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飼料等への有害物質混入防止のための対応ガイドラインの解説〔第1版〕

 食品安全基本法(平成15年法律第48号)第5条に掲げられた基本理念である国民の健康への悪影響の未然防止の観点から、飼料等については、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号。以下「飼料安全法」という。)第3条に基づき農林水産省が基準及び規格を定めるなどの施策を講ずるとともに、飼料等の輸入業者、製造業者等が食品安全基本法第8条に定める食品関連事業者の責務を果たすことにより安全性を確保しているところである。このような中、飼料等の原料等の多くを輸入に依存している我が国の状況に鑑みると、個別の飼料等の製造業者のみで飼料等への有害物質の混入を防止することは困難であり、輸入業者等の関係業者や農林水産省等を含めた関係者及び関係機関全体で対応する必要がある。このため、飼料等の安全性確保に万全を期す観点から、原料等の段階から有害物質の混入を防止するとともに、それが混入する事態とそのシナリオを想定して、その事態に対応するための指針を示すものである。
【解説】
 ここで引用されている「飼料安全法」及び「食品安全基本法」の各条文は以下のとおりである。なお、飼料への有害物質の混入に関する最近の事例としては、米国産輸入乾牧草(スーダングラス)からのブロモキシニル1)および高濃度の硝酸態窒素2)の検出、魚粉からのマラカイトグリーン及びロイコマラカイトグリーンの検出3)、エンドファイト感染乾牧草による中毒事例の発生4)などがある。
注1) 平成18年6月14日付、18消安第2886号、農林水産省消費・安全局長通知
2) 平成19年5月7日、19消安第1297号、農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長通知
3) 平成18年11月30日付、18消安第9467号、農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長通知
4) 平成19年3月19日付、18消安第14023号、農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長、生産局畜産部畜産振興課長連名通知
○「飼料安全法 第3条」(基準及び規格・抜粋)
 農林水産大臣は、飼料の使用又は飼料添加物を含む飼料の使用が原因となって、有害畜産物(家畜等の肉、乳その他の食用に供される生産物で人の健康を損なうおそれがあるものをいう。以下同じ。)が生産され、又は家畜等に被害が生ずることにより畜産物(家畜等に係る生産物をいう。以下同じ。)の生産が阻害されることを防止する見地から、農林水産省令で、飼料若しくは飼料添加物の製造、使用若しくは保存の方法若しくは表示につき基準を定め、又は飼料若しくは飼料添加物の成分につき規格を定めることができる。
○「食品安全基本法 第5条」(国民の健康への悪影響の未然防止)
 食品の安全性の確保は、このために必要な措置が食品の安全性の確保に関する国際的動向及び国民の意見に十分配慮しつつ科学的知見に基づいて講じられることによって、食品を摂取することによる国民の健康への悪影響が未然に防止されるようにすることを旨として、行われなければならない。
○「食品安全基本法 第8条」(食品関連事業者の責務)
 肥料、農薬、飼料、飼料添加物、動物用の医薬品その他食品の安全性に影響を及ぼすおそれがある農林漁業の生産資材、食品(その原料又は材料として使用される農林水産物を含む。)若しくは添加物(食品衛生法(昭和22年法律第233号)第2条第2項に規定する添加物をいう。)又は器具(同条第4項に規定する器具をいう。)若しくは容器包装(同条第5項に規定する容器包装をいう。)の生産、輸入又は販売その他の事業活動を行う事業者(以下「食品関連事業者」という。)は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たって、自らが食品の安全性の確保について第一義的責任を有していることを認識して、食品の安全性を確保するために必要な措置を食品供給行程の各段階において適切に講ずる責務を有する。
 2 前項に定めるもののほか、食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、その事業活動に係る食品その他の物に関する正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない。
 3 前2項に定めるもののほか、食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、国又は地方公共団体が実施する食品の安全性の確保に関する施策に協力する責務を有する。
 本ガイドラインで用いる用語の定義は、飼料安全法に定めるもののほか、次に定めるところによる。
1 有害物質
 人又は家畜等の健康に悪影響を及ぼす可能性がある危害要因のうち残留農薬、かび毒、重金属等の化学物質をいう。
2 原料等
 飼料及び飼料添加物を製造するための原料及び材料をいう。
3 飼料等
 飼料及び飼料添加物並びにそれらの原料等をいう。
4 製品
 製造された飼料及び飼料添加物をいい、中間製品を含む。
5 サーベイランス
 問題の程度又は実態を知るために行う調査をいう。
6 モニタリング
 是正措置をとる必要があるかどうかを決定する観点から、問題の傾向を知るために行う調査をいう。
 農林水産省では、食品安全に関する緊急時対応を必要とする事態(以下「食品安全緊急事態」という。)に対応するための共通事項として「農林水産省食品安全緊急時対応基本指針」(以下「基本指針」という。)を定め、食品安全緊急事態が発生した場合の対応に関する基本的考え方を示している。また、飼料等が原因となって食品安全緊急事態が生じた場合、「農林漁業の生産資材に由来する食品安全に関する緊急時対応実施指針」(以下「実施指針」という。)に基づき所要の措置を講じることになる。本ガイドラインでは、主として実施指針に沿って農林水産省の対応を示す。
【解説】
 農林水産省は、食品安全に係る緊急事態等に対する共通事項として「農林水産省食品安全緊急時対応基本指針」を定めており、それを基に生産資材について実施指針を定めている。これらの指針については、農林水産省のホームページで公開している。
(1)農林水産省は、飼料等に関する情報の収集・分析を行い、必要に応じて、飼料安全法に基づき以下の規制等を行う。
① 飼料等の安全性に係る規格・基準の設定(第3条)
② 飼料等の検定及び表示(第5条)
