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飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令等の施行について

26消安第2204号
平成26年7月23日

農林水産省消費・安全局長

飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令等の施行について

 飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令(平成26年農林水産省令第44号。以下「改正省令」という。)、組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の安全性に関する確認の手続を定める件の一部を改正する件(平成26年農林水産省告示第1006号。以下「改正確認手続告示」という。)及び組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の製造基準を定める件の一部を改正する件(平成26年農林水産省告示第1007号。以下「改正製造基準告示」という。)が平成26年7月23日付けで公布及び告示され、同日付けで施行されました。
 本改正について、下記事項に留意の上、関係者に対する周知徹底につき御協力お願いします。



第1 改正の経緯
 厚生労働省は、6月27日付けで食品衛生法(昭和22年法律第233号)第11条第1項の規定に基づき定められている組換えDNA技術応用食品及び添加物に係る規格基準及び安全性審査について、組換えDNA技術の対象となる範囲を明確にするための関係告示の改正を行った。この厚生労働省における食品等に係る取扱いや国際的な動向を踏まえ、当省においても「飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令」(昭和51年農林省令第35号。以下「成分規格等省令」という。)、「組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の安全性に関する確認の手続」(平成14年農林水産省告示第1780号。以下「確認手続告示」という。)及び「組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の製造基準」(平成14年農林水産省告示第1782号。以下「製造基準告示」という。)を定める件について、農業資材審議会及び食品安全委員会における審議等を経て、同様の趣旨の改正を行った。

第2 改正の内容
 成分規格等省令に規定されている「組換えDNA技術」から、生細胞に移入された組換えDNAが当該生細胞と同一の分類学上の種に属する微生物のDNAのみから成るようにする技術(以下「セルフクローニング」という。)及び組換えDNAが移入された生細胞の遺伝子の構成が自然界に存在する微生物の遺伝子の構成と同等となるようにする技術(以下「ナチュラルオカレンス」という。)を除外し、これらに該当する技術を用いて得られた微生物を利用して製造された飼料及び飼料添加物を安全性確認の対象外となるよう改正した。また、これまでは、確認手続告示及び製造基準告示において、セルフクローニングのみを安全性確認の対象外としていたものを、今回の成分規格等省令の改正においてセルフクローニング及びナチュラルオカレンスを安全性確認の対象外とするため、確認手続告示及び製造基準告示においても所要の改正をした。

第3 施行期日
 改正省令、改正確認手続告示及び改正製造基準告示は、公布の日(平成26年7月23日)から施行する。

第4 運用上の注意
(1)これまで、飼料及び飼料添加物が、セルフクローニング又はナチュラルオカレンスに該当する技術を用いて得られた微生物を利用して製造されたものであるか否かについては、その全てを農業資材審議会(遺伝子組換え飼料部会)において判断してきたところである。今後は、このうちセルフクローニング又はナチュラルオカレンスに該当することが明らかであるものを、製造業者、輸入業者又は販売業者(以下「事業者」という。)が自主確認できるようにするため、「セルフクローニング又はナチュラルオカレンスに該当することが明らかであると判断できる基準」(以下「判断基準」という。別添参照)を定めることとする。事業者は、自主確認により、判断基準における全ての項目を満たす場合には、安全性確認は不要とする。ただし、この場合、事業者は判断基準の全ての項目を満たしていると判断した根拠となる資料を保管するものとする。
(2)判断基準のいずれかの項目を満たさない場合又は安全性確認を得る必要性について疑義がある場合には、事業者は農林水産省(畜水産安全管理課)に相談すること。

セルフクローニング又はナチュラルオカレンスに該当することが明らかであると判断できる基準

Ⅰ 対象となる飼料及び飼料添加物
 微生物を利用して製造された飼料又は飼料添加物(以下「飼料等」という。)の使用形態、摂取量等が、これまで飼料等として、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号)の家畜等(牛、豚、鶏、ぶり、まだい等の養殖魚等)に使用された経験(以下「使用経験」という。)の範囲内である場合を対象とする。

