、PCRのブランク反応液として、必ずDNA試料液を加えないものについても同時に調製する*3。分注操作終了後、真上からシール*4し、完全にウェルを密閉する。このとき、しわが寄らないよう注意し、専用のシーリング用アプリケーターを用いて行う。最後にウェルの底を観察し、底に気泡がある場合は、プレートの縁を軽く叩いて気泡を抜いておく。各DNA試料液あたりGMアマ検知用リアルタイムPCRとアマ陽性対照用リアルタイムPCRをそれぞれ2ウェル並行して行うものとする。
*1 Universal PCR Master Mix
 本試薬は粘性が高いため、混合操作を行う際には、混合が確実に行われるように注意する。不十分な場合には、PCRがうまくいかない場合がある。使う直前には必ずボルテックスミキサーを用いて3秒程度混合した後、軽く遠心し、溶液を試料管の底に集めておいてから使用する。また、ウェルに分注する際は、以後撹拌、遠心が困難なことを考慮し、ウェルの底に確実に入れる。
*2 1%陽性試料液
 FP967種子の粉砕物を、非遺伝子組換えアマ種子の粉砕物を用いて1%濃度となるよう重量ベースで混合し、DNAの抽出精製を行い、50ng/µLDNA試料液に調製したもの、又はそれと同等のもの。
*3 Non-Template Control(NTC)
 DNA試料液の添加の際、NTCにはDNA試料液の代わりに水をウェルに2.5 µL添加する。
*4 96ウェルプレート、シール、及び、シーリングアプリケーター
 MicroAmp Optical 96-Well Reaction Plate (Applied Biosystems社)、及び、ABI PRISM Optical Adhesive Cover (Applied Biosystems社)を使用する。シーリングの詳細については製品付属のマニュアルを参考のこと。
2.2.2プレート情報の設定
 反応に際しては、プレート情報の設定を行わなければならない。設定を行う項目は、検体の配置と種類、及び、プローブ特性である。具体的には新規シート上で、調製したプレートの配置に対応するように気を付けながら、検体の種類(「NTC」:Non-Template Control、「UNKN」:DNA試料液)の設定を行う。またプローブ特性に関しては、NOST-Spec、SADともにReporterが「FAM」、Quencherが「Non Fluorescent」となるように設定する。また、Passive Referenceは「ROX」に設定する。なおランモードの設定は9600 emulationモードを選択する。
2.2.3 PCR増幅
 装置にプレートをセットし、反応とデータの取り込みを開始する。反応条件は以下のとおりである。50℃、2分間の条件で保持した後、95℃で10分間加温し、ホットスタート法で反応を開始する。その後、95℃15秒間、60℃1分間を1サイクルとして、45サイクルの増幅反応を行う。Remaining timeが0分となっていることを確認し、反応を終了させた後、測定結果の解析を行う。
3. 結果の解析と判定
3.1 定性法
 GMアマ検知用試験およびアマ陽性対照用試験のいずれについても、結果の判定はAmplification plot上で指数関数的な増幅曲線とCt値の確認、及び、multicomponent上での対象色素由来の蛍光強度(FAM)の指数関数的な明確な増加の確認をもって行う。
 まず目視でAmplification plot上にNOST-Specの指数関数的な増幅曲線が確認された場合には、FP967陽性を疑う。次いで、ベースライン(3サイクルから15サイクル)のΔRnのノイズ幅の最大値の上側で、安定した指数関数的な増幅曲線上で交わるThreshold line (Th. line)を選択する*。そのTh. lineからCt値が得られるか否かを解析する。各DNA試料液においてアマ陽性対照用試験で43未満のCt値が得られ、かつGMアマ検知用試験で43未満のCt値が得られたウェルがある場合に、FP967陽性と判定する。アマ陽性対照用試験で43未満のCt値が得られ、GMアマ検知用試験で43未満のCt値が得られない場合は、FP967陰性と判定する。なお、2つのDNA試料液での結果が異なった場合は陽性と判定する。なお上記判定によりFP967陽性が判定された結果についてmulticomponentを解析し、目視でFAMの蛍光強度の指数関数的な増加が観察でき、ROXの蛍光強度の明確な下降やFAMの蛍光強度の緩やかな上昇がないことを確認する。
3.2 暫定確認法
 3.1によりFP967陽性と判定された試料において、GMアマ検知用試験のCt値とアマ陽性対照用試験のCt値を求め、GMアマ検知用試験のCt値/アマ陽性対照用試験のCt値(Ct値比率)を算出する。同様に、当該試料と同じプレートで行った1%陽性反応液のCt値比率を算出する。1%陽性反応液のCt値比率と比較して当該試料のCt値比率が小さい場合、当該試料中に1%を超えるFP967が含有すると判断する。
3.3 再試験
 アマ陽性対照用試験で43未満のCt値が得られないDNA試料液については、再度、リアルタイムPCRを用いた定性PCR法以降の操作を行い、それでも43未満のCt値が得られない場合には、そのDNA試料液の測定結果を無効とし、43未満のCt値が得られたDNA試料液の結果だけで判定する。2つのDNA試料液ともにアマ陽性対照用試験で43未満のCt値が得られない場合には、改めて3回目のDNA抽出精製を行い、さらにリアルタイムPCRを用いた定性PCR法以降の操作を実施して、判定を行う。3回目のDNA試料液を用いた場合でもアマ陽性対照用試験で43未満のCt値が得られない場合には、本試料からの検知は不能とする。
* 個々の機種の状態によってAmplification plot上のΔRnが変動することから、普遍的なTh. lineの設定の数値を示すことが困難である。従ってAmplification plot上でベースライン(3サイクルから15サイクル)のΔRnのノイズ幅の最大値をより上側で、安定した指数関数的な増幅曲線上で交わるTh. lineを選択する。参考としてABI PRISMTM7900 、及び、ABI PRISMTM7500ともに0.2-0.5の範囲であると考えられる。
1 今回の変更箇所は下線部
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