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肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)

1 総則

1.1 原子量

 この分析法において採用する各元素の原子量は、付録原子量表(1991年)による。

1.2 重さ及び体積

 この分析表において「正確に」操作する(「とる」「加える」など)とは、重さの場合には化学はかりを用いて1mgまで正しく量り、体積の場合にはホールピペット、ビュレットまたはメスフラスコを用いて正しく量ることをいう。また重さ及び体積の数量の前に「約」と記載してある場合には、簡易な計量器(上皿はかり、メスシリンダーなど)を用いて量るものとする。

1.3 温度

1)標準温度は20℃、常温は15~25℃、室温は1~35℃とする。
2)冷所は特に指定するもののほかは、1~15℃の場所とする。
3)温水はおおよそ40~60℃、熱水は60℃以上、冷水は15℃以下の水とする。
4)「水浴上(または水浴中)で加熱(または蒸発)する」とは、特に指定するもののほかは、沸騰水を用いて100℃近くで加熱(または蒸発)することをいう。

1.4 試薬

1)この分析法において使用する試薬はすべて化学薬品であって、特に指定する試薬のほかは、日本工業規格(以下JISと略す)に合格するものまたはそれに相当する純度のものとする。ただし、亜鉛、水銀、鉛などの微量元素の定量には精密分析用などの純度の高いものを使用する必要がある。
2)この分析法において使用する酢酸、塩酸、過塩素酸、硝酸、リン酸、硫酸及びアンモニア水は、特に指定するものを除き、次の濃度のものとする。
 酢    酸 比重1.05(CHCOHとして99~100%)
 塩    酸 比重1.18(HClとして約35%)
 過 塩 素 酸  比重1.55(HClOとして60~62%)
 硝    酸 比重1.38(HNOとして60~62%)
 リ  ン  酸 比重1.69(HPOとして約85%)
 硫    酸 比重1.84(HSOとして約95%)
 アンモニア水 比重0.90(NHとして約28%)
3)この分析法において表示する試薬の量は、特に記載するものを除き、すべて結晶水を持つものは結晶水を含む重さとする。
4)この分析法において用いる水は、蒸留水または脱塩水(イオン交換によって精製した水)とする。
5)この分析法において記載する試薬液は、特に溶媒を指定するものを除き、水溶液とする。
6)この分析法においては、液体試薬の希釈割合を表すのに(a+b)をもって略示する。この場合数字aは原試薬の容積、数字bは水の容積を示す。
7)この分析法におけるアルコールとはエチルアルコールをいい、記載する濃度は体積パーセントを表わし、単にアルコールというのは無水のもの(99.5%以上)とする。
8)この分析法において、溶液の濃度を示す場合、例えば0.1M(1/5KMnO)また0.5M(1/2硫酸)として記載されている濃度の0.1Mは0.1規定また0.5Mは0.5規定を示す(Mはmol/lの略記号である)。

1.5 機器による分析

 原子吸光測光法などの機器を使った分析においては、JIS分析法通則(例えば原子吸光測光法ではJIS K 0121)及び機器の取扱い説明書などにより測定の最適条件をあらかじめ設定しておく必要がある。この分析法に示した測定条件や濃度範囲などは一例を示したものであり、機器によってはかなり変動があることに留意しなければならない。

