このページの本文へ移動

飼料添加物の評価基準の制定について

4畜A第201号
平成4年3月16日
農林水産省畜産局長、水産庁長官
飼料添加物の評価基準の制定について
 農林水産大臣が,飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号)第2条第3項の規定に基づき飼料添加物の指定を行おうとする場合又は同法第3条第1項の規定に基づき基準若しくは規格を設定しようとする場合は,同法第2条第3項又は同法第3条第2項の規定に基づき農業資材審議会の意見を聴くこととされており,同審議会がこれらの審議を行うに際して,その指標となる飼料添加物の評価基準については,先に「飼料添加物の評価基準の設定等について」(昭和52年4月5日付け52畜A第1200号,52水漁第1111号農林省畜産局長,水産庁長官通達)及び「生菌剤を対象とする飼料添加物の評価基準の制定について」(平成3年5月30日付け3畜A第1169号農林水産省畜産局長,水産庁長官通達)をもって,また,試験実施上の留意事項等については,「飼料添加物の評価基準に基づく試験の手引の設定について」(昭和55年2月4日付け54畜A第5001号,54水振第3380号農林水産省畜産局長,水産庁長官通達)をもって通達したところであるが,今般,これらの通達を廃止するとともに,新たに「飼料添加物の評価基準」を別添のとおり定めたので,下記事項に留意の上,貴管下関係者に対し,周知徹底方をお願いする。
 なお,これに伴い「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の運用について」(昭和52年6月27日付け52畜B第696号農林省畜産局長通達),「飼料添加物の指定等に際し提出すべき資料等について」(昭和55年2月4日付け54畜A第5002号,54水振第3381号農林水産省畜産局長,水産庁長官通達),「飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令等の施行について」(昭和56年7月27日付け56畜B第1594号農林水産省畜産局長,水産庁長官通達),「飼料の安全性評価基準の制定について」(昭和63年4月12日付け63畜B第617号農林水産省畜産局長通達),「飼料添加物の動物試験の実施に関する基準について」(昭和63年7月29日付け63畜A第3039号農林水産省畜産局長,水産庁長官通達),「養殖水産動物用飼料の安全性評価基準の制定について」(平成3年2月13日付け2畜B第2103号農林水産省畜産局長,水産庁長官通達),「生菌剤を飼料添加物に指定するための資料の提出等について」(平成4年1月30日付け4畜A第25号農林水産省畜産局長,水産庁長官通達)の一部を別紙1~7の新旧対照表(注:別紙1~7の新旧対照表は省略)のとおり改正したので御了知願いたい。

1 改正の趣旨等

 今回の改正は,従来の飼料添加物の評価基準と飼料添加物の評価基準に基づく試験の手引を一本化するとともに,動物福祉の観点から動物数の縮減等を行うほか,飼料添加物の種類ごとに実施すべき試験を明確化するものである。
 なお,新たな飼料添加物の評価基準は,現時点における科学的水準を裏付けとして定めたものであるが,個別の飼料添加物の審査は,従来どおり,この評価基準に照らし,かつ,その時点における安全性等に関する新しい知見及び当該飼料添加物の特性等を考慮し,その適否を判断することとなる。
 また,飼料添加物は,主として配合飼料工場においてあらかじめ飼料に添加され,不特定多数の者に販売され,使用されるものであることから,その効果及び安全性は多様な家畜等の飼養条件を考慮に入れて確認すべきものである。

2 飼料添加物の指定

 飼料添加物の指定については,従来どおり,その必要性が高く効果が明らかで,かつ,安全性の確認されたもののうちから必要最少限の範囲において行われることとなる。このため,指定されていない物について新たに飼料添加物としての製造,輸入等を行おうとする者は,事前に当局と十分な協議を行い,当局の指示を受けることが必要である。

3 適用期日

今後行う試験については,新たに定めた飼料添加物の評価基準に基づき行うこととするが,平成4年9月30日までに開始する試験にあっては,なお従前の例によることができるものとする。

別添
飼料添加物の評価基準
 この基準は、農業資材審議会飼料分科会(以下「分科会」という。)が飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号)に基づく飼料添加物の指定及び基準・規格の設定のための審議を行うために必要な飼料添加物の効果及び安全性の評価に関する基本的な考え方及び方法を定めたものである。
Ⅰ 飼料添加物の基本的条件
1 効果に関する条件
(1) 飼料添加物は、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律施行規則(昭和51年農林省令第36号。以下「施行規則」という。)第1条に定める用途に適合する効果を有するものでなければならない。
(2) 飼料添加物として認められる抗菌性物質製剤の効果は、次に掲げる範囲を超えないものとする。
ア かびの発生等による飼料の品質の低下の防止
イ 家畜等(飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律施行令(昭和51年政令第198号。以下「施行令」という。)第1条に定める動物をいう。以下同じ。)(原則として幼齢期のものに限る。)の成長の促進又は飼料効率の改善
ウ 特定の病原寄生生物による家畜等の幼齢期における生産性の低下の防止
(3) 新しい飼料添加物の効果は、既に指定されているものと類似の効果を有する場合にはこれと同等以上の効果を有するものでなければならない。
2 残留に関する条件
 飼料添加物のうち抗菌性物質製剤等については、当該飼料添加物を含む飼料を給与した家畜等の生産物から相当の感度を有する定量法により検出されるものであってはならない。
3 安全性に関する条件
(1) 飼料添加物は、これを含む飼料の使用が原因となって有害畜産物(家畜等の肉、乳その他の食用に供される生産物で人の健康をそこなうおそれがあるものをいう。)が生産され、又は家畜等に被害が生ずることにより畜産物(家畜等に係る生産物をいう。)の生産が阻害されるおそれがあるものであってはならない。
(2) 新しい飼料添加物は、既に指定されているものと類似の構造、作用等を有する場合には、これと同等以上の安全性を有するものでなければならない。
(3) 飼料添加物は、家畜等に対して相当の安全域を有するものでなければならない。
(4) 飼料添加物は、原則として、薬事法(昭和35年法律第145号)に基づく毒薬若しくは劇薬又は毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)に基づく毒物若しくは劇物として指定されたものであってはならない。
(5) 飼料添加物は、当該飼料添加物を含む飼料を給与することにより医療の分野において悪影響を及ぼすものであってはならない。
4 その他
(1) 飼料添加物は、原則として、物理的手法、化学的手法又は生物学的手法のいずれかの方法により、当該飼料添加物を含む飼料から定量がなし得るものでなければならない。
(2) 飼料添加物は、当該飼料添加物が飼料に含まれることにより、当該飼料の品質を低下させ、又は当該飼料添加物の効果を減退させるものであってはならない。
Ⅱ 評価に必要な事項
 飼料添加物は、Iに掲げる諸条件に対する適否を証明するため、次の事項について明らかにする必要がある。
 なお、劇物又は毒物に相当せず、残留試験において問題がないものであって、変異原性が陰性で、かつ既知の知見等から発がん性が疑われない場合は、発がん性試験を、反復投与毒性試験(短期)及び既知の知見等から判断して長期の反復毒性を確認する必要がない場合は反復投与毒性試験(長期)を、既知の知見等から繁殖に対する悪影響が疑われない場合は世代繁殖試験を省略できるものとする。
 さらに、食品添加物として指定されているもの又は食品に広く用いられているものに関する安全性についての事項は、省略することができるものとする。
 ただし、上記に該当するため省略を行った場合は、その理由及び妥当性について明らかにする必要がある。
1 生菌剤以外の場合
(1) 起源又は発見の経緯、外国での飼料添加物としての許可状況及び使用状況等
(2) 規格に関する事項
ア 名 称
(ア) 一般名
(イ) 化学名
イ 化学構造
ウ 製造方法
エ 生物学的、理化学的性状
(ア) 性状
(イ) 確認試験
(ウ) 純度試験
(エ) 含量及び定量法
オ 飼料中の定量法
カ 経時的変化(飼料添加物及び飼料中の当該飼料添加物の安定性)
(3) 効果に関する事項
ア 効果を裏付ける基礎的試験
イ 効果を裏付ける野外応用による試験
(4) 残留性に関する事項
 対象家畜等を用いた残留試験
(5) 安全性に関する事項
ア 毒性試験
(ア) 一般毒性試験
① 単回投与毒性試験
② 反復投与毒性試験(短期)
③ 反復投与毒性試験(長期)
(イ) 特殊毒性試験
① 世代繁殖試験
② 発生毒性試験
③ 発がん性試験
④ 変異原性試験
⑤ その他の試験(局所毒性、吸入毒性等
(ウ) 薬理学的試験
(エ) 生体内動態(吸収、分布、代謝、排せつ、蓄積)に関する試験
イ 対象家畜等を用いた飼養試験
ウ 耐性菌出現に関する試験
エ その他
(ア) 自然環境に及ぼす影響に関する試験(植物毒性、魚毒性、環境汚染等)
(イ) その他
2 生菌剤の場合
(1) 起源又は発見の経緯、外国での飼料添加物としての許可状況及び使用状況等
(2) 規格に関する事項
ア 名称
(ア) 一般名
(イ) 学名
イ 製造方法
ウ 細菌学的性状
(ア) 性状
(イ) 確認試験(簡易同定法)
(ウ) 純度試験(他の細菌等)
(エ) 含量(生菌数)及び定量法(生菌数測定法)
エ 飼料中の定量法
オ 経時的変化(飼料添加物及び飼料中の当該飼料添加物の安定性)
カ 製造用種菌の規格
(ア) 継代の方法
(イ) 保存の方法
キ 品質管理の方法
ク 製剤の物理的性状
(3) 効果に関する事項
ア 効果を裏付ける基礎的試験
イ 抗菌性飼料添加物との併用による影響に関する試験
ウ 効果を裏付ける野外応用による試験
(4) 安全性に関する事項
ア 菌の分類学的位置等
イ 毒性試験
(ア) 単回投与毒性試験
(イ) 反復投与毒性試験(短期)
(ウ) 生体内動態(分布)に関する試験
ウ 対象家畜等を用いた飼養試験
エ 自然環境に及ぼす影響に関する試験
Ⅲ 評価のための資料
Ⅱに掲げる評価に必要な事項を証明するに足る資料を整備するものとし、その資料は次の条件を満たすものでなければならない。
(1) 資料作成のための試験は、必要な知識及び経験を有する者によって十分な試験を行い得る施設において適正に行われ、データの詳細が記録され、国内の飼養条件を考慮した精密かつ客観的な考察がなされていなければならない。特に、「飼料添加物の動物試験の実施に関する基準」(昭和63年7月29日付け63畜A第3039号農林水産省畜産局長、水産庁長官通達)適用対象試験については、本基準に従って実施されたものでなければならない。
(2) 分科会が適当と認めた場合には、Ⅱに掲げる評価に関する事項の一部を省略又は追加できるものとする。
(3) 資料作成のための主たる試験の実施方法の概要は、別添のとおりとする。
 なお、これは、飼料添加物としての効果、安全性等を評価するための標準的な試験の実施方法を示したものであり、十分に評価し得る試験成績が得られるならば、これ以外の方法によることもできるものとする。
主たる試験の実施方法の概要
Ⅰ 効果に関する試験
1 目的
 この試験は、被験物質(生菌剤にあっては被験生菌剤。以下、この試験において同じ。)が飼料添加物の用途に適合する効果を有することを明らかにするものである。
2 飼料の品質の低下の防止を目的とするものの試験
(1) 基礎的な試験
 被験物質の効果を明確にするとともに、至適添加量を求める。
(2) 効果の持続性を明らかにする試験
 被験物質を標準的な飼料に添加して、自然条件下及び苛酷条件下(光、温度、湿度等)における効果を確認するため、飼料添加物の安定性に関する試験に準じて試験を行う。
3 飼料の栄養成分その他の有効成分の補給を目的とするものの試験
(1) 栄養成分その他の有効成分(温室効果ガス削減を目的とする成分を除く。)の補給の効果を確認する試験
 この試験は、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、色素等について行う。
 実験動物又は対象家畜等を用いてその利用性等について試験を行う。
 なお、必要に応じて既指定の飼料添加物との比較を行う。
(2) 有効成分(温室効果ガス削減を目的とする成分に限る。)の補給の効果を確認する試験
 この試験は、ウシの曖気中の温室効果ガスを削減する資材について行う。
ア 基礎的な試験
 この試験は、被験物質の効果を明確にし、又は推定するためのものである。
イ 野外応用試験
 この試験は、対象家畜等を用い、被験物質の温室効果ガス削減効果を飼養条件下において確認するためのものである。
(ア) ウシの曖気中の温室効果ガス削減効果を確認するための測定方法
 呼吸試験チャンバー又はヘッドボックスを用いた方法、スニファー法その他妥当性が確認された方法によるものとする。
(イ) 試験動物及び反復の数並びに試験期間等