③ 有害な物質を含む飼料等の流通の防止(有害な飼料等の製造・輸入・販売の禁止、廃棄等の命令)(第23条、第24条)
④ 製造工場、販売所等における適正な飼料等の製造・流通等の確保(製造業者、販売業者等の届出、報告の徴取、立入検査、飼料等の収去等)(第50条、第55条、第56条、第57条)
【解説】
 飼料安全法の関係条文を列記している。基準又は規格については、「常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改正がなされなければならない。」(第3条第3項)と規定されている。
(2)農林水産省は、本ガイドラインに基づき輸入業者、製造業者等の関係業者が自主的に定める各種規格、手順書等について、ひな型や例を関係業者に提供する。
【解説】
 平成20年度に実施する「流通飼料対策事業」において、これら各種規格、手順書等について検討することとしている。規格については、対象となる飼料等を可能な限り細分化し例示を示すこととしている。また、手順書等も輸入業者、原料等製造業者、配混合飼料製造業者、飼料添加物製造業者等を可能な限り細分化してひな型を示すこととしている。
 そのひな型には、本ガイドラインの目的に則して問題となる飼料等の① 国内侵入の未然防止、② 侵入した場合の早期発見、③ 被害の拡大の防止、などの観点で関係業者が必ず実施すべき事項が示される予定である。
(1)飼料等に由来する食品安全緊急事態は、飼料等の利用・使用、事故等によって、食品安全に関する次のような事案が発生した場合を想定する。
① 食品の汚染とそれによる人畜への被害・影響が大規模又は広域である事案
② 科学的知見が十分ではない原因による食品の汚染と、それによる人畜への被害・影響が生じ、又は生じるおそれがある事案
③ ①及び②のほか、社会的反響等を勘案し、緊急の対応が必要と考えられる事案
(2)食品安全緊急事態発生時の対応
① 事件・事故発生初期の対応として、農林水産省は、国民の健康の保護が最も重要であるという認識の下に、食品安全委員会、厚生労働省等の食品安全関係府省と相互に十分な連絡及び連携を図る。同時に、食品安全委員会、厚生労働省はもとより、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(以下「センター」という。)、飼料等の関係業者、食品の製造・流通業者等からも情報を収集し、その分析を行い、発生した事案が食品安全緊急事態に該当するかどうかを検討する。
② 農林水産省は、当該事案が食品安全緊急事態に該当すると判断した場合には、基本指針に基づく農林水産省食品安全緊急対策本部(以下「本省対策本部」という。)を設置する。
③ 本省対策本部の設置後の対応として、連絡体制の整備を行い、農林水産省は、直ちに次の対応を行う。
ア 直ちに講ずるべき対策の検討、実行及び指示
イ 当該飼料等の関係業者に対しての情報提供
ウ 食品安全緊急事態が発生した地域における情報等の収集、整理及び分析
エ 食品安全委員会、厚生労働省等の食品安全関係府省との緊急事案に関する情報交換及び連絡調整
オ 報道室を通じた広報及び関連ホームページの開設
④ 農林水産省は、必要に応じて、センターの職員又は本省若しくは地方農政局の職員を現地に派遣し、立入検査、試験のための飼料等の収去等を行う。この際、必要に応じて学識経験者に協力や助言を依頼する。
⑤ 農林水産省は、実施指針に基づき、情報の公表を報道機関等へ行う。
⑥ 農林水産省は、本省において消費者等からの意見、相談等への対応を行うとともに、地方農政局に対応窓口を設置する。また、センターに対し対応窓口の設置を要請する。
(3)飼料等に問題があった場合の対応
 事件・事故発生初期の対応に続き、農林水産省は、収集した情報を総合的に判断して食品の安全の確保の観点から必要と認める場合に、以下の対応を行う。
① 飼料等の輸入業者、製造業者及び販売業者に対して出荷の停止及び回収の要請を行う。さらに、必要に応じて、飼料安全法に基づいて問題のある飼料等の回収等を命令する。
 また、必要に応じて飼料等の輸入業者等に、当該業者が適切に品質管理を行うための有害物質の分析法を提示する。
② 都道府県、農林漁業団体、飼料等製造団体等を通じて、畜産農家等が問題のある飼料等を使用しないよう文書により指導する。これらの指導については、報道機関を通じて広く情報提供に努める。
③ 必要に応じて、地方農政局及び地方農政事務所を通じて、問題のある飼料等を使用しないよう畜産農家等に対して直接に周知及び指導を行う。
【解説】
 食品安全緊急事態として想定される事案を示し、その対応の概要及び初期対応後の回収等についての具体的な対応を記載している。
 輸入業者は、飼料等の生産地における干ばつ等の天候不順、倉庫等への保管時におけるかび毒発生又は害虫の異常発生に伴う農薬散布など、飼料等の安全性に影響を及ぼすと考えられる情報を収集し、整理する。また、これらの情報のうち、飼料等の安全性確保上重要と考えられるものについては、センターを通じて農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課(以下「畜水産安全管理課」という。)に報告する。
【解説】
 輸入業者は、飼料等の生産地の天候や農薬の散布状況を可能な限り把握する必要がある。また、加工品についてはその加工方法についても把握した上で、飼料等を輸入する。
 本項は、本ガイドライン第1に記載されているように「…個別の飼料等の製造業者のみで飼料等への有害物質の混入を防止することは困難であり、輸入業者等の関係業者や農林水産省等を含めた関係者及び関係機関全体で対応する必要がある。」との観点から設けたものである。
 特定の輸入業者が入手した飼料の安全性確保上重要と考えられる情報について、センターへ電子メールで連絡する(電子メールが不通の場合は、ファックスを使用。緊急の場合は電話を併用。連絡様式については別途公表予定)。これを受けたセンターは速やかに農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課に電子メールで連絡する(電子メールが不通の場合は、ファックスを使用。)。なお、一刻を争うような緊急時には、農林水産省畜水産安全管理課に直接連絡する。
 「飼料等の安全性に影響を及ぼすと考えられる情報」とは、「生産地における干ばつ等の天候不順や倉庫等の保管時におけるかび毒発生、害虫の異常発生に伴う農薬散布等」の他、生産地における飼料作物生産のために新たに使用されるようになった化学物質の使用状況、生産国における飼料が原因となって発生したと見られる家畜事故や食品事故等を含む。