Ⅱ 基準
1 宿主が、従来から使用経験又は飼料等の製造に用いられた実績がある微生物であり、病原性及び毒素産生性を有しないこと。

2 挿入DNA産物が、使用経験又は飼料等の製造に用いられた実績があるものであり、病原性及び毒素産生性を有しないこと。また、挿入DNAの供与体が病原性及び毒素産生性を有しないこと。

3 飼料等の生産に用いる微生物について、その遺伝子構成を有する微生物が自然界に存在すると認められる科学的な根拠があること。具体的には、次の(1)又は(2)に該当することが、①から③までのいずれかにより確認されること。

(1)組換え体における挿入DNAの供与体と宿主が同一の種に属する場合。
(2)供与体及び宿主が別種と分類されている微生物である場合であって、学術論文等により自然界において両者の間で遺伝子交換が起きていることが明らかになっており、組換え体における挿入DNAの供与体と宿主がこの両種に属する場合。

① 査読のある論文に公表されている
② 学会のポジションペーパー等、複数の専門家により根拠のあるものとして紙面にまとめられている
③ 関連する国の審議会、検討会等において、複数の専門家によりコンセンサスが得られている

 なお、(2)にあっては、宿主が属する種及び供与体が属する種の組合せについて、農業資材審議会が、組換え体と同等の遺伝子構成をもつ微生物が自然界に存在する場合に該当すると判断したものであること。

4 挿入DNAにおいて、使用経験又は飼料等の製造に用いられた実績を有するたん白質と比較して、アミノ酸配列の変更を伴う塩基置換や塩基配列の付加及び欠失がないこと。

5 発現プラスミドの形で目的遺伝子を導入する場合においては、その遺伝子構成を有する微生物が自然界に存在すると認められる科学的な根拠があること。具体的には、次の(1)又は(2)に該当することが、①から③までのいずれかにより確認されること。

(1)発現プラスミドにおける挿入DNAの供与体と宿主、発現プラスミドが由来する微生物が同一の種に属する場合。
(2)発現プラスミドにおける挿入DNAの供与体、宿主及び発現プラスミドが由来する微生物が別種と分類されている微生物である場合であって、学術論文等により自然界においてこれらの間で遺伝子交換が起きていることが明らかになっており、組換え体における挿入DNAの供与体、宿主及び発現プラスミドが由来する微生物がこれらの種に属する場合。

① 査読のある論文に公表されている
② 学会のポジションペーパー等、複数の専門家により根拠のあるものとして紙面にまとめられている
③ 関連する国の審議会、検討会等において、複数の専門家によりコンセンサスが得られている

 なお、(2)にあっては、宿主が属する種、供与体が属する種及び発現プラスミドが由来する微生物が属する種の組合せについて、農業資材審議会が、組換え体と同等の遺伝子構成をもつ微生物が自然界に存在する場合に該当すると判断したものであること。

6 生産菌株の構築段階で異種由来ベクターを使用した場合においては、(1)又は(2)に該当することが確認できること。

(1)最終的にベクター由来配列が除かれていること。
(2)リンカー配列等としてDNA配列が残存する場合、これを含む領域が転写されないこと。

セルフクローニング又はナチュラルオカレンスのいずれかに該当することが明らかであると判断できる基準に係る留意事項

(参考)


Ⅰ 対象となる飼料及び飼料添加物
 微生物を利用して製造された飼料又は飼料添加物(以下「飼料等」という。)の使用形態、摂取量等が、これまで飼料等として、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の家畜等(牛、豚、鶏、ぶり、まだい等の養殖魚等)に使用された経験(以下「使用経験」という。)の範囲内である場合を対象とする。

○ 対象となる飼料等としては、主に①微生物を用いて製造される飼料添加物(アミノ酸、ビタミン、酵素等)が想定されますが、②微生物そのものを含む飼料(飼料用酵母、ホールクロップサイレージ等)も対象となります。
 なお、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号。以下「飼安法」という。)では、次のものは製造、使用等が禁止されていますので、当然ながら、この点にも該当しないことが前提となります。
 該当するか不明な場合は、個別事案ごとに畜水産安全管理課へ相談してください。
● 飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令(昭和51年農林省令第35号)で定められた、基準又は規格に合わない飼料等(飼安法第4条)
● 有害な物質を含み、又はその疑いがある飼料等(飼安法第23条)
● 病原微生物により汚染され、又はその疑いがある飼料等(同上)
● 使用の経験が少ないため、有害でない旨の確証がないと認められる飼料(同上)