 各測定方法において効果が明確になるものを選択する。
(ウ) 観察及び検査
 試験期間中、試験動物の呼気中の温室効果ガス量、一般状態等を観察する。
 作用機序によって、給与停止による効果への悪影響が懸念される場合は、必要に応じてその影響を確認する試験を実施する。
4 飼料が含有している栄養成分の有効な利用の促進を目的とするものの試験
(1) 成長促進又は飼料効率の改善の効果を確認する試験(生菌剤を除く。)
 この試験は、抗生物質、合成抗菌剤、酵素等について行う。
ア 基礎的な試験
 この試験は、被験物質の効果を明確にするか又は推定することとし、別に類似の効果を有する既指定の飼料添加物を用いた比較対照群を設定する。
(ア) in vitro試験
(イ) in vivo試験
 実験動物又は対象家畜等を用いて試験を行う。
イ 野外応用試験
 この試験は、対象家畜等を用い、被験物質の成長促進効果を野外飼養条件下において統計学的に確認するためのものである。
 なお、ここに示した方法のほか、精度を高めるため、乱塊法、分割区法等を用いることができる。
 また、酵素にあっては、(2)のウに準じて試験を行うこととするが、その場合、(2)のウの(ア)の①の試験動物、反復数及び施設数は、ウシにあっては1群5頭(1頭×5反復×1施設)以上、ブタにあっては1群20頭(4頭×5反復×1施設)以上、ニワトリにあっては1群100羽(20羽×5反復×1施設)以上、養殖水産動物にあっては1群60尾(30尾×2反復×1施設)以上とし、国内の施設数に関する規定は適用しない。
(ア) 試験動物及び反復数
 被験物質の適用を予定している対象家畜等を用いる。
① 家畜及び家きん
 原則として、ウシにあっては各用量群1頭以上、ブタにあっては各用量群4頭以上、ニワトリにあっては各用量群20羽以上とし、反復数は、反復測定誤差の自由度が、少なくとも10以上、可能であれば20以上となるように設定する。
 なお、各試験群の飼養施設内における配置は、無作為とする。
② 養殖水産動物
 原則として、養殖水産動物にあっては、各用量群30尾以上とし、反復数は、1施設あたり2以上とする。
 なお、各試験群の飼養施設内における配置は、無作為とする。
 試験に際しては環境条件に留意し、飼育水温は、ブリ、マダイ、コイ及びウナギにあっては18~28℃、ニジマス及びギンザケにあっては8~18℃、アユにあっては15~25℃、クルマエビにあっては21~28℃であることを基準とする。
 さらに、クルマエビにあっては、前もって当該被験物質の有効性を統計学的に推定するための予備的な試験を実施し、共食い及びへい死を抑制する環境条件(特に水槽を使用する場合には、飼育尾数、飼育面積、採光、各試験群の飼養施設内における配置等の条件)並びに試験動物の輸送条件を検討する。
(イ) 投与期間
 被験物質の適用を予定している期間とする。
 ただし、養殖水産動物にあっては、その期間が長期に及ぶ場合には、試験動物が稚魚又は体重1g未満のクルマエビ(水槽を用いた試験の場合を除く。)である場合を除き、対照群の平均体重が3倍以上になる期間をもってこれに代えることができる。また、水槽を用いた試験の場合には、クルマエビにあっては、次の期間をもってこれに代えることができる。
① 1g未満のエビを用いる場合は4週間以上
② 1~5gのエビを用いる場合は8週間以上とし、かつ、対照群の平均体重が2倍以上になる期間
(ウ) 投与方法
 被験物質を飼料に添加して連続投与する。
 なお、飼料は、栄養学的にみて欠陥のないものを用い、その原料及び配合割合を明らかにしておく。
(エ) 投与量
 当該被験物質の効果に関する用量反応関係を統計学的に推定するための試験を事前に実施し、基礎的試験、残留性試験等の結果と合わせて総合的に考察して至適添加量を求めることとし、投与量は、原則としてこの至適添加量の最高量及び最低量を含む3水準を設定し、別に対照群を置く。
 なお、必要に応じて既指定の飼料添加物を常用される量添加した群を設定する。
(オ) 施設数
 3か所以上の試験施設で実施する。抗生物質、合成抗菌剤及び有機酸について試験を行う場合においては、試験施設のうち少なくとも2か所は国内の試験施設とする。
(カ) 観察及び検査
① 体重、飼料摂取量(養殖水産動物にあっては飼料給与量)、被験物質摂取量(養殖水産動物にあっては被験物質投与量)及び飼料効率(体重増加量を飼料摂取量で除した数。以下同じ。)
 家畜及び家きんにあっては、試験期間が1週間程度のものは試験開始時及び終了時に、1か月程度のものは1週間隔で、2か月以上のものは2週間隔でそれぞれ測定する。
 養殖水産動物にあっては、試験期間が1週間程度のものは試験開始時及び終了時に、1か月以上のものは2週間隔以上でそれぞれ測定する。ただし、クルマエビにあっては、試験開始時及び終了時に、試験期間が数か月に及ぶものは試験期間中に月一回程度を目安にそれぞれ測定する。
② 一般状態
 試験期間中、試験動物の一般状態(養殖水産動物にあっては、摂餌状況、行動、体色、体形等の異常の有無。以下同じ。)を観察する。
 なお、糞便が異常に軟らかい場合には、概略の飲水量を測定する。
③ 病理学的検査
 健康状態に異常が認められた試験動物又は死亡例については、必要により病理学的検査等を実施する。
(キ) 試験成績の分散分析
 原則として、試験場ごとに分散分析を行うとともに、全体を併せて検定する。
 なお、群飼の場合には、1群を1単位とする。ただし、個体ごとの飼料摂取量(養殖水産動物にあっては飼料給与量)が記録され、飼養施設内において各個体が互いに独立し、自由に生活できる飼養施設を使用する場合には、群飼であっても、単飼した試験成績と同様に取り扱うことができる。
(2) 成長促進又は飼料効率の改善の効果を確認する試験(生菌剤)
 この試験は生菌剤について行う。
ア 基礎的な試験
 腸内正常細菌叢の維持又は正常化、腸内有害物質の低減、発育促進等のうちいずれか1以上の効果について確認する。
(ア) in vitro試験
(イ) in vivo試験
 実験動物又は対象家畜等を用いて試験を行う。被験生菌の分布、定着等についても確認することが望ましい。
イ 抗菌性物質との併用による影響に関する試験
(ア) in vitro試験
 被験生菌について、既指定の抗菌性飼料添加物に対する感受性を調査する。
(イ) in vivo試験
 in vitro試験の結果、感受性が高く、併用により生菌が消化管で生存しないおそれがある場合には、次により試験を行い、その影響を調査する。
 なお、同系統の抗菌性飼料添加物については、そのうちの代表的なものを用いて試験を行う。
① 試験動物
 試験動物は、被験生菌の適用を予定している対象家畜を用い、試験動物の数は、ウシ及びブタにあっては、l群5頭以上、ニワトリにあっては、1群10羽以上とする。
② 投与期間
 抗菌性飼料添加物の併用投与期間は、1週間以上とする。
 なお、抗菌性飼料添加物の投与は、被験生菌の投与後、被験生菌の糞便からの回収量(菌数)が一定となった後に開始するものとする。
③ 投与方法
 被験生菌及び抗菌性飼料添加物は、原則として飼料に添加して連続投与する。
④ 投与量
 投与量は、被験生菌については至適添加量と考えられる量の最高量と最低量の中間量を投与し、抗菌性飼料添加物については認められている量の最高量を投与する。
⑤ 観察事項
ⅰ 抗菌性飼料添加物の投与前
 被験生菌投与開始から、数日間隔で糞便を採取し、糞便1g中の被験生菌数が一定となったことを確認する。
 この場合、被験生菌数が一定となったことは、3回以上連続して同程度の菌数が検出されたことにより確認する。
ⅱ 抗菌性飼料添加物の投与後
 抗菌性飼料添加物の併用投与期間中毎日糞便を採取し、被験生菌の消長を観察する。
ウ 野外応用試験
(ア) 生菌剤の野外における効果は、原則として下記により試験を行い、評価する。
 なお、健康状態に異常が認められた試験動物又は死亡例については、必要により病理学的検査等を実施する。
① 試験動物、反復数及び施設数
 被験生菌剤の適用を予定している対象家畜等を用いる。
i 家畜及び家きん
 原則として、ウシにあっては1群15頭(1頭×5反復×3施設又は1頭×5反復×1施設で時期を変えて3回)以上、ブタにあっては1群60頭(4頭×5反復×3施設又は4頭×5反復×1施設で時期を変えて3回)以上、ニワトリにあっては1群300羽(20羽×5反復×3施設又は20羽×5反復×1施設で時期を変えて3回)以上とし、少なくとも1施設は、国内の施設とする。
ii 養殖水産動物
 原則として、養殖水産動物にあっては、1群180尾(30尾×2反復×3施設又は30尾×2反復×1施設で時期を変えて3回)以上とし、少なくとも1施設は、国内の施設とする。
 対象家畜等を、海水で飼育するものと淡水で飼育するものの2グループに区分し、適用を予定しているグループ内の少なくとも1種類を用いて試験を実施するとともに、試験に際しては環境条件に留意し、飼育水温は、ブリ、マダイ、コイ及びウナギにあっては18~28℃、ニジマス及びギンザケにあっては8~18℃、アユにあっては15~25℃、クルマエビにあっては21~28℃であることを基準とする。
 さらに、クルマエビにあっては、当該被験生菌剤の有効性を統計学的に推定するための予備的な試験を事前に実施し、共食い及びへい死を抑制する環境条件(特に水槽を使用する場合には、飼育尾数、飼育面積、採光、各試験群の飼養施設内における配置等の条件)並びに試験動物の輸送条件を検討する。
② 投与期間
 (1)のイの(イ)に準ずる。
③ 投与量
 至適添加量と考えられる投与群(以下「推定至適添加量群」という。)を試験群とし、別に対照群を設定する。
 なお、複数の用量群(推定至適添加量群を含む)を置いても差し支えない。
④ 観察事項
 試験期間中、原則として次の事項について観察する。
ⅰ 体重
ⅱ 飼料摂取量(養殖水産動物にあっては飼料給与量)
ⅲ 被験生菌摂取量(養殖水産動物にあっては被験生菌投与量)
ⅳ 飼料効率
ⅴ 一般状態
(イ) (ア)により、統計的な有意差が得られない場合には、追加試験を行い、それを含めて評価することができることとする。
 なお、追加試験を実施する際には、(ア)で得られた試験成績から統計的に処理して試験規模を推定することが望ましい。
 (統計処理例)
 n>2t2・ s2/d2
 n:必要とする反復数
 t:自由度2n-2,危険率αに対するt分布表から求めたtの値
 s2:前の試験における誤差分散
 d:前の試験における平均値の差
(3) 消化率の向上を確認する試験
 この試験は、酵素等について行う。
ア 基礎的な試験
(ア) in vitro試験
(イ) in vivo試験
イ 野外応用試験
 この試験は、被験物質の各種飼料成分に対する消化率向上の有無を対象家畜等を用いて確認するためのものであり、試験動物は、被験物質の適用を予定している対象家畜等を用いる。
 なお、健康状態に異常が認められた試験動物又は死亡例については、必要により病理学的検査等を実施する。
(ア) ニワトリ
① 試験動物
 人工肛門設置鶏を用い、1群4羽以上とする。
② 投与期間
 6日間以上とする。
③ 投与量
 推定至適添加量群を試験群とし、別に対照群を設定する。
 なお、複数の用量群(推定至適添加量群を含む)を置いても差し支えない。
④ 飼料
 基礎飼料は、日本飼養標準(独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構編)に示されている各栄養成分を十分かつバランスよく含んだ配合飼料とし、酸化クロムを指標物質とする場合は酸化クロムをO.1~0.2%、酸不溶性灰分を指標物質とする場合はセライトを1.0%均一に混合し、粒度は採食時にえり分けのできない程度の粉状とする。ただし、油脂添加飼料は避ける。
⑤ 糞便の採取
 試験動物を個体別に代謝ケージ等に収容し、糞便のつまりに注意して1日1羽当たり約80gの飼料を給与し、給与後5日目以降の2日間以上の糞便を個体別に採取し、約60℃の通風乾燥機で乾燥した後、風乾し、粉砕して分析用試料とする。
⑥ 分析
 一般成分は飼料の公定規格(昭和51年農林省告示第756号。以下「公定規格」という。)に定める方法により分析する。
 酸化クロム及び酸不溶性灰分は飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令を改正する省令等の施行について(昭和56年7月27日付け56畜B1594号農林水産省畜産局長、水産庁長官通知。以下「通知」という)の別記3「飼料の品質表示に係る可消化養分総量又は代謝エネルギーの取扱い」の2.の(4)に定める方法により分析する。
⑦ 消化率の計算
 インデックス法による計算式で算出する。
(イ) ブタ
① 酸化クロム、酸不溶性灰分又は酸化チタンを指標物質としたインデックス法
ⅰ 試験動物
 体重25~50kgの肉豚を用い、1群4頭以上とする。
ⅱ 投与期間
 9日間以上とする。
ⅲ 投与量
 推定至適添加量群を試験群とし、別に対照群を設定する。
 なお、複数の用量群(推定至適添加量群を含む)を置いても差し支えない。
ⅳ 飼料
 基礎飼料は、日本飼養標準に示されている各栄養成分を十分かつバランスよく含んだ粉状の配合飼料とし、酸化クロムを指標物質とする場合は酸化クロムを0.1~0.2%、酸不溶性灰分を指標物質とする場合はセライトを1.0%、酸化チタンを指標物質とする場合は酸化チタンを0.1%均一に混合する。なお、水を加えて「かたねり」状態で給与することができる。