1.6 用語

 この分析法において使用する用語は主として「文部省 学術用語集 化学編」によった。
 そのため肥料取締法関連法令中の用語と異なるところがある。

2 サンプリング

2.1 採取法

1)かます・俵・袋・かんなどで包装された肥料について試料を採取する場合には、その内容物の全部を清浄な床上または適当な器物に移し、よく混合したのち二分器による方法、インクリメント縮分法(JIS M 8100に準ずる。)または円すい四分法により縮分して少量とし(200g以上であることを要する)、これをガラス瓶または適当な容器に密封する。
 ただし刺しをもってその肥料を代表する試料を採取できるものと認められるときは、容器の四すみからそれぞれの対角線に沿って、二重さやの刺しをもって試料を採取してもよい。
2)固塊状の肥料(油かす類・肉かすなど)の1個について試料を採取する場合には、その全部若しくは数個所を破砕し、清浄な床上または適当な器物に移してよく混合したのち、1)により縮分して少量とし(200g以上であることを要する)、これをガラス瓶または適当な容器に密封する。
3)液状肥料の容器1個について試料を採取する場合には、内容物をよく混合したのちその一部を採取し(200g以上であることを要する)、これをガラス瓶または適当な容器に密封する。
4)前記各項に記載の肥料でその2個以上について全部を代表する試料を採取する場合には、総数5個以下の時は全部、6~50個のときは4~6個、51~100個のときは5~8個、101~500個のときは6~10個、501個以上のときは8~15個をそれぞれ無作為に抽出し、これらについて前記の各項により各個別に等量の試料を採取し、これらを集めてよく混合したのち、液状肥料ではその一部を採取し(200g以上であることを要する)、その他の肥料ではさらに前記1)により縮分して少量とし(200g以上であることを要する)、これをガラス瓶または適当な容器に密封する。
5)ばら積み肥料について試料を採取する場合には、その集積が1t未満のときは4~6個所、1t以上2t未満のときは5~8個所、2t以上5t未満のときは6~10個所、5t以上10t未満のときは8~15個所、10t以上のときは8~20個所からそれぞれ無作為に採取し、清浄な床上または適当な器物に移してよく混合したのち、前記1)により縮分して少量とし(200g以上であることを要する)、これをガラス瓶または適当な容器に密封する。

2.2 調製法

 試料は、特に記載するものを除いて、次に記載する各項により調製し、共栓ガラス瓶または気密な容器に貯蔵し分析試料とする。
 試料の調製は努めて操作を迅速にし、試料の水分に増減のないようにする。
 試料の調製に使用するふるいはJISに定められた標準網ふるいまたはそれに相当するふるい目のものとする。一般に調製に際してはまずふるいを通したのち、ふるい上の部分のみを粉砕して(ふるいを通る程度とし、激しい粉砕は避ける)ふるいを通し、この操作を反復してふるいを全通させる。
1)試料が乾燥している場合には、次に記載する肥料を除き、前記の方法により粉砕して500μmの網ふるいを通してよく混合する。
i)粉砕するとき粘性を帯びふるい分けの困難なものは、単に粉砕してよく混合すればよい。
ii)毛くず・羽毛・綿実殻などは、はさみまたは裁断器で微細に切断してよく混合する。
iii)熔成リン肥・焼成リン肥・ケイ酸質肥料・石灰(カルシウム)質肥料・苦土(マグネシウム)肥料などは、212μmの網ふるいを通してよく混合する。
2)試料が湿潤な場合には、その全量または混合してその約500gをとり、重さを量って日乾または低温で十分に乾燥し、更に室内に一昼夜放置して風乾状態とし再び重さを量ったのち、前記1)の方法により試料を調製してその分析値は原品の含量に換算する。
 ただしたい肥等で現物を供試する場合には、湿潤のまま切断または破砕したのち、よく混合する。
3)ふん尿のような液状の試料は、よくかき混ぜて2.8mmの網ふるいを通す。
4)分析の目的とする成分を含有しない粗大な混在物がある場合は、まずこれを除去し、重さを量って原品に対するその比率を調べ、分析値は原品の含量に換算する。