 「飼料等の安全性確保上重要と考えられるもの」とは、「飼料等の安全性に影響を及ぼすと考えられる情報」のうち飼料等の原料として使用した場合に混入している有害物質により家畜が死亡したり、食品に残留するといった可能性が高い情報をいう。
(1)飼料等に含まれる有害物質のサーベイランス及びモニタリング
 農林水産省が策定する「食品の安全性に関する有害化学物質のサーベイランス・モニタリング年次計画」に基づき実施するものを含め、飼料等について有害物質のサーベイランス及びモニタリング検査を計画的に実施する。
【解説】
 農林水産省は「農林水産省及び厚生労働省における食品の安全性に関するリスク管理の標準手順書(平成17年8月25日公表、平成18年10月5日改訂)」に基づき、国際的に合意された枠組みに則ってリスク管理に不可欠なデータを得るために、5年間でサーベイランス・モニタリングを優先的に実施すべき危害要因を明示した「サーベイランス・モニタリング計画」を作成している。「サーベイランス・モニタリング計画」において調査対象となっている危害要因と分析点数は農林水産省のホームページを参照のこと。
(2)情報の発信
 1により提供された情報、(1)に基づくサーベイランス及びモニタリング検査の結果その他飼料等の有害物質に関する情報を、3に基づき登録された輸入業者及び製造業者に定期的に発信する。
【解説】
 センターは、サーベイランス及びモニタリング検査の結果や有害物質の汚染に関する情報に加えて、混入する可能性のある有害物質と対象飼料等の概要およびその混入事例がある場合はその具体的な内容と原因についての情報を提供する。なお、平成20年度中に試験的に情報発信を行うこととし、21年度から本格的に対応する予定である。
 電子メールアドレスの登録は、電子メール又はファックスでセンターに届け出ることにより行う(様式は別途公表予定)。センターは届出を受理した場合、試験的に届出をした者に電子メールを送信することにより登録が適切に行われていることを確認する。
(3)緊急時の対応
 飼料等が原因となって食品の安全性確保に問題が生じるおそれがある等の緊急時には、畜水産安全管理課の指示のもと、電子メール又はファックス等により輸入業者等の関係業者に情報を速やかに提供する。
【解説】
 農林水産省畜水産安全管理課は、第10に規定する「輸入又は製造数量の報告」をもとに、緊急時に問題となる飼料等の輸入業者、製造業者等を特定して、それらの業者等に対して優先的に情報提供を行うようセンターに指示する。
 「飼料等が原因となって食品の安全性確保に問題が生じるおそれがある等の緊急時に、…」とは、例えば魚粉へのマラカイトグリーンの混入やスーダングラスでのブロモキシニル残留など食品の安全確保に問題が生じるおそれがあり、緊急に対策を講じる必要のある場合をいう。
 ここでいう「輸入業者等の関係業者」とは、当該ガイドライン第4の3で電子メールアドレスを登録した者である。
 輸入業者及び製造業者は、センターから情報を受信するため、センターに電子メールアドレスを登録する。
 輸入業者及び製造業者は、2によりセンターから得た情報等を活用し、飼料等の安全性に影響を及ぼすと考えられる最新情報を把握する。
【解説】
 輸入業者及び製造業者は、センターから送信される情報等を活用し、自らが取り扱う品目の安全性に影響を及ぼすおそれのある情報の有無について把握しておく必要がある。
 このため、輸入業者及び製造業者は、センターから発信される情報を受信するための窓口を企業内に設置し、電子メールアドレスを登録するとともに、受信した情報を迅速に企業内の関係者(原則として飼料等の輸入に係る全ての職員)への周知をはかるための手続きや、情報の配布先などを定めておく必要がある。
 なお、センターに登録するための電子メールアドレスは、個人に割り当てられたものではなく、センターとの情報交換専用とすることが望ましい。
 なお、登録した輸入業者及び製造業者の一覧表をセンターで作成し、農林水産省畜水産安全管理課に月1回報告する。
 輸入業者は、次に掲げる業務を行う。
 第3の1(2)により農林水産省から提供されるひな型や例を参考に、第4の2によりセンターから提供される情報を踏まえ、輸入飼料等ごとに、安全性を確保するための明確な規格を策定する。
【解説】
 「安全性を確保するための明確な規格」の対象となるのは、穀類や乾牧草では、現在、飼料安全法等で基準値が定められている成分(末尾資料参照)となる。なお、これらの基準値が設定されていない原料等については、栽培時あるいは製造時に想定されるリスクに応じて、センターが行うモニタリング検査結果や自主検査等を踏まえて安全性を確保するための規格を設定する必要性について検討を行う。
 輸入飼料等の供給者と1の規格を満たすために契約を締結する等安全性に関する確認等を行うこととし、必要に応じて、海外の製造事業場等に出向いたり、製造状況について聴取する等によりその遵守状況を確認し、その結果を記録する。
【解説】
 「安全性に関する確認等」とは、農薬を例に取れば、栽培時およびサイロ等での保管時における農薬の使用状況や、その農薬に関する規制等の情報の入手等が考えられる。
 安全性に関する確認等の「等」は、以下を含むものとする。
① 輸出・輸入業者の個別または団体間の安全性に関る同意書ないし覚書を結ぶ。
② 前述①が締結ないし取得困難な場合は、輸入業者ないし輸入業者団体による定期的な自主検査を行うとの内容も含むものとする。
 4から7までに規定する業務を適切に行うため、第3の1(2)のひな型や例を参考に、品質管理、苦情処理、回収処理及び教育訓練の手順書を作成し、あらかじめ指定した者に、手順書に基づき業務を行わせる。
【解説】
 平成20年度に実施する「流通飼料対策事業」においてこれらの手順書のひな型を検討し示すこととしており、各輸入業者はそれを参考に手順書を作成することになる。
 また、これらの手順書の遵守を確実にするためには、責任と権限を明確にすることが重要なことから「あらかじめ指定した者」にその業務を行なわせることとしている。
 4から7は輸入業者が整備すべき各手順書について網羅すべき事項を示している。ただし、これらの手順書は、本ガイドラインの目的に見合った内容が網羅されていれば有害物質に限定した手順書である必要はなく、手順書の名称も特にこだわるものではない。
 3により作成した品質管理に関する手順書に基づき、次に掲げる品質管理に係る業務を行う。
(1)自ら定めた頻度で必要な検体を採取し、その記録を作成する。
(2)採取した検体について、必要に応じて1により策定した規格への適合性を確認するため試験検査を行い、その記録を作成する。
(3)分析値が基準値を超えるなど問題が認められた場合には、センターに報告する。
(4)(2)の試験検査に関する記録を作成の日から原則として2年間以上保存する。
【解説】