ⅴ 糞便の採取
 試験動物を個体別に代謝ケージ等に収容し、1日1頭当たり体重の3%を目途にして体重が減少しない量の飼料を1~3回で給与し、給与後5日目以降の5日間以上の糞便を個体別に採取し、約60℃の通風乾燥機で乾燥した後、風乾し、粉砕して分析用試料とする。糞便は、毎日少なくとも朝と夕の2回、一定時刻に採取する。なお、採取糞は、原則として全量を乾燥するものとするが、生糞から部分採取し、均一に混合したものの乾燥をもって代えることができる
ⅵ 分析
一般成分は、公定規格に定める方法により分析する。
 酸化クロム、酸不溶性灰分及び酸化チタンは通知の別記3「飼料の品質表示に係る可消化養分総量又は代謝エネルギーの取扱い」の2.の(4)に定める方法により分析する。
ⅶ 消化率の計算
 インデックス法による計算式で算出する。
② 全糞採取法(繊維含量の多い飼料の場合)
ⅰ 試験動物
 生後8か月を超えた成豚を用い、1群4頭以上とする。
ⅱ 投与期間
 10日間以上とする。
ⅲ 投与量
 推定至適添加量群を試験群とし、別に対照群を設定する。
 なお、複数の用量群(推定至適添加量群を含む)を置いても差し支えない。
ⅳ 飼料
 基礎飼料は、日本飼養標準に示されている各栄養成分を十分に、かつバランスよく含んだ粉状の配合飼料とする。なお、水を加えて「かたねり」状態で給与することができる。
ⅴ 糞便の採取
 試験動物を個体別に代謝ケージ等に収容し、1日1頭当たり乾物給与量として3kg以下で残飼が生じない量の飼料を1~3回で給与し、給与後6日目以降の5日間以上の全量の糞便を個体別に採取し、約60℃の通風乾燥機で乾燥した後、風乾し、粉砕して分析用試料とする。糞便は、毎日少なくとも朝と夕の2回、一定時刻に採取する。
ⅵ 分析
 一般成分は公定規格に定める方法により分析する。
ⅶ 消化率の計算
 飼料摂取量、排糞量及びそれらの分析値をもとに、全糞採取法の計算式で算出する。
(ウ) ウシ
① 試験動物
 1群4頭以上とする。
 なお、ウシの代わりにヒツジ又はヤギを用いることができる。
 また、管理方法を大幅に変えるものについては、14日以上の十分な馴化期間を置くこと。
② 投与期間
 14日間以上とする。
③ 投与量
 推定至適添加量群を試験群とし、別に対照群を設定する。
 なお、複数の用量群(推定至適添加量群を含む)を置いても差し支えない。
④ 飼料
 基礎飼料は、濃厚飼料の割合は乾物中60%以下、粗たん白質含量は乾物中12%以上、粗繊維含量は乾物中15%以上であり、その他の栄養成分については、十分かつバランスよく含んだものとする。なお、粗飼料源としては乾草を用いる。
⑤ 糞便の採取
 試験動物を個体別に代謝ケージ等に収容し、エネルギーは維持要求量、粗たん白質は維持要求量以上を目途とし、残飼が生じないよう飼料を給与し、給与後8日目以降の7日間以上の糞便を最長24時間間隔で一定時刻に個体別に全量採取し、重量を測定した後、よく混合し、排せつ量に対して一定の比率で試料を採取する。採取した試料は、密封し、冷凍庫に保存する。全ての試料を採取した後、保存しておいた試料を混合し、約60℃の通風乾燥機で乾燥した後、風乾し、粉砕して分析用試料とする。ただし、水分及び粗たん白質については、原則として混合した試料を新鮮物のまま分析に供する。
 なお、ヒツジ及びヤギを用いる場合にあっては、糞便を個体別に全量採取した後、約60℃の通風乾燥機で乾燥する。その後、風乾状態に戻し重量を測定し密封して保存する。全ての試料を採取した後、保存しておいた試料全量をよく混合し、一部を粉砕して分析用試料とする。
⑥ 分析
 一般成分は公定規格に定める方法により分析する。
⑦ 消化率の計算
 飼料摂取量、排糞量及びそれらの分析値をもとに、全糞採取法による計算式で算出する。
(エ) 養殖水産動物
① 試験動物及び反復数
 試験動物の数は正常な摂餌を妨げない範囲とする。
 また、反復数は、2以上とするが、この場合、同一の時期に2水槽以上を用いるか、又は同一の水槽を用いて時期を変えて2回以上とする。
 また、試験に際しては環境条件に留意し、飼育水温は、ブリ、マダイ、コイ及びウナギにあっては18~28℃、ニジマス及びギンザケにあっては8~18℃、アユにあっては15~25℃であることを基準とする。
② 投与期間
 9日間以上とする。
③ 投与量
 推定至適添加量群を試験群とし、別に対照群を設定する。
 なお、複数の用量群(推定至適添加量群を含む)を置いても差し支えない。
④ 飼料
 基礎飼料は、栄養学的に見て欠陥のないものを用い、原料及び配合割合を明らかにしておく。酸化クロムを指標物質とする場合は酸化クロムを0.5~1.0%、酸不溶性灰分を指標物質とする場合はセライトを1.0%均一に混合する。
 なお、魚種ごとに一般的に使用実績のある指標物質を選択する。
⑤ 糞便の採取
 試験動物を採糞水槽に収容し、給与後7日目以降の3日間以上の自然排せつされた糞便を採取する。
⑥ 分析
 水槽ごとに糞便を分析することとし、一般成分は、公定規格に定める方法により分析する。
 酸化クロム及び酸不溶性灰分は通知の別記3「飼料の品質表示に係る可消化養分総量又は代謝エネルギーの取扱い」の2.の(4)に定める方法により分析する。
⑦ 消化率の計算
 インデックス法による計算式で算出する。
(4) 飼料の嗜好性の向上を確認する試験
 この試験は、対象家畜等を用い、被験物質の嗜好性改善の効果を確認するためのものであり、呈味料、着香料等について行う。
ア 自由選択方式による試験
(ア) 試験動物及び反復数
 試験動物は、被験物質の適用を予定している対象家畜等を用いる。原則として、ウシ及びブタにあっては各用量群1頭以上、ニワトリにあっては各用量群10羽以上とし、反復測定誤差の自由度が、少なくとも10以上、可能であれば20以上となるように、反復数を設定する。
 なお、各試験群の飼養施設内における配置は、無作為とする。
(イ) 投与期間
 1~2週間程度とする。
(ウ) 投与方法
 試験房内に至適添加量と考えられる量の最高量を添加した飼料及び被験物質を添加しない飼料の2種類の飼料を、試験動物が両者の飼料を自由に選択して採食できるようにそれぞれ配置し、給与する。
 なお、この場合、両飼料の試験房内における配置条件に差異が生じないように十分留意することとし、できれば給餌器の配置場所を毎日変更する。
 また、飼料は、栄養学的にみて欠陥のないものを用い、その原料及び配合割合を明らかにしておく。
(エ) 観察及び検査
① 被験物質添加飼料及び被験物質無添加飼料の摂取量(養殖水産動物にあっては給与量)を毎日測定する。
② 一般状態
 試験期間中、試験動物の一般状態を観察する。
 なお、健康状態に異常が認められた試験動物又は死亡例については、必要により病理学的検査等を実施する。
イ 分離方式による試験
(ア) 試験動物、反復数及び施設数
 試験動物は、被験物質の適用を予定している対象家畜等を用いる。原則として、ウシにあっては1群5頭(1頭×5反復×1施設)以上、ブタにあっては1群20頭(4頭×5反復×1施設)以上、ニワトリにあっては1群100羽(20羽×5反復×1施設)以上、養殖水産動物にあっては1群60尾(30尾×2反復×1施設)以上とする。
 また、養殖水産動物にあっては、試験に際して環境条件に留意し、飼育水温は、ブリ、マダイ、コイ及びウナギにあっては18~28℃、ニジマス及びギンザケにあっては8~18℃、アユにあっては15~25℃であることを基準とする。
(イ) 投与期間
 (1)のイの(イ)に準ずる。
(ウ) 投与量
 推定至適添加量群を試験群とし、別に対照群を設定する。
 なお、複数の用量群(推定至適添加量群を含む)を置いても差し支えない。
(エ) 観察及び検査
 試験期間中、原則として次の事項について観察する。
① 体重
② 飼料摂取量(養殖水産動物にあっては飼料給与量)
③ 被験物質摂取量(養殖水産動物にあっては被験物質投与量)
④ 一般状態
 試験期間中、試験動物の一般状態を観察する。
 なお、健康状態に異常が認められた試験動物又は死亡例については、必要により病理学的検査等を実施する。
(5) 特定の病原寄生生物による生産性の低下の防止効果を確認するための試験
 この試験は、特定の病原寄生生物による生産性の低下の防止を目的とする抗生物質、合成抗菌剤等について行い、対象家畜等を用いて、検体の特定の病原寄生生物による生産性の低下の防止効果を野外において確認するものである。
 なお、試験は原則として(1)に準じて実施することとするが、試験計画に際しては、採用する試験方法が、被験物質の効果を明確に評価できるよう十分配慮する。
Ⅱ 残留試験
1 通常添加
(1) 目的
 この試験は、被験物質を対象家畜等に投与し、その体内及び生産物中の残留を明らかにするものである。
(2) 試料の採取場所
 試料は、2か所以上の異なる場所において飼養した試験動物から採取する。
(3) 試験動物
ア 当該被験物質の飼料添加物としての適用を予定されている対象家畜等を用いる。この場合、試験動物は飼料、飼料添加物の使用歴及び試験開始前における飼養方法等が明らかなものでなければならない。
イ 試験動物の数は、被験物質の残留を測定するために必要な試料が得られ、かつ被験物質の消長を明らかにするために十分な数とし、ウシにあっては各用量群1採材時点2頭以上、ブタにあっては各用量群1採材時点3頭以上、ニワトリ(雌を用いることが望ましい。)にあっては各用量群1採材時点3検体(1羽で分析に必要な量の検体が得られない場合には2羽以上を合わせて1検体とする)以上とし、養殖水産動物にあっては、分析試料の必要量を満たし、かつ適正な摂餌を妨げない尾数とする。
ウ 養殖水産動物にあっては、試験に際して環境条件に留意し、飼育水温は、ブリ、マダイ、コイ、ウナギ及びクルマエビにあっては18~24℃、ニジマス及びギンザケにあっては8~14℃、アユにあっては15~21℃であることを基準とする。
(4) 投与期間
 投与期間は、被験物質の飼料添加物としての適用期間とするが、適用期間が長期間にわたるものについては、予備試験等を行い、その結果等を参考として適当な期間を設定することができる。ただし、この場合には、一定期間の連続投与後において試料中の残留量が一定値に達し、その後の変化がないという根拠を示さなければならない。
(5) 投与方法
 被験物質を飼料に添加して連続投与する。
 なお、投与に当たっては、飼料が試験動物に均一に摂取されるよう留意する。
(6) 投与量
 原則として、適用を予定している被験物質の最高濃度を最低投与量とし、用量と残留の関係を知るため、このほかに、その数倍ないし数十倍程度の用量を設定し、別に対照群を置く。
 なお、最高投与群の投与量は、試験動物の飼料摂取量に明らかな減少をきたさない程度の濃度とする。
(7) 飼料
 試験に用いる基礎飼料は、公定規格が定められているものについては、それに適合するものを使用する。
 なお、基礎飼料に添加する被験物質以外の飼料添加物(ただし、ビタミン、ミネラル、アミノ酸等は除く。)の添加は、極力避けるものとするが、試験動物の飼養上、やむを得ない場合には、被験物質の分析を妨害しないことが明らかな飼料添加物を用いる。
(8) 試料の採取
ア 試料の採取時期は、被験物質の消長を明らかにするため、必要な時点を設定しなければならない。
イ 試料の採取部位は、原則として可食部位とする。この場合、筋肉、脂肪、肝臓(肝膵(すい)臓)、腎臓、小腸、卵、乳等各部位における被験物質の分布が明らかとなるように採取する必要がある。
ウ 試料は、採取後0~5℃に保存し、速やかに分析に供する。長期保存は極力避けるものとするが、やむを得ない場合には凍結保存する。この場合、凍結・解凍の過程で被験物質が分解しないことを確認しておくこと。
(9) 分析
ア この試験のためには、相当の感度、精度及び再現性を有する分析法を確立しておく。この場合における相当の感度、精度及び再現性とは、検出限界0.05ppm以下、1~2ppmの添加回収試験における回収率70%以上、変動係数(標準偏差/平均値)0.1以下のものをいう。ただし、被験物質について食品の残留基準値が定められており、かつその値が0.05ppm未満である場合は、検出限界は食品の残留基準値以下であること。
なお、被験物質が抗生物質の場合、その分析法は、生物学的方法又は化学的方法とする。
イ 分析対象は、当該飼料添加物の有効成分とするが、代謝生成物の残留性を明らかにする必要がある場合は、併せて分析対象とする。
ウ 分析値から対照値を差し引かず、そのまま記載する。また、回収率の補正は行わない。
エ 検出限界(Xppm)未満の場合には、「検出せず。」と記載せず「<Xppm」と記載する。
オ 検出限界未満の測定値が含まれるものについては、平均値を算出しない。
2 微量添加
(1) 目的
 この試験は、被験物質を微量含有した飼料を与えた場合、その体内及び生産物中の残留を明らかにするものである。
 なお、被験物質が吸収され難いことが明らかな場合は、省略することができる。
(2) 試料の採取場所
 試料は、1か所以上の場所において飼養した試験動物から採取する。
(3) 試験動物
ア 産卵中のニワトリを含む1種類以上の対象家畜等を用いる。
この場合、試験動物は、飼料及び飼料添加物の使用歴並びに試験開始前における飼養方法等が明らかなものでなければならない。
イ 試験動物の数は、産卵中のニワトリにあっては、各用量群6羽以上とし、その他は1の(3)のイに準ずる。