○ 「使用経験」については、文献等から情報を入手すること等により確認できます。

Ⅱ 基準
1 宿主が、従来から使用経験又は飼料等の製造に用いられた実績がある微生物であり、病原性及び毒素産生性を有しないこと。

○ 「使用経験又は飼料等の製造に用いられた実績がある微生物」であることは、飼料等の製造における生産菌として多数の使用経験があること、長期にわたり飼料等の製造に安全に使用されている実績があること等により確認できます。

○ 「病原性及び毒素産生性を有しないこと」は、ヒトに加え、家畜等に対するものを考慮することとし、次の①及び②に該当すること等で確認できます。なお、病原性及び毒素産生性は、系統株により異なる場合があるため、系統株のレベルで確認してください。

① 国立感染症研究所病原体等安全管理規程におけるバイオセーフティレベル1
② 「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」(平成16年文部科学省・環境省令第1号)で規定する実験分類のクラス1

2 挿入DNA産物が、使用経験又は飼料等の製造に用いられた実績があるものであり、病原性及び毒素産生性を有しないこと。また、挿入DNAの供与体が病原性及び毒素産生性を有しないこと。

○ 「挿入DNA産物」とは、挿入されたDNAによって組換え体内に発現したたん白質、核酸及びそれらに由来するものを想定しています。

○ 「挿入DNA産物の使用経験等」については次の①又は②を確認してください。

① 「挿入DNA産物」が、飼料等として直接使用される場合は、長期にわたり飼料等として家畜等に安全に使用されている経験があること
② 「挿入DNA産物」が飼料等の製造のみに使用され、飼料等の成分としては使用されない場合は、長期にわたり飼料等の製造に安全に使用されている実績があること

○ 「挿入DNA産物」が「病原性及び毒素産生性を有しないこと」については、我が国での飼料添加物としての指定の有無や諸外国における許可・使用の状況等、飼料等として安全に使用されている経験があることを確認してください。
 さらに、挿入DNA供与体が病原性及び毒素産生性を有しないことを確認してください。なお、このことは、Ⅱ 基準の1と同様の方法で確認できます。

3 飼料等の生産に用いる微生物について、その遺伝子構成を有する微生物が自然界に存在すると認められる科学的な根拠があること。具体的には、次の(1)又は(2)に該当することが、①から③までのいずれかにより確認されること。
(1)組換え体における挿入DNAの供与体と宿主が同一の種に属する場合。
(2)供与体及び宿主が別種と分類されている微生物である場合であって、学術論文等により自然界において両者の間で遺伝子交換が起きていることが明らかになっており、組換え体における挿入DNAの供与体と宿主がこの両種に属する場合。
① 査読のある論文に公表されている
② 学会のポジションペーパー等、複数の専門家により根拠のあるものとして紙面にまとめられている
③ 関連する国の審議会、検討会等において、複数の専門家によりコンセンサスが得られている
 なお、(2)にあっては、宿主が属する種及び供与体が属する種の組合せについて、農業資材審議会が、組換え体と同等の遺伝子構成をもつ微生物が自然界に存在する場合に該当すると判断したものであること。

○ 「自然界に存在すると認められる科学的な根拠があること」とは、理論的に自然界に存在し得ることを示す科学的な根拠があることを確認してください。なお、全く同じ遺伝子構成を有する微生物の存在を示す必要はありません。

○ (1)はセルフクローニング、(2)はナチュラルオカレンスを示しています。

○ (2)に該当する挿入DNAの供与体と宿主の組合せについては、なお書きにあるように、農業資材審議会(遺伝子組換え飼料部会)において「組換え体と同等の遺伝子構成をもつ生細胞が自然界に存在する場合」に該当すると判断された組合せとしています。
 挿入DNAの供与体と宿主の組合せがこれらと異なる場合は、自主判断できる対象とならないので、遺伝子組換え飼料部会による該当性の判断を受けてください。遺伝子組換え飼料部会において、(2)に該当すると判断された組合せ事例は、農林水産省のホームページに掲示します。