 「品質管理」は飼料等を輸入するにあたって、その安全確認に関する業務が適切に行われているかの検証を行う上で重要である。
 また、「検体の採取」および「試験検査」は、取扱う飼料等の生産国の状況、取扱い頻度、取扱量などを勘案して、採取頻度や試験検査項目を定める必要がある。
 輸入業者は、畜産農家や製造業者等から輸入飼料等に含まれる有害物質に関する苦情があったときは、3により作成した苦情処理に関する手順書に基づき、次に掲げる苦情処理に係る業務を行う。
(1)苦情に係る事項の原因を究明し、所要の措置を講じる。
(2)苦情の内容、原因究明の結果及び改善措置等を記載した苦情処理記録を作成し、その作成の日から原則として2年間以上保存する。
【解説】
 苦情処理に関する手順書には、① 受付及び連絡・報告の手順、② 調査・原因究明の手順、③ 改善措置の手順等を規定するが、少なくとも次のことを盛り込む必要がある。
(1)苦情の定義が明確であり、本ガイドラインの主旨に見合っていること。
(2)苦情に対する対応手順と対応責任者が明確であること。
(3)苦情発生の原因究明と再発防止策の実施が盛り込まれていること。
(4)苦情に関する対応を記録として残すこと。
 輸入業者は、輸入飼料等に含まれる有害物質が基準値を超える等の理由により回収を行うときは、3により作成した回収処理に関する手順書に基づき、次に掲げる回収処理に係る業務を行う。
(1)回収に至った原因を究明し、所要の措置を講じる。
(2)回収した飼料等を適切に処理する。
(3)回収及び処理の内容、原因究明の結果及び改善措置等を記載した回収処理記録を作成し、その作成の日から原則として2年間以上保存する。
(4)回収を行った場合は、原則として回収の理由及びその内容について、センターを通じて畜水産安全管理課にその理由とともに報告する。
【解説】
 回収処理に関する手順書には、① 回収の手順、② 回収品の取り扱い・回収品の保管・処理の方法等、③ 原因の究明・改善措置等、を規定するが、少なくとも次のことを盛り込む必要がある。
(1)回収処理及び回収品の処理方法に関する指示責任者が明確であること。
(2)回収に至った原因の究明と再発防止策が盛り込まれていること。
(3)回収品処理方法も含めた処理の経過を記録として残すこと。
 輸入業者は、3により作成した教育訓練に関する手順書に基づき、次に掲げる教育訓練に係る業務を行う。
(1)輸入業務に従事する職員に対して、センターが行う研修等を利用すること等により飼料等の安全性に関する必要な教育訓練を計画的に実施する。
(2)教育訓練の実施の記録を作成し、その作成の日から原則として2年間以上保存する。
【解説】
 教育訓練に関する手順書には、① 教育訓練の責任者と役割、② 教育訓練の計画と実施手順、③ 記録の作成と保存方法等を規定する。また、教育訓練の計画にセンターが主催する飼料安全法等の研修を毎年受けさせることを盛り込む必要がある。
 第4の2によりセンターが実施する有害物質のサーベイランス及びモニタリングの対象となる試料の採取に協力する。
【解説】
 センターの実施するサーベイランス及びモニタリングは、本ガイドラインの有効な運用にとって重要であり、最大限協力する。
 協力の内容は、センターの要請に基づく、入船時期、産地、製造事業場等に関する情報の速やかな提供をいう。
 製造業者は、原料等の受入れに当たっては、次に掲げる業務を自ら行い、又は業務の内容に応じてあらかじめ指定した者に行わせる。
【解説】
 本ガイドラインにおいては、飼料等の製造業者が行うべき業務に関して、本項と第7に区分して記載されている。これらのうち、本項で示す業務は製造業者において必須な項目であり、第7で示す業務は後述するように、リスクの程度によってある程度省略できる項目であることから、区分した書き分けがされている。
 製造事業場が受入れる原料等の品質(安全性等)が製造される製品の品質に大きく影響するため、原料等受入業務を担当する者(あらかじめ指定した者)の責任と権限を明確にする必要がある。
 また、製造管理責任者や品質管理責任者との関係及び責任と権限の範囲についても明確にしておく必要がある。
 第3の1(2)により農林水産省から提供されるひな型や例を参考に、第4の2によりセンターから提供される情報等を踏まえ、使用する原料等ごとに、安全性を確保するための明確な規格を策定する。
【解説】
 「ひな型や例」とは、平成20年度に実施する「流通飼料対策事業」で検討する各飼料業界別の原料等の受入時の規格のひな型や例を意味している。「情報」とは、センターがホームページで公表している安全性データや第4の2(3)で規定する緊急時の対応の発端となった有害物質に関する情報を意味している。
 製造事業場は、使用する原料等について試験検査データやセンターの安全性データ等に基づきリスクの程度を測定し、「ひな型や例」を参考に原料等の受入時の規格を策定する。
 規格は原料等供給者が厳守できるものでなければならない。第4の2の情報に基づき、飼料の安全性を確保できる範囲であって、原料供給者が通常の努力で遵守できるレベルの規格設定が望ましい。ただし、省令や通知等で公的に基準値が定められているものは、その基準値以下とすること。規格は、普遍的なものではなく、第4の2の情報に基づき、適宜適切なものに改変すること。また、規格は出来る限り数値化し文面で残すこと。
 原料等における「リスクの程度の測定」とは、
・使用する原料等あるいは製造された製品が有害物質の各基準値に対しどの水準(基準値の  何割程度等)にあるのかを把握する。
・使用する原料等あるいは製造された製品に基準値が設定されていない場合には、配合飼料  における配合割合(「飼料月報」(農林水産省生産局畜産振興課編、(社)配合飼料供給安定機構発行)等)を参考に配合飼料製品への影響度を把握する。
ことをいう。
 自らの製造品が供給先で飼料原料となる飼料等製造業者においては、最終的な飼料製造業者の製品が基準値等に違反しないことを十分配慮しながら原料の規格を設定することが重要である。
 なお、「原料受入れ基準書」など原料等の受入れ品質条件を規定する書類がある場合は、新たに規格書を策定する必要はなく、本ガイドラインに基づく規格をその書類に追加することでよい。
 過去の事例をみると、残留農薬、かび毒、重金属が飼料安全法違反となった事例は非常に少ない状況にある。しかし、新規の海外産地や海外メーカーから購入する際、穀物あるいは穀物を原料とした副産物の場合では、当該原料等の輸出国での規制状況・監視状況や穀物の栽培状況、産地(メーカー)から輸出施設までのリスクを事前に輸入業者等から情報を得る必要がある。また、必要に応じて原料等について有害物質の試験検査を行う。さらに、魚粉や副産物を加工するなどの加工度の高い飼料等においては、当該飼料等の原料等の受入れ品質条件、製造工程、製品物流過程等について輸入業者等の情報に基づき、購入の判断をすることが重要である。