(4) 投与期間
 4週間以上とする。
(5) 投与方法
 1の(5)に準ずる。
(6) 投与量
 投与量は、原則として通常投与量の100分の1程度を最低投与量とし、その数倍から10倍程度までの用量を設定し、別に対照群を置く。
(7) 飼料
 1の(7)に準ずる。
(8) 試料の採取
 1の(8)に準ずる。
(9) 分析
 1の(9)に準ずる。
Ⅲ 菌の分類学的位置等
 生菌剤については、菌の分類学的位置、菌の由来、菌の使用歴、菌の生産物等から菌の安全性を確認する。
Ⅳ 単回投与毒性試験
1 目的
 この試験は、被験物質(生菌剤にあっては被験生菌剤。以下、この試験において同じ。)を試験動物に単回経口投与したときの毒性を明らかにするものである。
2 試験方法
 被験物質の単回経口投与によって発現する毒性徴候が明らかである場合は固定用量法を用い、致死量が推定できる場合は毒性等級法を用いる。
 毒性徴候と致死量の両方についての知見がある場合又はいずれも不明な場合は、いずれか一方の試験法を選択して実施する。
(1) 固定用量法
ア 試験動物
(ア) 動物種
 げっ歯類(ラット等)を用いる。
(イ) 条件
 8~12週齢の若く健康な動物(体重が平均±20%以内の個体)を用いる。投与開始前に、少なくとも5日間の馴化期間を置く。
 原則として雌(未経産で非妊娠のものに限る。)を用いる。ただし、雄の方の感受性が高いと判断される情報がある場合には雄を用いる。
イ 投与方法
 強制経口単回投与とする。投与前に、絶食(ラットの場合一晩、マウスの場合3~4時間。飲水のみ可。)を行う。単回投与ができない場合は、24時間以内に分割投与する。
 投与容量は、原則として1ml/100g体重を超えないこととする。被験物質は、必要に応じて水又は適当な溶媒に溶解又は懸濁する。水以外の溶媒を用いる場合、当該溶媒の毒性は、既知のものでなければならない。
ウ 動物数の設定
(ア) 見当付け試験
 1投与用量につき1匹とする。
(イ) 主試験
 1投与用量につき5匹とする。ただし、見当付け試験を実施している投与用量については、見当付け試験に用いた1匹を加えて5匹となるように、4匹を用いて実施する。
エ 試験の手順
(ア) 見当付け試験
 主試験の開始投与量を選定するために、投与量を5mg/kg体重、50mg/kg体重、300mg/kg体重又は2,000mg/kg体重から選択し、別表1の手順に沿って試験を行う。最初の投与量の選択に当たっては、明確な毒性徴候が発現すると予想される用量を選択する。明確な毒性徴候が発現すると予想される用量に関する情報がない場合には、投与量を300mg/kg体重から開始することが望ましい。なお、次の投与までの間隔は、少なくとも24時間空けなければならない。
 また、投与量5mg/kg体重で死亡した場合には、LD50≦5mg/kg体重とし、主試験は実施せずに試験を終了する。
(イ) 主試験
 別表2の手順に沿って試験を行う。ただし、見当付け試験で死亡の見られた投与用量については、主試験で2匹以上の死亡があったものとみなし、主試験は行わない。なお、次の投与までの間隔は、毒性徴候の持続性及び重症度によって決定する。先に被験物質を投与した試験動物の生存又は死亡が確認されるまでは、次の投与は行わない。
(ウ) 限界試験
 見当付け試験において投与用量2,000mg/kg体重で死亡せず、かつ主試験において2,000mg/kg体重で被験物質に起因した死亡が1匹以下の場合には、投与用量2,000mg/kg体重を超える用量の投与を行う必要はない。
オ 観察及び検査
 試験動物は、少なくとも14日間飼養し、次の事項について観察及び検査を実施する。
(ア) 一般状態
 被験物質の投与後30分以内に少なくとも1回、その後1日は定期的に観察(投与後4時間は特に注意して観察)し、引き続き毎日1回注意深く観察する。観察に当たっては、状態の変化が強制経口投与等の試験手技によるものか、被験物質の毒性によるものか判断できるようにするため、糞の色の変化等についても記録を行う。
 また、全例について、個体ごとに、肉眼的に観察された全ての毒性徴候の種類、発現時期、消長時期及び死亡時期を記録する。
(イ) 体重
 個体ごとに、被験物質投与直前に1回、投与後は毎週1回測定するものとし、試験動物が死亡した場合には、死亡時においても測定する。試験終了時に生存している個体は、体重を測定後と殺する。
(ウ) 病理学的検査
 全ての試験動物について剖検を行い、肉眼的病理所見を記録する。被験物質投与後24時間以上生存した試験動物の臓器で肉眼的に病理所見の認められたものについては、病理組織学的検査を行うことが望ましい。
(2) 毒性等級法
ア 試験動物
 (1)のアに準ずる。
イ 投与方法
 (1)のイに準ずる。
ウ 動物数の設定
 各投与段階につき3匹とする。
エ 試験の手順
(ア) 試験の開始投与用量を5mg/kg体重、50mg/kg体重、300mg/kg体重又は2,000mg/kg体重の中から選択し、別表3の手順に沿って試験を行う。最初の投与用量の選択に当たっては、投与した試験動物のうち何匹かが死亡すると予想される用量を選択する。被験物質の急性毒性に関する情報がない場合には、投与用量を300mg/kg体重から開始することが望ましい。
(イ) 次の投与までの間隔は、毒性徴候の持続性及び重症度によって決定する。先に被験物質を投与した試験動物の生存又は死亡が確認されるまでは、次の投与は行わない。
(ウ) 3匹の試験動物に投与用量2,000mg/kg体重を投与し、死亡が1匹以下の場合には、新たに2,000mg/kg体重を3匹の試験動物に投与する。2度目の投与においても、被験物質に起因した死亡が1匹以下の場合には、2,000mg/kg体重を超える用量の投与を行う必要はない。
オ 観察及び検査
 (1)のオに準ずる。
V 反復投与毒性試験(短期)
1 目的
 この試験は、被験物質(生菌剤にあっては被験生菌剤。以下、この試験において同じ。)を試験動物に3か月以上連続投与し、その毒性を明らかにするものである。
2 試験動物
(1) 動物種
 げっ歯類(通常はラット)を含む1種類以上を用いる。げっ歯類を用いた他の毒性試験又は薬物動態試験の結果から、非げっ歯類の化学物質による暴露影響の情報が必要な場合には、非げっ歯類(通常はイヌ)を用いる。
 試験が反復投与毒性試験(長期)の予備試験として実施される場合は、両試験で同一種かつ同一系統の動物を用いることが望ましい。
(2) 条件
 げっ歯類にあっては、若く健康な動物(体重が雌雄それぞれの平均±20%以内の個体)を用いる。投与は、離乳し、少なくとも5日間の馴化期間を置いた後、できるだけ早い時期に行うこととし、9週齢以前には開始する。なお、雌は未経産で非妊娠のものを用いる。
 非げっ歯類にあっては、若く健康な動物を用いる。イヌの場合、投与は、少なくとも5日間の馴化期間を置いた後、4~6か月齢から開始することが望ましい(遅くとも9か月齢までには投与を開始する。)。
(3) 動物数
 各用量群及び対照群について、げっ歯類にあっては雌雄各10匹以上とし、非げっ歯類にあっては雌雄各4匹以上とする。
 被験物質又は類似物質に関する知見によっては、対照群及び最高用量群(設定する投与群のうち最も用量の高いものをいう。以下同じ。)では、毒性変化の持続性、回復性又は遅延毒性を最終投与後適当な期間観察するサテライト群(げっ歯類:雌雄各5匹、非げっ歯類:雌雄各4匹)の設定を検討する。
3 投与期間
 90日とする。
4 投与方法
 原則として、被験物質を飼料又は飲水に添加して連続投与する。飼料添加又は飲水添加による連続投与が困難である場合には、強制経口投与又はカプセル投与により、週5日間の連続投与としてもよい。
5 投与量
 対照群の他に少なくとも3段階の投与群を設ける。
 用量段階は、被験物質の毒性の全容を明らかにし、無毒性量を推定することができるように設定する。最高用量は多数例の死亡を起こすことなく毒性影響が認められる用量、最低用量は何ら毒性影響が認められない用量(無毒性量)とし、用量反応関係がみられるように各用量段階を設定する。また、用量設定の根拠を示すこととする。
 なお、技術的に投与できる最大量又は1,000mg/kg体重/日相当量で行われた1試験において毒性作用が観察されず、構造的に類似した物質での成績から毒性が予測されない場合にはそれ以上の投与量で実施する必要はない。
 飼料添加の場合は、栄養障害が起こらないよう十分配慮し、通常、飼料添加濃度5%(W/W)を超える投与量で実施する必要はない。
 対照群は、溶媒等を使用しない場合は無処置対照群、溶媒等を使用する場合は溶媒対照群とする。対照群の試験動物については、被験物質の投与を行わないこと以外、全ての点で被験物質投与群と同一条件とする。被験物質の投与に溶媒等を使用する場合には、投与溶媒量の最も多い用量群と同量の投与を行うこと。水以外の溶媒を用いる場合、当該溶媒の毒性は、既知のものでなければならない。
6 観察及び検査
 被験物質の毒性を十分把握するため、少なくとも次の事項について観察及び検査を実施する。
(1) 体重及び摂餌量
 投与開始前に1回、投与開始後は1週間隔で測定する。
(2) 被験物質摂取量
 1週間隔で測定する。
(3) 飲水量
 被験物質を飲水に添加した場合は、1週間隔で測定する。
 飼料添加又は強制経口投与の場合においても、試験期間中に飲水行動の変化が想定される場合は、飲水量の測定を考慮する。
(4) 飼料効率
 1週間隔で測定する。
(5) 一般状態及び死亡率
 1日1回以上、一般臨床観察を行う。また、1日2回以上、病的状態及び死亡の徴候を調べる。
(6) 血液学的検査
 げっ歯類にあっては原則として試験終了時(必要な場合は中間時及び終了時)、非げっ歯類にあっては投与開始前、中間時(1か月間隔等)及び試験終了時にそれぞれ採血し、ヘマトクリット値、ヘモグロビン濃度、赤血球数、総白血球数、白血球百分比、血小板数、血液凝固時間又は血液凝固能を検査する。
(7) 血液生化学的検査
 げっ歯類にあっては原則として試験終了時(必要な場合は中間時及び終了時)、非げっ歯類にあっては投与開始前、中間時(1か月間隔等)及び試験終了時にそれぞれ採血する。なお、マウスを除き、採血前に一晩絶食させることが望ましい。
 げっ歯類にあっては、ナトリウム、カリウム、グルコース、総コレステロール、尿素、血液尿素窒素、クレアチニン、総たん白、アルブミン、肝機能を示す2種以上の酵素(アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリフォスファターゼ、ガンマグルタミン酸トランスペプチターゼ(γGTP)、ソルビトールデヒドロゲナーゼ(SDH))等を検査する。肝臓若しくは他の臓器の追加の酵素又は胆汁酸の測定を含めてもよい。
 非げっ歯類にあっては、カルシウム、リン、塩化物、ナトリウム、カリウム、空腹時のグルコース、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、オルニチンデカルボキシラーゼ、ガンマグルタミン酸トランスペプチターゼ(γGTP)、尿素窒素、アルブミン、血中クレアチニン、総ビリルビン、総血清たん白等を検査する。
(8) 眼科学的検査
 少なくとも最高用量群と対照群について、被験物質の投与前と試験終了時に行う。異常があった場合には、全ての試験動物を検査する。
(9) 尿検査
 げっ歯類にあっては、任意で、試験終了時に、外観、尿量、浸透圧又は比重、pH、たん白、グルコース及び血液又は血球を検査する。
 非げっ歯類にあっては、試験開始時、中間時及び終了時に、外観、尿量、浸透圧又は比重、pH、たん白、グルコース及び血液又は血球を検査する。
(10) 病理学的検査
 次の事項について、全ての試験動物のできるだけ多くの器官について検査(体表面、全ての開口部、頭蓋骨の腔、胸腔、腹腔及びそれらの内容物の検査を含む。)を行うものとする。また、試験中死亡した試験動物についても、剖検等によりその死因を追求する。
ア 肉眼的観察
イ 器官の重量
 げっ歯類にあっては、全ての試験動物(瀕死又は中途と殺された試験動物を除く。)の肝臓、腎臓、副腎、精巣、精巣上体、子宮、卵巣、胸腺、脾臓、脳及び心臓の重量を測定する。
 非げっ歯類にあっては、更に胆嚢及び甲状腺(上皮小体を含む。)の重量を測定する。
ウ 器官及び組織の保存
 将来において必要な場合に病理組織学的検査が実施できるよう、試験終了後も、次に掲げる器官及び組織を保存しなければならない。
 全ての肉眼的病変部、皮膚、脳(大脳、小脳、橋/延髄を含む代表部位)、下垂体、甲状腺、上皮小体、胸腺、食道、唾液腺、胃、小腸、大腸(パイエル板を含む。)、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、脾臓、心臓、気管及び肺(固定液を注入後浸漬して保存)、大動脈、生殖腺、子宮、副生殖器、雌の乳腺、前立腺、膀胱、胆のう、リンパ節(投与経路のリンパ節1個及び全身への影響を見るために遠位のリンパ節1個)、末梢神経(坐骨神経又は脛骨神経等筋肉に近接したもの)、脊髄(頚部、胸部中部及び腰部)、骨髄並びに眼球(眼科検査で異常が認められた場合)
エ 病理組織学的検査
 非げっ歯類にあっては、全ての用量群の試験動物の保存器官及び組織について検査を実施する。
 げっ歯類にあっては、少なくとも対照群及び最高用量群の全ての試験動物の保存器官及び組織について検査を実施する。最高用量群で投与との関連を示唆する変化が認められた部位については、他の全ての用量群の試験動物の該当部位についても検査を実施する。