○ 食品等で、食品安全委員会がナチュラルオカレンスと判断している場合であっても、飼料等として使用経験のないものは、ナチュラルオカレンスの該当性を遺伝子組換え飼料部会において判断します。なお、遺伝子組換え飼料部会での判断の際には、食品安全委員会が判断に用いた資料を利用することもできます。

4 挿入DNAにおいて、使用経験又は飼料等の製造に用いられた実績を有するたん白質と比較して、アミノ酸配列の変更を伴う塩基置換や塩基配列の付加及び欠失がないこと。

○ 「アミノ酸配列の変更」とは、たん白質のアミノ酸配列におけるアミノ酸の置換や付加、欠失をいいます。

○ たん白質の機能を失わせるために、完全にたん白質が翻訳されないよう塩基配列を欠失させた場合は、「使用経験を有するたん白質と比較して、アミノ酸配列の変更を伴う塩基置換や塩基配列の付加及び欠失がない」と判断して問題ありません。

5 発現プラスミドの形で目的遺伝子を導入する場合においては、その遺伝子構成を有する微生物が自然界に存在すると認められる科学的な根拠があること。具体的には、次の(1)又は(2)に該当することが、①から③までのいずれかにより確認されること。
(1)発現プラスミドにおける挿入DNAの供与体と宿主、発現プラスミドが由来する微生物が同一の種に属する場合。
(2)発現プラスミドにおける挿入DNAの供与体、宿主及び発現プラスミドが由来する微生物が別種と分類されている微生物である場合であって、学術論文等により自然界においてこれらの間で遺伝子交換が起きていることが明らかになっており、組換え体における挿入DNAの供与体、宿主及び発現プラスミドが由来する微生物がこれらの種に属する場合。
① 査読のある論文に公表されている
② 学会のポジションペーパー等、複数の専門家により根拠のあるものとして紙面にまとめられている
③ 関連する国の審議会、検討会等において、複数の専門家によりコンセンサスが得られている
 なお、(2)にあっては、宿主が属する種、供与体が属する種及び発現プラスミドが由来する微生物が属する種の組合せについて、農業資材審議会が、組換え体と同等の遺伝子構成をもつ微生物が自然界に存在する場合に該当すると判断したものであること。

○ 基本的な考え方はⅡ 基準の3と同様です。なお、遺伝子組換え飼料部会において、(2)に該当すると判断された組合せ事例は、農林水産省のホームページに掲示します。

○ 「発現プラスミド」とは、新たな性質を付与するために構築された挿入DNAを含むDNA配列であって、宿主の染色体に組み込まれず、組換え体内に独立して存在するものをいいます。

6 生産菌株の構築段階で異種由来ベクターを使用した場合においては、(1)又は(2)に該当することが確認できること。
(1)最終的にベクター由来配列が除かれていること。
(2)リンカー配列等としてDNA配列が残存する場合、これを含む領域が転写されないこと。

○ 「異種由来ベクター」とは、Ⅱ 基準の3又は5を満たすことが確認された宿主、挿入DNAの供与体及び発現プラスミドが由来する微生物のいずれにも該当しない種に属する微生物に由来するベクターをいいます。

○ 「リンカー配列等としてDNA配列が残存する場合」とは、マルチクローニングサイトや制限酵素認識部位等を含む異種由来ベクターに存在する僅かな塩基数のDNA配列が組換え体のゲノムDNAや発現プラスミドに存在する場合をいいます。

○ 「ベクター由来配列が除かれていること」や「リンカー配列等としてDNA配列が残存する」ことは、サザンブロット分析、DNA配列解析等により確認できます。

○ 「これを含む領域が転写されない」ことは、ノーザンブロット分析、RT-PCR分析等で確認できます。

その他

○ Ⅱの基準の項目をすべて満たすと判断した場合にあっても、常に新たな知見の収集に努め、定期的に判断の妥当性を確認してください。その結果、新たに、同基準のいずれかの項目を満たすと判断できないことが疑われる知見が得られた場合には、直ちに、飼料等の製造、販売等を中止するとともに、畜水産安全管理課宛てに連絡してください。

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