 1の規格を満たすために原料等の供給者との契約の締結等を行うこととし、必要に応じて、原料等の製造事業場等に出向いたり、製造状況について聴取する等によりその遵守状況を確認し、その結果を記録する。また、輸入原料等については、輸入業者等を通じて、原料等の製造事業場における製造状況を確認し、その結果を記録する。なお、受委託製造において、委託者が原料等を供給する場合には、その原料等については委託者が飼料等規格の遵守状況の確認を行う。
【解説】
 製造事業場の原料等の受入れ規格(品質条件等)を供給者(輸入業者、原料メーカー、販売業者)と覚書等で締結することを要求している。ただし、購入側の一方的な品質条件とならないように供給者と購入者双方が納得できる現実的・常識的なものでなくてはならない。また、確認の方法は、製造事業場に出向いても、状況の聴取でも、実態が把握できる方法ならば、いずれの方法でもよい。なお、製造状況を確認した結果の記録は期間を定めて保存する。
 さらに、購入する原料等のリスクの程度を測定し、リスクの程度が高いと判断される原料等については、購入者(輸入原料等の場合は、製造業者から委託を受けた輸入業者等)が製造事業場、輸出エレベーター等に出向き、当該飼料等の原料等受入れ規格、製造工程(製品の保管施設含む)、物流工程、原料等受入れ・製造工程・物流工程の管理の状況等を点検し、問題がないか、契約条件と異なることはないか等を確認する。なお、輸入原料等については、輸入業者等を通じて確認した結果の記録は期間を定めて保存する。
 また、受委託製造の場合は、原料等を供給する者が飼料等の安全確認をすることを規定している。
 第4の2によりセンターが実施する有害物質のサーベイランス及びモニタリングの対象となる試料の採取に協力する。
【解説】
 センターの実施するサーベイランス及びモニタリングは、本ガイドラインの有効な運用にとって重要であり、最大限協力する。
 協力の内容は、センターの要請に基づく、産地、製造事業場等の情報の速やかな提供をいう。
 製造業者は、飼料等の製造に当たっては、次に掲げる業務を行う。ただし、製造工程において有害物質が混入する可能性が低いと考えられる場合には、これらの一部を省略できる。
【解説】
 本ガイドラインにおいては、飼料等(飼料又は飼料添加物をいう。なお、それらの原料等を含む)の製造業者において行うべき業務に関して、第6と第7に区分して記載されている。これらのうち、第6で示す業務は製造業者において必須な項目であり、本項には、リスクの程度によってある程度省略できる項目が示されている。
 ここで言う「有害物質が混入する可能性」の判断基準は、① 製造工程内やその近くに有害物質が存在しており、機械故障や人為的ミスで混入する危険性が高いかどうか、② 製造工程や保管方法が開放状態でかつ近くに有害物質が保管されており、不可抗力で混入する危険性が高いかどうか、③ 事業場関係者以外の出入りが多く、侵入者による有害物質の意図的混入が容易かどうか等である。
(1)製造業者は、事業場ごとに、製造工程の管理その他必要な事項について記載した工程管理基準書を作成する。
【解説】
 平成20年度に実施する「流通飼料対策事業」において、対象となる飼料を可能な限り細分化し工程管理基準書の例を示すこととしている。
(2)製造業者は、事業場ごとに、検体の採取方法、試験実施方法、試験検査結果の判定方法その他必要な事項を記載した品質管理基準書を作成する。
【解説】
 品質管理基準書は、本ガイドラインの運用により適正な製品が自ら定期的に確認するために、少なくとも以下のことを網羅する必要がある。検体には製品だけでなく、必要に応じて原料も含むこと。
① 対象とする有害物質の特性に応じた検体の採取及び試験検査の実施頻度等を定めること。
② 検体の採取場所や採取方法がロットを代表すると判断できる内容であること。有害物質のなかには、原料等中に偏在して存在しているものがある。このため、ロットを代表する検体を採取することが困難であったり、試験結果の解釈が難しい場合があることを踏まえて、原料等の評価を慎重に行う必要がある。
③ 試験実施方法及び結果の判定基準ならびに判定者が明確であること。
④ 検体の保管、試験検査結果の記録に関する定めがあること。
⑤ 試験検査結果に異常が認められた場合の措置が明確であること。
⑥ 試験実施方法の定期的な精度確認に関する定めがあること。
 なお、「品質管理基準書」が既に策定されている場合は、新たに基準書を策定する必要はなく、本ガイドラインに基づく事項を追加することでよい。
(1)製造業者は、事業場ごとに、製造管理責任者及び品質管理責任者を設置する。
(2)製造管理責任者は、製造管理に関する知識を有した者とする。
(3)品質管理責任者は、原則として品質管理に関する知識を有した者とする。
(4)製造管理責任者と品質管理責任者は、原則として兼務しない。また、飼料安全法第25条に規定する飼料製造管理者が設置されている場合には、飼料製造管理者は製造管理責任者を兼務することができる。
【解説】
 製造管理責任者と品質管理責任者は兼務しないことが原則であるが、飼料安全法第25条に定める飼料製造管理者の設置義務の対象となっていない製造事業場においては、配員上の問題等のやむを得ない事情のある場合は、両責任者を兼務することができる。
 既に「抗菌性飼料添加物を含有する配合飼料及び飼料添加物複合製剤の製造管理及び品質管理に関するガイドライン」に適合している配合飼料製造業者等では、ガイドラインに基づいて飼料製造管理者および品質管理責任者が設置されており、これらの者が、製造管理責任者あるいは品質管理責任者を兼務することになる。
 製造業者は、工程管理基準書に基づき、その事業場の製造管理責任者に、次に掲げる製品の製造管理に係る業務を適切に行わせる。
(1)有害物質の混入を防止するため、製造工程における指示事項、注意事項その他必要な事項を記載した製造に係る手順書を作成する。
【解説】
 適正な製造を行うために遵守すべき事項で、工程管理基準書に記載しないレベルのものを対象としており、原料投入順位や加熱処理工程での運転条件の基準などがこれに該当し、各事業場の工程や機械及び作業の特性に応じて具体的に定める。またこれらの手順は作業従事者に周知することが重要であり、現場への掲示などによる方法でもよい。
(2)次に掲げる業務を自ら行い、又は業務の内容に応じてあらかじめ指定した者に行わせる。
① 製造に係る手順書に基づき製品を製造する。
② 製品の製造に関する記録をロットごとに作成する。
③ 製造設備を定期的に点検整備し、その記録を作成する。
④ その他製造管理に関わる必要な業務