 また、全ての用量群の試験動物の肉眼病変部位について、検査を実施する。
 なお、試験期間中に死亡又はと殺した全ての試験動物の保存器官及び組織についても検査を実施する。
 サテライト群を設定した場合には、投与群に変化が認められた器官及び組織について検査を実施する。
Ⅵ 反復投与毒性試験(長期)
1 目的
 この試験は、被験物質を試験動物に長期連続投与し、その毒性を明らかにするものである。なお、発がん性試験も併せて実施する必要がある場合は、この試験に代えてⅧの実施を検討する。
2 試験動物
(1) 動物種
 げっ歯類(通常はラット)を含む1種類以上を用いる。げっ歯類を用いた他の薬物動態試験の結果から、非げっ歯類の化学物質による暴露影響の情報が必要な場合には、非げっ歯類(通常はイヌ)を用いる。
 反復投与毒性試験(短期)と同一種かつ同一系統の動物を用いる。
(2) 条件
 若く健康な動物(体重が雌雄それぞれの平均±20%以内の個体)を用いる。投与は、離乳し、少なくとも7日間の馴化期間を置いた後、できるだけ早い時期に行うこととし、8週齢までには開始する。なお、雌は未経産で非妊娠のものを用いる。
(3) 動物数
 各用量群及び対照群について、げっ歯類にあっては雌雄各20匹以上とし、非げっ歯類にあっては雌雄各4匹以上とする。
 なお、試験の中間で、剖検及び採材する場合には、必要に応じて動物数を追加する。例えば、中間と殺(6か月後等)を行う場合、1回の中間と殺につき各用量群雌雄各10匹以上を追加する。また、毒性変化の回復性を観察するためのサテライト群の設定(通常、対照群及び最高用量群について設定)及び、必要があれば、疾病状態を監視するためのモニター群(通常、雌雄各5匹)の設定も検討する。
3 投与期間
 12か月とする。
4 投与方法
 Vの4に準ずる。
5 投与量
 Vの5に準ずる。用量段階は、反復投与毒性試験(短期)の結果に基づき設定する。なお、最高用量は、多数例の死亡を起こすことなく主要標的器官及び毒性影響が特定できる用量となるようにする。
6 観察及び検査
 被験物質の毒性を十分把握するため、少なくとも次の事項について観察及び検査を実施する。
(1) 体重及び摂餌量
 投与開始前に1回、投与開始後13週までは1週間隔、それ以降は1か月間隔でそれぞれ測定する。
(2) 被験物質摂取量
 試験開始後13週までは1週間隔、それ以降は1か月間隔でそれぞれ測定する。
(3) 飲水量
 被験物質を飲水に添加した場合は、試験開始後13週までは1週間隔、それ以降は1か月間隔でそれぞれ測定する。
 飼料添加又は強制経口投与の場合においても、試験期間中に飲水行動が変化する場合は、飲水量の測定を考慮する。
(4) 飼料効率
 試験開始後13週までは1週間隔、それ以降は1か月間隔でそれぞれ測定する。
(5) 一般状態及び死亡率
 1日1回以上、一般臨床観察を行う。また、1日2回以上、病的状態及び死亡の徴候を調べる。
(6) 血液学的検査
ア 採材対象
 げっ歯類にあっては、全ての群について雌雄各10匹とする。非げっ歯類にあっては、試験動物数に応じてこれより少ない数(例えば、イヌの場合は各用量群ごとに雌雄各4匹)とする。
イ 採材時期
 試験開始後3か月目、6か月目及び12か月目(試験終了時)とする。非げっ歯類の場合は、投与開始前にも採血を行う。
 ただし、3か月目の採材は、反復投与毒性試験(短期)において血液学的指標に影響が認められなかった場合には不要とする。
ウ 検査項目
 総白血球数、白血球百分比、赤血球数、血小板数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間等
(7) 血液生化学的検査
ア 採材対象
 血液学的検査に同じ。
イ 採材時期
 血液学的検査に同じ。ただし、3か月目の採材は、反復投与毒性試験(短期)において生化学的指標に影響が認められなかった場合には不要とする。
 なお、マウスを除き、採血前に一晩絶食させることが望ましい。
ウ 検査項目
 グルコース、尿素 (尿素窒素)、クレアチニン、総たん白、アルブミン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、総コレステロール、肝機能を評価するための2つ以上の検査(アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)、総胆汁酸)、肝胆道機能を評価するための2つ以上の検査(アルカリフォスファターゼ、ガンマグルタミン酸トランスペプチターゼ(γGTP)、5'-ヌクレオチダーゼ、総ビリルビン、総胆汁酸)等
(8) 眼科学的検査
 少なくとも最高用量群と対照群について、被験物質の投与前と試験終了時に行う。異常があった場合には、全ての試験動物を検査する。
(9) 尿検査
ア 採材対象
 全ての群について雌雄各10匹
イ 採材時期
 血液学的検査及び血液生化学的検査に同じ。ただし、3か月目の採材は、反復投与毒性試験(短期)において尿検査指標に影響が認められなかった場合には不要とする。
ウ 検査項目
 外観、尿量、浸透圧又は比重、pH、たん白、グルコース等
(10) 病理学的検査
 次の事項について、全ての試験動物のできるだけ多くの器官について検査を行うものとする(体表面、全ての開口部、頭蓋骨の腔、胸腔、腹腔及びそれらの内容物の検査を含む。)。また、試験中死亡した試験動物についても、剖検等によりその死因を追求する。
ア 肉眼的観察
イ 器官の重量
 全ての試験動物(瀕死又は中途と殺された試験動物を除く。)の副腎、脳、精巣上体、心臓、腎臓、肝臓、卵巣、脾臓、精巣、甲状腺(上皮小体を含む。)及び子宮の重量を測定する。
ウ 器官及び組織の保存
 将来において必要な場合に病理組織学的検査が実施できるよう、試験終了後も、次に掲げる器官及び組織を保存しなければならない。
 全ての肉眼的病変部、脳(大脳、小脳、橋/延髄の切片を含む。)、脊髄(頚部、胸部中部、腰部)、下垂体、甲状腺、上皮小体、胸腺、[歯、舌、]食道、唾液腺、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸、直腸、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、脾臓、心臓、気管、肺、[上気道(鼻、鼻甲介、副鼻腔を含む。)、]大動脈、精巣、卵巣、子宮(子宮頚を含む。)、膣、精嚢、凝固腺、精巣上体、乳腺(雌は必須)、前立腺、膀胱、[尿管、尿道、]胆のう(ラット以外)、リンパ節(表在性、深在性)、末梢神経、骨髄、皮膚、眼球(網膜を含む。)、涙腺(眼窩外)、ハーダー腺[、胸骨、大腿骨(関節部を含む。)、嗅球]及び骨格筋(※角括弧内の組織は任意検索)
エ 病理組織学的検査
 少なくとも対照群及び最高用量群の全ての試験動物の保存器官及び組織について検査を実施する。最高用量群で投与との関連を示唆する変化が認められた部位については、他の全ての用量群の試験動物の該当部位についても検査を実施する。
 また、全ての用量群の試験動物の肉眼病変部位について検査を実施する。
 対器官(腎臓、副腎等)については、左右両方について検査を実施する。
 なお、試験期間中に死亡又はと殺した全ての試験動物の保存器官及び組織についても検査を実施する。
Ⅶ 発がん性試験
1 目的
 この試験は、試験動物の一生涯にわたって被験物質を連続投与し、これによって生ずる影響のうち、特に発がん性の有無等を明らかにするものである。なお、反復投与毒性試験(長期)も併せて実施する必要がある場合は、この試験に代えてⅧの実施を検討する。
2 試験動物
(1) 動物種
 げっ歯類(通常はラット)を含む1種類以上を用いる。家畜及びヒトにおける健康影響を予測するために適当と考えられる正当な理由がある場合は、非げっ歯類の使用も可能である。
 反復投与毒性試験(短期)と同一種かつ同一系統の動物を用いることが望ましい。
(2) 条件
 若く健康な動物(体重が雌雄それぞれの平均±20%以内の個体)を用いる。投与は、離乳し、少なくとも7日間の馴化期間を置いた後、できるだけ早い時期に行うこととし、8週齢までには開始する。なお、雌は未経産で非妊娠のものを用いる。
(3) 動物数
 各用量群及び対照群について、雌雄各50匹以上とする。
 なお、試験の中間で、剖検及び採材する場合には、必要に応じて動物数を追加する。例えば、中間と殺を行う場合、1回の中間と殺につき各用量群雌雄各10匹以上を追加する。ただし、反復投与毒性試験の結果から腫瘍性変化についての情報が得られている場合は、中間と殺は不要となる。また、必要があれば、疾病状態を監視するためのモニター群(通常、雌雄各5匹)の設定も検討する。
3 投与期間
 投与期間は、通常24か月とし、より短期間又は長期間とする場合には、正当な理由を示すこととする。なお、マウスにあっては、系統により18か月が適当なものもある(AKR/J、C3H/J、C57BL/6J等)。
 低用量群又は対照群の生存数が25%を下回った場合は試験終了を検討し、高用量群のみが毒性により早期に死亡した場合には試験を継続する。判断に当たっては、生存数は雌雄別に考慮する。また、統計学的に有効な評価を行うために必要な期間以上の延長は行わない。
4 投与方法
 原則として、被験物質を飼料又は飲水に添加して連続投与する。飼料添加又は飲水添加による連続投与が困難である場合には、強制経口投与又はカプセル投与により、週5日間の連続投与としてもよい。
5 投与量
 対照群の他に少なくとも3段階の投与群を設ける。
 用量段階は、反復投与毒性試験(短期)の結果に基づき設定する。最高用量は多数例の死亡を起こすことなく主要対象器官及び毒性影響を特定できる用量、最低用量は何ら毒性影響が認められない用量(無毒性量)とし、かつ用量反応関係がみられるように各用量段階を設定する。また、用量設定の根拠を示すこととする。
 飼料添加の場合は、栄養障害が起こらないよう十分配慮し、通常、飼料添加濃度5%(W/W)を超える投与量で実施する必要はない。
 対照群は、溶媒等を使用しない場合は無処置対照群、溶媒等を使用する場合は溶媒対照群とする。対照群の試験動物については、被験物質の投与を行わないこと以外、全ての点で被験物質投与群と同一条件とする。被験物質の投与に溶媒等を使用する場合には、投与溶媒量の最も多い用量群と同量の投与を行うこと。水以外の溶媒を用いる場合、当該溶媒の毒性は既知のものでなければならない。
6 観察及び検査
 試験期間中、少なくとも次の事項について観察及び検査を実施する。
(1) 一般状態等
ア 体重
 投与開始前に1回、投与開始後13週までは1週間隔、それ以降は1か月間隔でそれぞれ測定する。
イ 摂餌量、被験物質摂取量及び飼料効率を、投与開始後13週までは1週間間隔、それ以降は1か月間隔でそれぞれ測定する。
 飲水添加の場合は、飲水量を同様に測定する。飼料添加又は強制経口投与の場合においても、試験期間中に飲水行動が変化する場合は、飲水量の測定を考慮する。
ウ 一般状態
 各群の全個体について、病的状態及び死亡の徴候を毎日観察する(1日2回)。毒性徴候については1日1回観察し、腫瘍性病変については腫瘍発生からそれぞれの腫瘍の状態変化を記録する。
エ その他必要な検査
 血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査等は、試験責任者(「飼料添加物の動物試験の実施に関する基準」(昭和63年7月29日付け63畜A第3039号農林水産省畜産局長・水産庁長官通知)の第1章第2条の(6)に規定する者をいう。以下同じ。)が必要と判断した場合に実施する。
(2) 病理学的検査
 次の事項について、全ての試験動物のできるだけ多くの器官について検査を行うものとする(体表面、全ての開口部、頭蓋骨の腔、胸腔、腹腔及びそれらの内容物の検査を含む。)。また、試験中死亡した動物についても、剖検等によりその死因を追求する。
ア 肉眼的観察
イ 器官及び組織の保存
 Ⅵの6の(10)のウに準ずる。
ウ 病理組織学的検査
 Ⅵの6の(10)のエに準ずる。
Ⅷ 反復投与毒性(長期)/発がん性併合試験
1 目的
 この試験は、被験物質を試験動物に長期連続投与し、その毒性を明らかにするものであり、被験物質の長期反復投与毒性と同時に発がん性の有無等を明らかにするものである。
2 試験動物
(1) 動物種
 げっ歯類(通常はラット)を含む1種類以上を用いる。家畜及びヒトにおける健康影響を予測するために適当と考えられる正当な理由がある場合は、非げっ歯類(通常はイヌ)の使用も可能である。
 反復投与毒性試験(短期)と同一種かつ同一系統の動物を用いることが望ましい。
(2) 条件
 若く健康な動物(体重が雌雄それぞれの平均±20%以内の個体)を用いる。投与は、離乳し、少なくとも7日間の馴化期間を置いた後、できるだけ早い時期に行うこととし、8週齢までには開始する。なお、雌は未経産で非妊娠のものを用いる。
(3) 動物数
 反復投与毒性(長期)の検索に用いる群(以下「反復投与毒性検索群」という。)については、各用量群及び対照群ごとに雌雄各10匹以上とする。
 発がん性の検索に用いる群(以下「発がん性検索群」という。)については、各用量群及び対照群ごとに雌雄各50匹以上とする。
 なお、試験の中間で、剖検及び採材する場合には、必要に応じて動物数を追加する。例えば、中間と殺(反復投与毒性検索群において6か月後等)を行う場合、1回の中間と殺につき各用量群ごとに雌雄各10匹以上を追加する。また、毒性変化の回復性を観察するためのサテライト群の設定(通常、対照群及び最高用量群について設定)及び、必要があれば、疾病状態を監視するためのモニター群(通常、雌雄各5匹)の設定も検討する。
3 投与期間
 反復投与毒性検索群については、12か月とする。
 発がん性検索群については、通常24か月とし、より短期間又は長期間とする場合には、正当な理由を示すこととする。なお、マウスにあっては、系統により18か月が適当なものもある(AKR/J、C3H/J、C57BL/6J等)。
 発がん性検索群の試験においては、低用量群又は対照群の生存数が25%を下回った場合は試験終了を検討し、高用量群のみが毒性により早期に死亡した場合には試験を継続する。判断に当たっては、生存数は雌雄別に考慮する。また、統計学的に有効な評価を行うために必要な期間以上の延長は行わない。
4 投与方法
 原則として、被験物質を飼料又は飲水に添加して連続投与する。飼料添加又は飲水添加による連続投与が困難である場合には、強制経口投与又はカプセル投与により、週5日間の連続投与としてもよい。
5 投与量
 対照群の他に少なくとも3段階の投与群を設ける。
 用量段階は、被験物質の毒性の全容を明らかにし、無毒性量を推定することができるように設定する。最高用量は多数例の死亡を起こすことなく主要対象器官及び毒性影響を特定できる用量、最低用量は何ら毒性影響が認められない用量(無毒性量)とし、かつ用量反応関係がみられるように各用量段階を設定する。また、用量設定の根拠を示すこととする。
 なお、反復投与毒性検索群については、技術的に投与できる最大量又は1,000mg/kg体重/日相当量で行われた1試験において毒性作用が観察されず、構造的に類似した物質での成績から毒性が予測されない場合にはそれ以上の投与量で実施する必要はない。
 飼料添加の場合は、栄養障害が起こらないよう十分配慮し、通常、飼料添加濃度5%(W/W)を超える投与量で実施する必要はない。
 対照群は、溶媒等を使用しない場合は無処置対照群、溶媒等を使用する場合は溶媒対照群とする。対照群の試験動物については、被験物質の投与を行わないこと以外、全ての点で被験物質投与群と同一条件とする。被験物質の投与に溶媒等を使用する場合には、投与溶媒量の最も多い用量群と同量の投与を行うこと。水以外の溶媒を用いる場合、当該溶媒の毒性は既知のものでなければならない。
6 観察及び検査
 試験期間中、少なくとも次の事項について観察及び検査を実施する。
(1) 一般状態等
ア 体重
 投与開始前に1回、投与開始後13週までは1週間隔、それ以降は1か月間隔でそれぞれ測定する。
イ 摂餌量、被験物質摂取量及び飼料効率を、投与開始後13週までは1週間隔、それ以降は1か月間隔でそれぞれ測定する。
 飲水添加の場合は、飲水量を同様に測定する。飼料添加又は強制経口投与の場合においても、試験期間中に飲水行動が変化する場合は、飲水量の測定を考慮する。
ウ 一般状態
 各群の全個体について、病的状態及び死亡の徴候を毎日観察する(1日2回)。一般状態及び毒性徴候については、1日1回観察する。
 発がん性検索群においては、特に腫瘍性病変について、腫瘍発生からそれぞれの腫瘍の状態変化を記録する。
エ 血液学的検査
(ア) 反復投与毒性検索群
 採材対象は、げっ歯類にあっては、全ての試験動物(各用量群ごとに雌雄各10匹)とする。非げっ歯類にあっては、試験動物数に応じてこれより少ない数(例えば、イヌの場合は各用量群ごとに雌雄各4匹)とする。
 採材時期及び検査項目はⅥの6の(6)のイ及びウにそれぞれ準ずる。
(イ) 発がん性検索群
 試験責任者が必要と判断した場合に実施する。
オ 血液生化学的検査
(ア) 反復投与毒性検索群
 採材対象は、エと同様とする。
 採材時期及び検査項目はⅥの6の(7)のイ及びウにそれぞれ準ずる。
(イ) 発がん性検索群
 試験責任者が必要と判断した場合に実施する。
カ 眼科学的検査
 反復投与毒性検索群にあっては、少なくとも最高用量群と対照群について、被験物質の投与前と試験終了時に行う。異常があった場合には、全ての試験動物を検査する。
キ 尿検査
(ア) 反復投与毒性検索群
 採材対象は、全ての試験動物(各用量群ごとに雌雄各10匹)とする。
 採材時期及び検査項目はⅥの6の(9)のイ及びウにそれぞれ準ずる。
(イ) 発がん性検索群
 試験責任者が必要と判断した場合に実施する。
(2) 病理学的検査
 次の事項について、全ての試験動物のできるだけ多くの器官について検査を行うものとする(体表面、全ての開口部、頭蓋骨の腔、胸腔、腹腔及びそれらの内容物の検査を含む。)。また、試験中死亡した試験動物についても、剖検等によりその死因を追求する。
ア 肉眼的観察
イ 器官の重量
 反復投与毒性検索群にあっては、全ての試験動物(瀕死又は中途と殺された試験動物を除く。)の副腎、脳、精巣上体、心臓、腎臓、肝臓、卵巣、脾臓、精巣、甲状腺(上皮小体を含む。)及び子宮の重量を測定する。(発がん性検索群については測定不要。)
ウ 器官及び組織の保存
 Ⅵの6の(10)のウに準ずる。
エ 病理組織学的検査
 Ⅵの6の(10)のエに準ずる。
Ⅸ 世代繁殖試験
1 目的
 この試験は、試験動物の雄及び雌に被験物質を複数世代にわたり投与し、その生殖能及び後世代に及ぼす影響を明らかにするものである。
2 試験動物
(1) 動物種
 げっ歯類(通常はラット)を含む1種類以上を用いる。
(2) 条件
 親世代(以下「P世代」という。)は、出来る限り均一の体重及び年齢の個体を用いる。
(3) 動物数
 各用量群について妊娠した雌動物の数がそれぞれ20匹以上となるようにする。
3 世代数
 原則として、2世代とする。
4 投与方法
 被験物質を飼料又は飲水に添加して連続投与するか、又は連続して強制経口投与する。
5 投与量
 対照群の他に少なくとも3段階の投与群を設ける。
 用量段階は被験物質の毒性の全容を明らかにし、無毒性量を推定することができるように設定する。最高用量はP世代に多数例の死亡を起こすことなく毒性影響が認められる用量、最低用量は親及び子動物に何ら毒性影響が認められない用量(無毒性量)とし、かつ用量反応関係がみられるように各用量段階を設定する。また、用量設定の根拠を示すこととする。
 なお、技術的に投与できる最大量又は1,000mg/kg体重/日相当量で行われた1試験において毒性作用が観察されず、構造的に類似した物質での成績から毒性が予測されない場合には、それ以上の投与量で実施する必要はない。
 飼料添加の場合は、栄養障害が起こらないよう十分配慮し、通常、飼料添加濃度5%(W/W)を超える投与量で実施する必要はない。
 対照群は、溶媒等を使用しない場合は無処置対照群、溶媒等を使用する場合は溶媒対照群とする。対照群の試験動物については、被験物質の投与を行わないこと以外、全ての点で被験物質投与群と同一条件とする。被験物質の投与に溶媒等を使用する場合には、投与溶媒量の最も多い用量群と同量の投与を行うこと。水以外の溶媒を用いる場合、当該溶媒の毒性は既知のものでなければならない。
6 交配
(1)  P世代
ア 被験物質の投与を少なくとも10週継続した後に、同じ用量段階の雄と雌を1:1で交配させる(交尾をするか又は2週間経過するまで同居させる)。
イ 交尾した雌雄を特定すること。兄弟姉妹間での交配は避ける。
(2)  第1(F1)世代
ア 離乳時に、各同腹子から雌雄それぞれ1匹を無作為に選び、被験物質の投与を少なくとも10週継続した後に、同一群内の腹が異なる雄と雌とで交配させる。
イ 十分に性成熟するまでは交配させない。
ウ 交尾しなかった雌雄については、その原因を調べる。そのためには、生殖関連器官の病理組織学的検査、他の雌及び雄動物との再交配、発情及び精子形成周期の検査などを行う。
7 被験物質の投与
(1) P世代
ア P世代については、少なくとも5~9週齢で被験物質の投与を開始する。
イ P世代の雄については、成長期及び少なくとも1回の完全な精子形成サイクル(マウス:約56日、ラット:約70日)の期間、被験物質を投与する。
ウ P世代の雌については、成長期及び複数回の完全な性周期の期間、被験物質を投与する。
エ 交配期間中は雌雄両方に被験物質を投与し、妊娠期間及びほ乳期間は雌のみに被験物質を投与する。
(2) F1世代
 F1世代については、離乳時から被験物質の投与を開始し、成長期、交配期間、妊娠期間及び第2(F2)世代が離乳するまで投与を行う。
8 観察及び検査
 試験期間中少なくとも次の事項について観察及び検査を実施する。
(1)  P世代
ア 体重、摂餌量、飼料効率及び被験物質摂取量並びに被験物質を飲水に添加した場合には飲水量(被験物質の投与開始日から1週間隔で測定)
イ 雌については、妊娠期間中の0、7、14及び20又は21日目、授乳中(子の体重測定と同時に)並びにと殺日における体重
ウ 一般状態(毎日)、病的状態及び死亡(1日2回以上)
エ 交尾前の雌の発情周期の長さ及び正常性(膣スメアの状態により評価)
オ 精巣及び精巣上体の重量、精子の形態その他の精子の状態を評価するための事項。ただし、少なくともVにおいて、既に精子の各項目について評価されている場合は、繰り返し観察する必要はない。
カ 試験終了時又は死亡時に、交配に用いた全ての試験動物について、特に生殖器系の構造的な異常や病変を確認するための剖検を行う。
 また、全ての初産の雌の子宮について、着床数を調査する。
キ 試験終了時に、体重並びに子宮、卵巣、精巣、精巣上体、前立腺、精嚢、凝固腺、脳、肝臓、腎臓、脾臓、下垂体、甲状腺、副腎及びその他標的器官の重量を測定する。
ク 病理組織学的検査のために、次に掲げる器官及び組織を保存する。
 膣、子宮(子宮頚を含む。)、卵巣、片側の精巣、片側の精巣上体、精嚢、前立腺、凝固腺及び交配に用いた全ての試験動物の標的器官
ケ 病理組織学的検査は、交配に用いた試験動物のうち、最高用量群及び対照群の全ての試験動物について行う。最高用量群で投与との関連を示唆する変化が認められた部位については、他の全ての用量群の試験動物の該当部位についても検査を実施する。
 また、全ての用量群の試験動物の肉眼病変部位について検査を実施する。
 対器官(腎臓、副腎等)については、左右両方について検査を実施する。
(2) F1世代
ア 全出生子の生死及び雌雄の別、新生子の身体的異常及び行動異常
イ 生存胎子の体重(出生日(生後0日目)、生後4及び7日目、以降は1週間毎)
ウ 離乳後、交配に用いなかった試験動物は、と殺し、無作為に抽出した同腹の雌雄少なくとも1匹ずつについて、特に生殖器系の構造的な異常や病変を確認するための剖検及び病理組織学的検査を行う。
エ 交配に用いた試験動物については、「(1) P世代」のアからオまでの項目について同様に観察する。
オ 試験終了時又は死亡時に、交配に用いた全ての試験動物及び異常や臨床症状が確認された全ての試験動物について、特に生殖器系の構造的な異常や病変を確認するための剖検を行う。
 また、全ての初産の雌の子宮について、着床数を調査する。
カ 異常や臨床症状が確認された全ての試験動物の肉眼的異常所見のある組織及び器官について、病理組織学的検査を行う。
キ 試験終了時に、交配に用いた全ての試験動物について、体重並びに子宮、卵巣、精巣、精巣上体、前立腺、精嚢、凝固腺、脳、肝臓、腎臓、脾臓、下垂体、甲状腺、副腎及びその他標的器官の重量を測定する。
ク 病理組織学的検査のための器官及び組織の保存並びに病理組織学的検査の実施は、「(1) P世代」のク及びケに準ずる。
(3)  F2世代
ア 「(2) F1世代」のア及びイの項目について同様に観察を行い、離乳後にと殺する。
イ 試験終了時又は死亡時に、異常や臨床症状が確認された全ての試験動物及び無作為に抽出した同腹の雌雄少なくとも1匹ずつについて、特に生殖器系の構造的な異常や病変を確認するための剖検を行う。
ウ 異常や臨床症状が確認された全ての試験動物の肉眼的異常所見のある組織及び標的器官並びに無作為に抽出した同腹の雌雄少なくとも1匹ずつについて、病理組織学的検査を行う。
9 観察上の留意事項
(1) 妊娠動物は個別飼育とする。
(2) 出産が近い時には、巣作りに必要な床敷を用意する。
Ⅹ 発生毒性試験
1 目的
 この試験は、妊娠動物に胎子の器官形成期を通して被験物質を投与し、胎子の発生に及ぼす影響を明らかにするものである。
2 試験動物
(1) 動物種
 げっ歯類及び非げっ歯類を用いる(げっ歯類はラット、非げっ歯類はウサギが望ましい。)。他の動物種を用いる場合には、正当な理由を示すこととする。
(2) 条件
 若く健康な未経産の雌を少なくとも5日間の馴化後に用いる。
(3) 動物数
 試験に供する動物の数は、各用量群について剖検時にそれぞれ20匹程度に着床が認められる数とし、着床している動物の数が16匹を下回ってはならない。
 また、妊娠動物の死亡率が10%を超えてはなならない。
3 投与期間
 遅くとも着床時からと殺予定日(出産予定日の前日)の1日前まで毎日投与する。原則として胎子の器官形成期(げっ歯類にあっては妊娠5日目から15日目まで及びウサギにあっては妊娠6日目から18日目まで)に与える影響を調べるために投与するが、着床前からの影響を調べるために、着床前からと殺予定日の1日前までの全妊娠期間に投与を行ってもよい。
 なお、げっ歯類については膣栓又は精子が確認された日を妊娠0日目とし、非げっ歯類については交尾した日又は人工授精を行った日を妊娠0日目として起算する。