【解説】
 製造管理責任者が行うべき業務をあらかじめ指定した者に行わせる場合は、その権限を誰に委譲しているかを第三者に判るように組織図等により明確にし、結果の点検は製造管理責任者が自ら行うことが基本である。また、業務を自ら行う場合も含めて製造管理責任者が結果の承認をしていることが確認できる記録が必要となる。
 具体的には以下のとおりである。
①「製品の製造に関する記録」とは、製造した製品名、数量、製造年月日、ロット番号、原料または材料の名称・数量、配合割合、製造実績、計量記録などの製造に係わる記録  である。
②「製造設備の点検整備と記録」とは、製造設備の点検整備、計量器の定期点検について、点検した設備、年月日、点検実施者、点検の結果等を記録することをいう。
(3)工程管理基準書に基づく製造管理が適切に行われていることを確認する。
【解説】
 工程管理基準書あるいは製造管理に係る手順書に基づく記録を、定期的に確認することをいう。また、必要に応じて、自ら作業状況の確認や聞き取り調査を行うこと。
(4)飼料安全法第52条に基づく製造に関する記録を作成の日から8年間保存する。また、製造管理に関する記録を作成の日から原則として2年間以上保存する。
【解説】
 ここでいう「飼料安全法第52条に基づく製造に関する記録」とは、基準又は規格が定められた飼料及び飼料添加物に関して、① 製造年月日、② 製造に用いた原料又は材料の名称と数量、③ 原料又は材料を譲り受けた場合は譲り受けた年月日と相手方の氏名又は名称、荷姿を記録することであり、事業場で製造する全ての製品とその原料が対象である。
 なお、「保管及び出納並びに製造管理に関する記録」は、原則として作成した又はコンピュータから出力された文書を保存することであるが、コンピュータにより管理されているものについては、コンピュータに保存したものを記録とすることができる。
 記録の保存については、関係する手順書あるいは基準書に期限、保存方法(媒体も含む)などを記載する。
 製造業者は、品質管理基準書に基づき、その事業場の品質管理責任者に、次に掲げる原料等及び製品の品質管理に係る業務を計画的かつ適切に行わせる。
【解説】
 品質管理責任者は、本ガイドラインの第7の2(3)で、「原則として品質管理に関する知識を有した者」と規定している。ここでいう「品質管理に関する知識を有した者」とは、少なくとも、「品質管理基準書」に定められた内容について十分な知識を有するとともに、試験実施方法の妥当性ならびに試験検査結果の数値を正しく判断でき、かつ指導できるレベルにあると製造業者が認めた者をいう。
(1)次に掲げる業務を自ら行い、又は業務の内容に応じてあらかじめ指定した者に行わせる。
【解説】
 品質管理責任者が行うべき業務を、あらかじめ指定した者に行わせる場合は、その権限を誰に委譲しているかが第三者に判るように組織図等で明確にし、結果の点検は品質管理責任者が自ら行うことが基本で、各業務の具体的な基準は次のとおりである。また、業務を自ら行う場合も含めて品質管理責任者が管理もしくは結果の承認をしていることが確認できる記録が必要である。
① 自ら定めた頻度により、原料等及び製品のロットから検体を採取し、その記録を作成する。
【解説】
 検体の採取頻度は、対象とする有害物質の特性及び必要に応じ試験検査を行うことを考慮して定める。また、第4の2のセンターによる情報も活用するとよい。
 その記録とは、検体の品名、産地や製造事業場、入庫もしくは製造月日等の検体のトレーサビリティが確保される内容を示す。
② 採取した検体について、必要に応じて第6の1により策定した規格への適合性を確認するため試験検査を行い、その記録を作成する。なお、試験検査は対象の有害物質の安定性を考慮して、適切な時期に実施する。
【解説】
 採取した検体全てについて試験検査を義務付けるものではなく、リスクの程度等、自ら定めた必要性に応じて試験検査をおこなうことを求めている。
 「有害物質の安定性を考慮して」とは、経時的な変化を伴う有害物質や含有量に時期的な変化(例えば残留農薬等)が考えられる有害物質があることから、試験検査の時期に注意を払う必要性を指摘したものである。
③ 採取した検体については、試験検査後も、適切な保管条件下で、自らが定めた期間保存する。
【解説】
 原料等の検体はその消費期間を、製品の検体はその流通期間を勘案して保存期間の基準を定め、劣化の少ない状態で保存する。
 また、検体は記録の一種であるので、これらの基準は品質管理基準書に明記する。
④ 試験検査に関する設備及び機器を定期的に点検整備し、その記録を作成する。
⑤ その他品質管理に係る必要な業務
【解説】
 試験検査に関する設備及び点検整備の頻度は、試験検査対象・試験検査方法ならびにその設備及び機器の特性に応じて品質管理基準書で定める必要がある。また、その実施に関する記録の作成・保存についても品質管理基準書で定める。
(2)試験検査結果の判定を行い、その結果を製造管理責任者に対して文書により通知する。なお、分析値が基準値を超えるなど問題が認められた場合には、センターに報告する。
(3)(1)②の試験検査に関する記録を作成した日から原則として2年間以上保存する。
【解説】
 ここでいう基準値とは、飼料安全法に基づき(省令、通知等)公的に定められたものをいい、原料等の製造業者や輸入業者との間で取り決めた原料等の独自の受入規格は含まない。ただし、後者であっても重要と思われる分析値についてはセンターに情報提供を行う。
 試験検査結果の判定は、第4の2及び第7の1(2)により分析値の妥当性を慎重に検討して行う。必要に応じてセンターに相談し判定の適正化に努める。
 また、規格外の値が認められた場合の再サンプリングの方法や製品についての確認の方法について、手順書に記載することが望ましい。
 製造業者は、6から10までに規定する業務を適切に行うため、第3の1(2)のひな型や例を参考に、事業場ごとに、異常時対応、苦情処理、回収処理、自己点検及び教育訓練に関する手順書を作成する。
【解説】
 これらの手順書は、それぞれに係わる行為が、あらかじめ定められた責任と権限のもとで確実に行わせることを目的として定めるものである。
 なお、平成20年度に実施する「流通飼料対策事業」において、手順書のひな型を示すこととしている。
 製造業者は、製造工程における機器の故障等により製品に有害物質の混入又はそのおそれのある異常があったときは、その事業場の製造管理責任者に、5により作成した異常時対応に関する手順書に基づき、次に掲げる異常時対応に係る業務を行わせる。
(1)異常発生の原因を究明し、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講じる。
(2)異常が認められた製品を適切に処理する。