4 投与方法
 投与方法は、原則として強制経口投与とする。
5 投与量
 対照群の他に少なくとも3段階の投与群を設ける。
 用量段階は、被験物質の毒性の全容を明らかにし、無毒性量を推定することができるように設定する。最高用量は母動物に多数例の死亡を起こすことなく毒性影響が認められる用量、最低用量は母体及び胎子に何ら毒性影響が認められない用量(無毒性量)とし、かつ用量反応関係がみられるように各用量段階を設定する。少なくとも一つの中間投与量は、最小毒性発現濃度とする。また、用量設定の根拠を示すこととする。
 なお、技術的に投与できる最大量又は1,000mg/kg体重/日相当量で行われた1試験において毒性作用が観察されず、構造的に類似した物質での成績から毒性が予測されない場合にはそれ以上の投与量で実施する必要はない。
 対照群は、溶媒等を使用しない場合は無処置対照群、溶媒等を使用する場合は溶媒対照群とする。対照群の試験動物については、被験物質の投与を行わないこと以外、全ての点で被験物質投与群と同一条件とする。被験物質の投与に溶媒等を使用する場合には、投与溶媒量の最も多い用量群と同量の投与を行うこと。
 溶媒は発生毒性又は生殖に対し影響をもつものでないこと。
6 観察及び検査
 試験期間中少なくとも次の事項について観察し、必要な検査を行う。
(1) 母体
ア 体重(試験開始0日目、投与開始日、投与期間中(3日毎)及び剖検時)
イ 摂餌量(体重の測定日と同日)
ウ 一般状態(毎日)(死亡率、病的状態、行動の変化、その他毒性徴候)
エ 出産予定日の1日前にと殺し、妊娠の成立、黄体数、子宮の重量を含む剖検所見、着床数、胎子の死亡数、生存胎子数及び吸収胚の程度(早期吸収胚、後期吸収胚)を確認するための剖検を行う。
(2) 胎子
ア 体重
イ 性別
ウ 外形異常の有無
エ 骨格異常の有無
オ 内部器官(特に生殖器官)異常の有無
ⅩⅠ 変異原性試験
1 目的
 この試験は、被験物質の変異原性を明らかにするものである。
2 試験方法
 原則として、復帰突然変異試験及び染色体異常試験のin vitro試験を実施し、これらの試験で異常が認められた場合に小核試験を実施する。また、必要に応じその他の試験を実施する。
(1) 復帰突然変異試験
 この試験は、アミノ酸要求菌株に被験物質を暴露し、点突然変異を検出することにより、DNA塩基対への影響を明らかにするものである。
ア 菌株
 5種以上の菌株を用いる。推奨される菌株の組合せは次のとおり。
(ア) Salmonella Typhimurium TA1535
(イ) S.Typhimurium TA1537、TA97又はTA97a
(ウ) S.Typhimurium TA98
(エ) S.Typhimurium TA100
(オ) Escherichia coli WP2 uvrA、E.coli WP2 uvrA(pKM101)又はS.Typhimurium TA102
イ 用量段階
 5段階以上の試験用量を設定するとともに、別に対照を置く。
 なお、最高用量は原則として5mg/プレートを限度とする。
ウ 対照
 陰性対照及び陽性対照を設ける。陰性対照は、原則として溶媒対照とし、陽性対照は既知変異原物質とする。
エ 代謝活性化
 代謝活性系の存在下及び非存在下で、細胞を被験物質に暴露する。一般的に、適切な薬理代謝酵素系の誘導剤で処理したげっ歯類の肝臓から調製したS9mixが用いられる。
オ 試験方法
 プレインキュベーション法又はプレート法のいずれかとする。
カ 結果の記録
 次の事項について、結果を記録する。
(ア) 毒性徴候
(イ) 沈殿の徴候
(ウ) 個々のプレートの集落数
(エ) プレート当たり復帰変異集落の平均値及び標準偏差
(オ) 用量反応関係(認められれば)
(カ) 統計学的解析(必要があれば)
(キ) 陰性対照(溶媒/賦形剤)及び陽性対照の同時対照データとその範囲、平均値及び標準偏差
(ク) 陰性対照(溶媒/賦形剤)及び陽性対照の既存対照データとその範囲、平均値及び標準偏差
(2) 染色体異常試験
 この試験は、哺乳動物の培養細胞に被験物質を暴露することによる染色体への構造的な影響を明らかにするものである。
ア 細胞
 チャイニーズハムスター卵巣由来細胞(CHO)、チャイニーズハムスター肺由来細胞(V79)、チャイニーズハムスター肺由来細胞(CHL/IU)、ヒト由来細胞(TK6)、その他の細胞株又はヒト若しくはヒト以外の哺乳類末梢血リンパ球を含む初代培養細胞を用いる。
イ 用量段階
 3段階以上の試験用量を設定する。
 なお、最高用量は、これらの指標において55±5%の細胞毒性をもたらすように設定する。細胞毒性が認められない場合は、10mM相当又は2mg/mLのうちいずれか低い方の濃度を限度とする。
 細胞毒性の指標としては、細胞株については相対的細胞集団倍加(RPD)又は相対的細胞数増加(RICC)を、初代培養細胞については分裂指数(MI)を用いる。
ウ 対照
 陰性対照は、原則として溶媒対照とし、陽性対照としては、既知染色体異常誘発物質を用いる。
エ 代謝活性化
 代謝活性系の存在下及び非存在下で、細胞を被験物質に暴露する。一般的に、適切な薬理代謝酵素系の誘導剤で処理したげっ歯類の肝臓から調製したS9mixが用いられる。
オ 検索方法
 被験物質処理後、適切な時期に適切な間隔をおいて2回染色体標本を作製する。陽性対照及び陰性対照を含む全ての標本スライドを処理条件が分からないようコード化する。用量当たり300個以上のよく広がった分裂中期細胞について、染色体の形態異常を持つ細胞及び倍数性細胞を検索する。
カ 結果の記録
 次の事項について、できる限り結果を記録する。
(ア) 細胞周期の長さ、倍加時間又は増殖指数に関する情報(細胞株を使用した場合に限る。)
(イ) 各培養について処理した細胞数及び回収した細胞数(細胞株を使用した場合に限る。)
(ウ) 用いた細胞毒性の指標及び細胞毒性の測定値
(エ) 沈殿の有無及びその観察時期
(オ) 染色体異常の定義
(カ) 染色体異常を示す細胞の種類と数(倍数性細胞の数を含む。)
(キ) 用量反応関係
(ク) 統計学的解析及びp値
(ケ) 陰性対照(溶媒)及び陽性対照(濃度及び溶媒)の同時対照データ
(コ) 陰性対照及び陽性対照の既存対照データ及びその範囲並びに平均値、標準偏差、95%信頼区間及びデータ数
(3) 小核試験
 この試験は、試験動物に被験物質を単回投与又は1日間隔で複数回連続投与し、骨髄又は末梢血液中の赤血球を分析することで、被験物質によって引き起こされる染色体又は赤芽球の分裂装置への影響を明らかにするものである。
ア 試験動物
(ア) 動物種
 骨髄を用いる場合はマウス又はラットを、末梢血液を用いる場合はマウスを用いるのが望ましい。
(イ) 動物数
 各用量群5匹以上とする。
イ 投与期間
 単回投与又は1日間隔で複数回の連続投与を行う。
ウ 投与方法
 想定されるヒト暴露経路を考慮し、対象組織へ適切に暴露される方法により投与する。
エ 投与量
 3段階以上の試験群を設定する。最高投与量は、用量設定試験によって毒性徴候を示すが死亡に至らない用量とし、単回投与又は14日間以下の連続投与の場合で、毒性徴候が現れない場合には、2,000mg/kgを最高用量とする。なお、14日を超える連続投与を行う場合には、1,000mg/kgを最高用量とする。
 また、別に陰性対照群及び陽性対照群を置く。陰性対照は、原則として溶媒対照とし、陽性対照としては、既知小核誘発物質を用いる。
オ 検索方法
 単回投与の場合、骨髄については投与後24~48時間以内に、末梢血液については投与後36~72時間以内にそれぞれ2回サンプリングを行う。複数回投与の場合、骨髄については最後の投与から18~24時間以内に、末梢血液については最後の投与から36~48時間以内にそれぞれ2回サンプリングを行う。ただし、いずれの場合も、予備試験を実施した場合は、1回のサンプリングでよいこととする。
 陽性対照及び陰性対照を含む全ての標本スライドを処理条件が分からないようコード化する。
 試験動物個体当たり最低4,000個の幼若赤血球(多染性赤血球又は網状赤血球とも呼ばれるものをいう。)について、小核の有無を検索する。
カ 結果の記録
 次の事項について、できる限り結果を記録する。
(ア) 陽性又は陰性反応の基準
(イ) 試験期間前及び期間中の動物の状態(毒性徴候を含む。)
(ウ) 全赤血球中の幼若赤血球の割合
(エ) 小核を有する幼若赤血球の数
(オ) 各群の小核を有する幼若赤血球の数の平均及び標準偏差
(カ) 用量反応関係
(キ) 統計学的解析及びその手法
(ク) 陰性対照及び陽性対照の既存データ及びその範囲並びに平均値、標準偏差及び95%信頼区間並びに対象期間及び対象試験数)
(ケ) 骨髄が暴露されたことを裏付けるデータ
(コ) 小核の由来が染色体全体か染色体断片かを示したデータ
3 その他の試験
(1) 遺伝子突然変異誘発性を指標とする試験
ア 哺乳類の培養細胞を用いる遺伝子突然変異試験
イ ショウジョウバエを用いる試験
ウ マウスを用いるスポット試験
エ マウスを用いる特定座位試験
(2) 染色体異常誘発性を指標とする試験
ア げっ歯類の生殖細胞を用いる染色体異常試験
イ げっ歯類を用いる優性致死試験
ウ マウスを用いる相互転座試験
(3) DNA損傷性を指標とする試験
ア 細菌を用いるファージ試験
イ 細菌を用いるDNA修復試験
ウ 哺乳類の細胞を用いる不定期DNA合成(UDS)試験
エ 哺乳類の細胞を用いる姉妹染色分体交換(SCE)試験
(4) その他の試験
ア 酵母を用いる体細胞組換え及び遺伝子交換試験
イ マウスを用いる精子形態異常試験
ⅩⅡ 生体内動態に関する試験
1 生菌剤以外
(1) 目的
 この試験は、被験物質を試験動物に投与し、吸収、分布、蓄積、代謝、排せつ等を調べることにより、被験物質の生体内動態を把握するものである。
(2) 試験動物
 試験動物は、対象家畜等を用い、必要に応じラット、ウサギ等の成熟動物を追加する。この場合、試験動物の数は評価しうる知見が得られる数とする。
(3) 投与方法
 原則として1回経口投与とするが、連続投与についても検討することが望ましい。蓄積試験については十分な期間にわたって連続投与を行う。また、必要によりin situ、 in vitroの試験を併用する。
(4) 投与量
 試験目的を達成するのに十分な最少量とするが、被験物質投与後の体内各組織又は排せつ物中に認められる被験物質若しくは代謝物の量が、用いた分析法からみて適当な量とする。
(5) 検索
ア 吸収及び排せつ
 被験物質及び主要代謝物(以下「被験物質等」という。)の血中濃度、消化管内残存量、糞及び尿中排せつ量等を経時的に測定し、消化管からの吸収率、被験物質の排せつ経路及び排せつ率を求める。
 なお、投与被験物質にアイソトープ標識化合物を用いる場合には、回収されたアイソトープがいかなる化学型であるかを確認する。
イ 分布
 分布試験は、吸収及び排せつ試験により被験物質が吸収されることが明らかな場合に実施し、被験物質等についてできる限り多種類の器官及び組織への分布を経時的に求め、可能な限り生物学的半減期を算出する。
 なお、対象とする器官及び組織は、肝臓(肝膵(すい)臓)、腎臓、心臓、肺(えら)、脾臓、筋肉、消化管、脳、皮膚、生殖腺、副腎、甲状腺、胸腺、脳下垂体等とし、主要器官及び組織については、経時的変化を求めるが、試験動物が小動物の場合には、内分泌腺における経時的変化の検討は省略することができる。
 また、必要により標識化合物投与後のオートラジオグラフィー等を併用する。
ウ 蓄積
 分布試験を参照して蓄積の可能性のある器官及び組織について被験物質等の蓄積を経時的に調べる。この場合、蓄積量が一定値に到達するまで被験物質を連続投与し、被験物質の投与を中止した後、蓄積量の変化を調べることが望ましい。
エ 代謝
 被験物質が体内で代謝される場合は必要に応じ主要代謝物の同定並びに代謝に関与する主な器官及び組織における主要代謝物の生成率を求める。
 主として代謝に関与する器官又は組織を用いてin vitroで代謝を検討し、諸代謝物の生成比を求めたときに動物種差が認められた場合には、更にその他の動物を用いて同様の検討を行うことが望ましい。
2 生菌剤
(1) 目的
 この試験は、被験生菌を試験動物に投与し、消化管内における分布及び排せつ並びに消化管以外の組織への侵入の可能性等を調査することにより、被験生菌の生体内における動態を把握するものである。
(2) 試験動物
 原則として対象家畜等を用いる。
(3) 投与方法
 被験生菌は、原則として被験生菌の糞中排せつが一定となるのに十分な期間、連続経口投与する。
(4) 投与量
 投与量は、試験目的を達成するために十分な最少量とする。
(5) 検索
ア 被験生菌の消化管内における定着、排せつ及び投与中止後の消長を調査する。
イ 被験生菌についてできるだけ多種類の器官及び組織への分布を調査する。
ⅩⅢ 対象家畜等を用いた飼養試験
1 目的
 この試験は、家畜等の飼養者段階における飼料添加物の使用実態を考慮し、被験物質(生菌剤にあっては被験生菌剤。以下、この試験において同じ。)を飼料添加物として用いる対象家畜等に連続投与し、家畜等に及ぼす影響を明らかにするものである。
2 試験動物
 当該被験物質の飼料添加物としての適用を予定している対象家畜等を用いる。この場合、ウシ、ブタにあっては、各用量群3~10頭程度とし、ニワトリにあっては各用量群20~30羽程度とし、養殖水産動物にあっては30尾以上とする。ただし、試験動物の大きさ、試験施設の規模等により、30尾以上の飼養が困難な場合には、各用量群20尾以上とする。
 また、生菌剤については、対象家畜等を施行令第1条第1号から4号までの4グループに区分し、原則として、適用を予定している対象家畜等の属する区分内の1種類以上について試験を行う。
 なお、養殖水産動物にあっては、試験に際して環境条件に留意し、飼育水温は、ブリ、マダイ、コイ、ウナギ及びクルマエビにあっては、22~28℃、ニジマス及びギンザケにあっては12~18℃、アユにあっては19~25℃であることを基準とする。
3 投与期間
 実際に使用される期間を考慮して定める。ただし、養殖水産動物にあって、その期間が長期に及ぶ場合には、被験物質の適用を予定している期間の2分の1以上の期間、かつ原則として対照群の平均体重が3倍以上になる期間をもってこれに代えることができるものとする。
4 投与方法
 被験物質を飼料に添加して連続投与する。
5 投与量
 至適添加量と考えられる量の最高量からその10倍程度までの2段階以上を設定し、別に対照群を設定する。
6 観察及び検査
 試験期間中少なくとも次の(l)~(3)の事項について観察し、(l)~(3)に異常を認めた場合等必要に応じて(4)~(6)を実施する。
(1) 体重
(2)  飼料摂取量及び被験物質摂取量(養殖水産動物にあっては飼料給与量及び被験物質投与量)
(3) 一般状態
(4) 血液学的検査(クルマエビについては不要)
(5) 血液生化学的検査
(6) 病理学的検査
ⅩⅣ 耐性菌出現に関する試験
1 目的
 この試験は、抗菌性物質の使用が微生物に与える影響のうち、薬剤耐性株の出現に係る事項を質的量的に検討し、これを明らかにするものである。
2 抗菌スペクトラムに関する試験
(1) 実験室保存菌株を用いた感受性試験
ア 供試菌株
 供試菌株は、下記の菌種を含む20菌種以上とし、できる限り他の試験成績との比較検討が可能な標準株(ATCC株等)を用いることが望ましい。
(ア) グラム陽性菌
① Staphylococcus aureus
② Staphylococus epidermidis
③ Streptcoccus agalactiae
④ Streptcoccus pyogenes
⑤ Streptcoccus suis
⑥ Bacillus cereus
⑦ Clostridium perfringens
⑧ Actinomyces pyogenes
⑨ Erysipelothrix rhusiopathia
(イ) グラム陰性菌
① Bordetella bronchiseptica
② Escherichia coli
③ Avibacterium paragallinarum
④ Actinobacillus pleuropneumoniae
⑤ Pseudomonas aeruginosa
⑥ Pasteurella multocida
⑦ Salmonella Typhimurium
⑧ Salmonella Enteritidis
⑨ Salmonella Pullorum
イ 試験方法
 被験物質の各供試菌に対する最小発育阻止濃度を、最新の「日本化学療法学会標準法」に準じて測定する。
(2) 野外分離菌株を用いた感受性試験
ア 供試菌種
 次の区分に該当する菌種について、家畜及び家きんより分離した新鮮株それぞれ50株程度を供試菌株とする。
 菌株の選定に当たっては、できる限り広範囲な地域から、採取したものから選定することが望ましい。
(ア) 被験物質が主としてグラム陽性菌に作用する成分の場合
① Staphylococcus aureus
② Streptococcus pyogenes
(イ) 被験物質が主としてグラム陰性菌に作用する成分の場合
① Escherichia coli
② Salmonella Typhimurium
(ウ) 被験物質がグラム陽性菌及びグラム陰性菌に作用する成分の場合
 (ア)及び(イ)に示した菌種
イ 試験方法
(1) (1)のイに準ずる。
3 他の抗菌性物質に与える影響に関する試験
(1) 既存の各系統の代表的抗菌性物質に対し耐性を獲得している菌株を用いた試験
 薬剤耐性の明らかなRプラスミド保有菌又は染色体耐性菌等を用いて被験物質の有効性の検討及び耐性機序の検討を行う。有効性検討のための試験は、次により実施する。
ア 供試菌株
 次の区分に該当する菌種を用いる。
(ア) 主としてグラム陽性菌に抗菌活性を示す被験物質の場合
 アミノベンジルペニシリン、セファゾリン、ジヒドロストレプトマイシン、ゲンタマイシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、サルファ剤等に対し1~多剤耐性を示すStaphylococcus aureus
(イ) 主としてグラム陰性菌に抗菌活性を示す被験物質の場合
 アミノベンジルペニシリン、セファゾリン、ジヒドロストレプトマイシン、ゲンタマイシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、サルファ剤等に対し1~多剤耐性を示すEscherichia coli
(ウ) 抗菌域がグラム陽性菌及びグラム陰性菌を含む広域スペクトルを示す被験物質の場合
 (ア)及び(イ)に示した菌種
イ 試験方法
 2の(1)のイに準ずる。
(2)  被験物質に対し交差耐性等の耐性を示す野外分離株を用いた試験
 この試験は、耐性を示す野外分離株が採取された場合にのみ実施し、耐性を示す野外分離株を用いて既存の各系統の抗菌性物質の最小発育阻止濃度を測定する。
ア 供試菌株
 供試菌株は、2の(2)の試験で耐性を示した菌株とする。
イ 供試薬剤
 主として原虫に作用する場合以外は、少なくとも次に示す成分を選定する。
 なお、主としてグラム陽性菌に作用する被験物質の場合には、エリスロマイシンを加える。
(ア) アミノベンジルペニシリン
(イ) セファゾリン
(ウ) ジヒドロストレプトマイシン
(エ) ゲンタマイシン
(オ) オキシテトラサイクリン
(カ) クロラムフェニコール
(キ) サルファ剤(1種類)
ウ 試験方法
 供試薬剤の各供試菌株に対する最小発育阻止濃度を2の(1)のイに準じ測定する。
4 耐性獲得に関する試験
 被験物質に対する耐性菌出現の頻度及びその程度について試験する。
(1) in vitro試験
 標準株を用いた試験管内継代により耐性獲得のパターンを検討する。
ア 供試菌種
 次の区分に該当する菌種を用いる。
(ア) 主としてグラム陽性菌に作用する被験物質の場合
① Staphylococcus aureus
② Streptococcus pyogenes
(イ) 主としてグラム陽性菌に作用する被験物質の場合
① Escherichia coli
② Salmonella Typhimurium
(ウ) 抗菌域がグラム陽性菌及びグラム陰性菌を含む広域スペクトルを示す被験物質の場合
 (ア)及び(イ)に示した菌種
イ 試験方法
 被験物質を含む液体培地を用いた継代試験(被験物質の増量及び恒量)を行う。
 なお、継代は、少なくとも20代まで行い、耐性獲得が認められた場合には、被験物質を含まない液体培地で継代し、耐性消失の状況を明らかにする。
(2) in vivo試験
 対象動物を用いた実用添加濃度及び添加期間に排せつされる糞便中の腸管内常存菌、原虫等への影響を検討する。この場合、少なくとも大腸菌を含むものとし、当該被験物質及び既存の主要な各系統の抗菌性物質含有平板を用いて、直腸糞便1g中の大腸菌数に対する薬剤耐性大腸菌の割合をそれぞれ経時的に定量するとともに、耐性機構及び耐性の程度を明確にする必要がある。
ア 試験動物
 試験動物は、被験物質の適用を予定している対象家畜を用い、試験動物の数は、ウシ及びブタにあっては各用量群5頭以上、ニワトリにあっては各用量群10羽以上とし、試験群は、少なくとも被験物質の適用を予定している最高濃度群、最低濃度群及び対照群の3群を設定する。
イ 試験期間
 試験期間は、被験物質の適用を予定している期間に少なくとも7日間を加算した期間とする。
ウ 供試薬剤及び供試薬剤の濃度
 供試薬剤は、少なくとも次の表に示すものを選定する。
供試薬剤供試薬剤の濃度
アミノベンジルペニシリン
ジヒドロストレプトマイシン
ゲンタマイシン
オキシテトラサイクリン
クロラムフェニコール
25.0μg(力価)/mL
12.5μg(力価)/mL
25.0μg(力価)/mL
25.0μg(力価)/mL
25.0μg(力価)/mL
被験物質1の(1)及び(2)の試験において求めた大腸菌の耐性限界値の濃度
エ 試験方法
 各試験群の試験動物から直腸糞便を使用前1回、以降少なくとも1週間隔で採取し、それぞれを滅菌生理食塩液で希釈し、被験薬剤を含有する平板及び薬剤無添加平板に塗抹し、平板上に発育した大腸菌のコロニー数から糞便1g中の大腸菌数を測定する。
ⅩⅤ 自然環境に及ぼす影響に関する試験
 生菌剤については、被験生菌の由来、自然環境での分布状況等からその使用により環境中の菌等の生態に影響を及ぼさないことを確認又は推定する。
 なお、必要に応じ、環境中での生存性を野外又は実験室内で調査し、自然環境に及ぼす影響について評価する。
ⅩⅥ 飼料添加物の安定性に関する試験
1 目的
 この試験は、実際に取扱われる状態を想定し、各種条件下における被験物質(生菌剤にあっては被験生菌剤。以下、この試験において同じ。)の安定性を明らかにするものであり、必要に応じ試験を追加又は省略することができる。
2 試験方法
(1) 室温保存試験
 製造用原体及び製剤それぞれ少なくとも3ロットずつについて、被験物質の適当量をそれぞれ常用する包装容器に入れ、屋内倉庫に保存し、0、3、6、9、12、18及び24か月の各保存期間(保存期間は、設定する有効期間又は使用期限により延長若しくは短縮できる。)における安定性を試験する。ただし、包装容器は、必要により縮小することができる。
(2) 耐熱試験
 製造用原体及び製剤それぞれ少なくとも3ロットずつについて、被験物質の適当量をそれぞれ密栓したガラスびん又は気密容器に入れ、40℃の条件で保存し、0、1、2、3及び6か月の各保存期間(被験物質が飼料添加物として取り扱われる環境又は物性により延長若しくは短縮できる。)における安定性を試験する。
(3) 耐湿試験
 製造用原体及び製剤それぞれ少なくとも3ロットずつについて、被験物質の適当量をそれぞれシャーレに入れ、ふたをせずに25~30℃の間における任意の定温下の2水準以上の相対湿度の条件にて保存し、0、1、2、3及び6か月の各保存期間(被験物質の飼料添加物として取り扱われる環境又は物性により延長若しくは短縮できる。)における安定性を試験する。相対湿度の水準については、予備試験により外観の変化、かびの発生、変敗、潮解、固結等の明らかな品質の劣化をきたすことのない範囲内でその上限附近を含む2水準以上の条件を選定する。
(4) 耐光試験
 製造用原体及び製剤それぞれ少なくとも3ロットずつについて、被験物質の適当量をそれぞれシャーレに入れ、ふたをした後、接合部をテープ又はパラフィンで封印し、室温(1~30℃)において蛍光燈下500ルックスの場所に置き、0、1、2、3及び6か月の各保存期間(被験物質の飼料添加物として取り扱われる環境又は物性により延長若しくは短縮できる。)における安定性を試験する。
(5) 加速試験
 製造用原体又は製剤それぞれ少なくとも3ロットずつについて、被験物質の適当量をそれぞれ常用する包装容器に入れ、原則として40℃、相対湿度75%の条件及び屋内倉庫(室温条件)で保存し、0、1、3及び6か月の各保存期間(保存期間は、設定する有効期間又は使用期限により延長若しくは短縮できる。)における安定性を試験する。ただし、包装容器は、必要により縮小することができる。
(6) 飼料中の安定性試験
 被験物質(製剤)を通常製造されている少なくとも3種類の飼料に常用濃度で添加し、その適当量を常用する包装容器に入れ、屋内倉庫に保存し、0、0.5、1、2及び3か月(必要により6か月)の各保存期間における安定性を試験する。
 なお、飼料中における被験物質の定量に際しては、その定量法は、原則として次の用件に適合すること。
ア 平均回収率は、90%以上、再現精度(実験室内の繰り返し誤差及び実験室間のかたよりによる誤差を加成した標準偏差の大きさ。)は、変動係数として0.1以下であること。
 なお、回収試験は、当該被験物質の製剤を飼料に常用濃度で添加して行い、原則として3実験室以上において2点平行で試験期日を変えて3回実施し、その平均回収率及び再現精度を求める。
イ 定量限界は、飼料に添加する常用濃度の10%以下の含有量について定量できること。
ウ 有効成分量が、分解物又はその他の夾雑物と識別できること。
3 測定項目
 試験の開始時及び終了時を含む3時点以上において成分規格に設定する予定の全項目について測定を行い、その他の時点においては、外観の異常の有無を観察するとともに、有効成分量を測定する。また、飼料中の安定性試験、室温保存試験及び耐湿試験については、乾燥減量又は水分を測定するほか、必要により各試験において測定項目を追加する。
4 試験成績の統計的解析
 試験期間と有効成分量の測定値との関係を最も適当と考えられるモデルに当てはめ回帰分析を行い、母平均の90%信頼限界を求める。

▲このページの先頭に戻る