(3)異常の内容、原因究明の結果及び改善措置を記載した異常時対応記録を必要に応じて作成し、その作成の日から原則として2年間以上保存する。
【解説】
 異常時の対応に関する手順書は、それぞれに係わる行為が、予め定められた責任と権限のもとで確実に行わせることを目的として定めるものである。
 また、本手順書には、① 受付対応の手順、② 調査・原因究明の手順、③ 改善措置の手順等を規定するが、少なくとも、次のことを盛り込む必要がある。
(1)異常の定義が明確であり、本ガイドラインの主旨に見合っていること。
(2)異常時を重要性に応じて分類し、分類ごとに異常確認時の連絡・報告手順及び対応責任者が明確にされていること。
(3)異常がある製品を出荷した場合、家畜に対する給与の防止に関する手順が定められていること。
(4)異常の原因究明と再発防止策の実施が盛り込まれていること。
(5)異常時の対応を記録として残すこと。
(6)異常が認められた製品を適切に処理する。
 処理対象は、出荷不可能な製品および回収した製品等、基準・規格を外れたもしくはその恐れのあるもの全てを含む。また、処理することにより被害の拡大(不適合品の拡大)に繋がらないような対応をすること。
 なお、「異常時対応手順書」が既に策定されている場合は、新たに手順書を策定する必要はなく、本ガイドラインに基づく事項を追加することでよい。
 製造業者は、畜産農家等から製造した製品に含まれる有害物質に関する苦情があったときは、当該事業場の製造管理責任者又は品質管理責任者に、5により作成した苦情処理に関する手順書に基づき、次に掲げる苦情処理に係る業務を行わせる。
(1)苦情に係る事項の原因を究明し、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講じる。
(2)苦情の内容、原因究明の結果及び改善措置等を記載した苦情処理記録を作成し、その作成の日から原則として2年間以上保存する。
【解説】
 苦情処理に関する手順書には、①受付及び連絡・報告の手順、②調査・原因究明の手順、③改善措置の手順等を規定するが、少なくとも次のことを盛り込む必要がある。
(1)苦情の定義が明確であり、本ガイドラインの主旨に見合っていること。
(2)苦情に対する対応手順と対応責任者が明確であること。
(3)苦情発生の原因究明と再発防止策の実施が盛り込まれていること。
(4)苦情に関する対応を記録として残すこと。
 なお、「苦情処理手順書」が既に策定されている場合は、新たに手順書を策定する必要はなく、本ガイドラインに基づく事項を追加することで良い。ただし、その際には、記録として保存する場合は、本ガイドラインに対応するものは識別できるようにしておく。
 製造業者は、製造した製品に含まれる有害物質が基準値を超える等の理由により回収を行うときは、当該事業場の製造管理責任者に、5により作成した回収処理に関する手順書に基づき、次に掲げる回収処理に係る業務を行わせる。
(1)回収に至った原因を究明し、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講じる。
(2)回収した製品を適切に処理する。
(3)回収及び処理の内容、原因究明の結果及び改善措置等を記載した回収処理記録を作成し、その作成の日から原則として2年間以上保存する。
(4)回収を行った場合は、原則としてセンターを通じて畜水産安全管理課にその理由とともに報告する。
【解説】
 回収処理に関する手順書には、① 回収の手順、② 回収品の取り扱い・回収品の保管・処理の方法等、③ 原因の究明・改善措置等、を規定するが、少なくとも次のことを盛り込む必要がある。
(1)回収処理及び回収品の処理方法に関する指示責任者が明確であること。
(2)回収に至った原因の究明と再発防止策が盛り込まれていること。
(3)回収品処理方法も含めた処理の経過を記録として残すこと。
 なお、「回収処理手順書」が既に策定されている場合は、新たに手順書を策定する必要はなく、本ガイドラインに基づく事項を追加することでよい。
(1)製造業者は、原則としてその事業場の製造管理責任者及び品質管理責任者に、5により作成した自己点検に関する手順書に基づき、次に掲げる自己点検に係る業務を行わせる。
① 自己点検に関する手順書に基づき当該事業場における製品の製造管理及び品質管理の実施状況について定期的に自己点検を行う。
② 自己点検の結果の記録を作成し、その作成の日から原則として2年間以上保存する。
【解説】
 自己点検に関する手順書には、① 実施の時期、② 点検の手順(点検項目、手順、記録の方法等)、③ 点検後の改善措置の手順等を規定するが、少なくとも次のことを盛り込む必要がある。また、ISO9001の内部監査の一環で実施することも可能である。
(1)自己点検の実施頻度と実施者が明確であること。
(2)自己点検の点検項目と評価の方法が明確であること。
(3)自己点検で改善すべき事項が確認されたときの手順が明確であること。
(4)自己点検の結果の記録を残すこと。
(5)自己点検結果報告書を製造業者に提出すること。
 なお、「自己点検手順書」等の手順書が既に策定されている場合は、新たに手順書を策定する必要はなく、本ガイドラインに基づく事項を追加することでよい。
(2)製造業者は、(1)①の自己点検の結果に基づき、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講じるとともに、当該措置の記録を作成し、その作成の日から原則として2年間以上保存する。
【解説】
 自己点検結果に基づく改善を行った場合は、① 要改善事項の発生の原因究明、② 再発防止策の策定、③ 再発防止策の実施に関する記録を残すことが必要となる。
 製造業者は、あらかじめ指定した者に、5により作成した教育訓練に関する手順書に基づき、次に掲げる教育訓練に係る業務を行わせる。
(1)製造・品質管理業務に従事する職員に対して、センター等が行う研修等を利用するなどして製造管理及び品質管理に関する必要な教育訓練を計画的に実施する。
(2)教育訓練の実施状況を製造業者に対して文書により報告する。
(3)教育訓練の実施の記録を作成し、その作成の日から原則として2年間以上保存する。
【解説】
 教育訓練に関する手順書には、① 教育訓練の責任者と役割、② 教育訓練の計画と実施手順、③ 記録の作成と保存方法等を規定するが、少なくとも次のことを盛り込む必要がある。なお、飼料製造管理者又はその指名した者及び品質管理責任者又はその指名した者に対しては、教育訓練の計画にセンターが主催する飼料安全法等の研修を毎年受けさせることを盛り込む必要がある。また、ISO9001の教育訓練の一環で実施することも可能である。
(1)製造・品質管理業務に従事する職員に対して、その業務内容に応じて求める力量が明確であること。
(2)力量の評価者が明確であること。
(3)職員の力量評価に基づく教育訓練を計画的に行うこと。
(4)計画に基づく教育訓練実施の対象者、実施時期、結果評価を記録に残し報告すること。
 ここでいう「求める力量」とは、製造業者が配属部署の作業内容に必要とされる事項を決めることであり、例えば、以下のように区分できる。
① 未経験及び業務実施不適
② 指導者のもとで業務ができる(資格/免許がない)
③ 標準とおり業務ができる
④ 他の人を指導できる
 なお、「教育訓練手順書」等の手順書が既に策定さている場合は、新たに手順書を策定する必要はなく、本ガイドラインに基づく事項を追加することでよい。
 輸入業者、製造業者及び販売業者は、有害物質の混入及び増加を防止するため、飼料等の輸送及び保管に関する手順書を作成する。
【解説】
 本手順書は、それぞれに係わる行為が、あらかじめ定められた責任と権限のもとで確実に行わせることを目的として定めるものである。
 手順書は、輸送及び保管中に有害物質の混入及び増加の恐れのある場所・行為をリストアップし、リスクを評価して、リスクを回避する手段を織込んだものとする。
 適切な管理を行う限り、有害物質が混入あるいは増加することはまず考えられない。飼料以外の有害物質混入のリスクが高い物品を同一倉庫で保管する場合あるいは前荷で有害物質混入のリスクが高い物品を車両・船舶等により輸送する場合は、有害物質が混入しないための未然防止措置を規定する手順書の策定と手順書に基づいた確実な業務の遂行が必要となる。
 なお、「輸送手順書」や「保管手順書」等の手順書が既に策定されている場合は、新たに手順書を策定する必要はなく、本ガイドラインに基づく事項を追加することでよい。
 なお、平成20年度に実施する「流通飼料対策事業」において、手順書のひな型を示すこととしている。
 輸入業者、製造業者及び販売業者は、定めた手順書に基づき飼料等の輸送及び保管を行う。
【解説】
 手順書を逸脱する事態や行為及び手順書で想定したリスクが発生する恐れが生じた場合は、速やかに、手順書に定めた責任者に連絡をして適切な処置を講じること。
 輸入業者、製造業者及び販売業者は、委託により自ら輸送及び保管の業務を行わない場合には、必要に応じて有害物質の混入及び増加を防止するため、輸送業者及び倉庫業者が手順書に基づき業務管理を行う旨の確認を文書により行う。
【解説】
 輸送及び保管業務を委託する場合は、第8の1で定めた手順書に基づき、委託先に輸送及び保管業務を行わせることが必要であり、その手順書に基づき業務管理を行う旨の確認を文書で行っておくことが必要である。
 また、手順書に基づいた業務管理が行われていることを適時確認することも必要である。
 受託業者が飼料以外の有害物質混入のリスクが高い物品を同一倉庫で保管する場合あるいは前荷で有害物質混入のリスクが高い物品を車両・船舶等により輸送する場合は、有害物質が混入しないための未然防止措置を規定する手順書の策定と手順書に基づいた確実な業務の遂行が必要となる。
 なお、受託業者が「反すう動物用飼料への動物由来たん白質の混入に関するガイドライン」に基づくマニュアル等の文書を策定している場合は、新たに輸送あるいは保管に関する文書の策定を受託業者に依頼する必要はなく、本ガイドラインに基づく事項を追加することでよい。
 農林水産省が、有害畜産物の生産又は家畜等への被害のおそれがあると判断した場合に、輸入業者、製造業者及び販売業者は、以下の対応を行う。
 当該製造ロットに該当する飼料等の取扱いの有無を点検し、取扱いが確認された場合には出荷先に直ちに通報し、販売や使用の停止を要請するとともに、回収を行う。また、このことを可能な限り速やかに畜水産安全管理課及び供給元に通報し、回収した飼料等の処理の概要をセンターを通じて畜水産安全管理課に報告する。
 通報を受けた供給元は、該当する飼料等の全ての販売先に直ちに通報し、販売や使用の停止を要請するとともに、回収を行う。また、回収した飼料等の処理の概要をセンターを通じて畜水産安全管理課に報告する。
 さらに、該当する飼料等が畜産農家等に出荷されている場合には、直ちに相談窓口を設置し、畜水産物の安全性確保に努める。
 この場合に該当する飼料等の取扱いの有無を点検し、取扱いが確認された場合には出荷先に直ちに通報し、販売や使用の停止を要請するとともに、当該飼料等について有害物質の分析を実施する。また、このことを可能な限り速やかに畜水産安全管理課及び供給元に通報する。
 通報を受けた供給元は、該当する飼料等の全ての販売先に直ちに通報し、販売や使用の停止を要請する。
 分析の結果、有害物質が検出された場合には、畜水産安全管理課及び供給元に当該飼料等について速やかに報告するとともに、供給元を含む関係業者は出荷先から当該飼料等と同一の製造ロットに該当する飼料等を回収する。また、回収した飼料等の処理の概要をセンターを通じて畜水産安全管理課に報告する。
 さらに、該当する飼料等が畜産農家等に出荷されている場合には、直ちに相談窓口を設置し、畜水産物の安全性確保に努める。
【解説】
 農林水産省が飼料の使用が原因となって有害畜産物の生産等のおそれがあると判断した場合の輸入業者、製造業者及び販売業者の原則的な対応を記載している。実際の場面では、個別の状況を勘案した具体的対応を併せて指示されることになる。
 飼料等の輸入業者及び製造業者は、毎年7月31日までに別記様式により前年度の輸入又は製造の数量を畜水産安全管理課に電子メール、ファックス等により報告する。
 なお、農林水産省に対して既に同様の報告を行っている場合には、上記の報告は不要とする。
【解説】
 畜水産安全管理課は、飼料等が原因となって食品の安全性確保に問題が生じるおそれがある等の緊急時に、この報告をもとに該当する輸入業者等を絞り込み、センターに対してこれら業者に電子メール、ファックス等により優先的に情報を提供するよう指示する。
〔資料〕基準値が定められている飼料等
  • (農薬関係)
  • (重金属関係)
  • (かび毒関係)
    • 飼料の有害物質の指導基準の制定について」(昭和63年10月14日付け、63畜B第2050号、農林水産省畜産局長通知、平成20年1月31日最終改正)
    • 「ゼアラレノンの検出について」(平成14年3月25日付け、13生畜第7269号、農林水産省生産局畜産部飼料課長通知)
    • 「飼料中のデオキシニバレノールについて」(平成14年7月5日付け、14生畜第2267号、農林水産省生産局畜産部飼料課長通知)

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