3 水分、灰分、pH及び電気伝導率

3.1 水分

3.1.1 加熱減量法

A 適用範囲
 本法は肥料及び肥料原料中の水分の定量に適用される。水分としては、付着水を対象とするものであるが、実際には一定の加熱条件下で失われる水分はすべてこの範囲に含まれる。
B 装置
定量乾燥器 指示された温度を±1℃の範囲で保持できるものとする。
C 定量
 分析試料2~5gを平形量り瓶(径5cm、高さ3cmのもの)に正確にとり、100℃で5時間乾燥して重さを正確に量り、その減量を水分とする。
 ただし次に記載する肥料では各項記載の方法による。
1)過リン酸石灰、重過リン酸石灰及びこれらを含有する肥料
 分析試料5gを平形量り瓶に正確にとり、100℃で3時間乾燥して重さを正確に量り、その減量を水分とする。
2)硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム及びカリウム塩類
 分析試料2~5gを平形量り瓶に正確にとり、130℃で恒量に達するまで乾燥して重さを正確に量り、その減量を水分とする。
 ただしマグネシウム塩を多量に含有するカリウム塩では加熱の際に塩化水素の逸散することがあるので、このような場合にはあらかじめ乾燥した酸化鉛(PbO)で覆って乾燥する。
3)揮発物を含有する肥料
 分析試料2~5gを平形量り瓶に正確にとり、100℃で5時間乾燥して重さを正確に量り、その減量を水分及び揮発物の合量とし、別に揮発物を定量し、両定量値の差を水分とする。例えばグアノまたはリン酸二アンモニウムを含有する肥料では処理前後の窒素全量を定量してその差をアンモニア(NH)に換算してこれを揮発物の量とし、また炭酸水素カリウム(重炭酸加里)では処理前後の二酸化炭素(CO)を定量してその差を揮発物の量とする。
4)液状の肥料
 ケイ砂(あらかじめ塩酸で浸出し水でよく洗い乾燥・強熱したもの)約10gを蒸発皿にとり、100℃で乾燥して重さを正確に量ったのち、これに分析試料5~20gを加えケイ砂に吸収させて再び重さを正確に量り水浴上で蒸発し、次に100℃で恒量に達するまで乾燥して重さを正確に量り、その減量を水分とする。
 ただし揮発物を含有する場合には、前記3)のように別に揮発物を定量して結果を補正しなければならない。
5)尿素及び尿素を含有する肥料
 分析試料5gを平形量り瓶に正確にとり、75℃で4時間乾燥して重さを正確に量り、その減量を水分とする。
 ただし揮発物を含有する場合には、前記3)のように別に揮発物を定量して結果を補正しなければならない。

3.2 灰分

3.2.1 強熱灰化法

A 適用範囲
 有機質肥料その他有機物を含有する肥料に適用する。
B 装置
 電気マッフル炉
C 定量
 分析試料2gを磁製るつぼに正確にとり、水分を蒸発させたのち電気マッフル炉に入れ、穏やかに加熱して炭化させたのち約550℃とし、同温度に4時間以上保ち、完全に灰化する。灰化後の重さを正確に量り、灰分の量とする。

3.3 pH

3.3.1 ガラス電極法

A 適用範囲
 肥料の水処理液中の水素イオン濃度を示す。試料-溶媒比でpHの値は変動することも考えられるので、測定条件を明示することが必要である。
B 装置
 pH計 ガラス電極(JIS Z 8802 参照)。
C 試薬液の調製
1)標準フタル酸塩液 フタル酸水素カリウム〔KHC(COO)JIS K 8809のpH測定用試薬を110℃で乾燥したものがよい〕10.21gを水に溶かして1000mlとする(0.05M溶液)。25℃でのpHは4.01である。
2)標準中性リン酸塩液 リン酸二水素カリウム(KHPOJIS K 9007のpH測定用試薬を110℃で乾燥したものがよい)3.40gとリン酸二水素ナトリウム(NaHPOJIS K 9020のpH測定用試薬を110℃で乾燥したものがよい)3.55gとを水に溶かして1000mlとする(両塩ともに0.05M溶液)。25℃でのpHは6.86である。
D 試料液の調製
 分析試料(風乾しない現物)の一定量(乾物として10g相当量)を200~300ml容の三角フラスコまたは250mlのメスフラスコにとり、水100ml(湿潤な分析試料の場合には、含有する水分の量(ml)だけ減ずる)を加え、1分間30~40回回転の振り混ぜ機で30分間振り混ぜる。
E 定量
 試料液(懸濁液)の一部を小型ビーカーにとり、あらかじめpH標準緩衝液を用いて調整されたpH計により、そのpHを測定する。
(付記)上記以外のpH標準緩衝液及び異なった温度でのpHについては、JIS Z 8802を参照すること。

3.4 電気伝導度

3.4.1 電気伝導率計法

A 適用範囲
たい肥、汚泥肥料等の有機肥料の塩類濃度の程度を測定する。
B 装置
 電気伝導率計
C 試料液の調製
D 定量
 試料液(懸濁液)の一部に電気伝導率計の電極を浸して電気伝導率(EC)を測定し、25℃における値に補正し(補正表は各計器に附属)、mS/cmの単位で表示する。

4 主成分

4.1 窒素

4.1.1 窒素全量

4.1.1.1 硫酸法(硝酸性窒素を含有しない場合)

A 適用範囲
 窒素を含有する肥料及び肥料原料を対象とするが、硝酸塩を含有する場合にはその中の窒素は定量されず、更に他の形態の窒素をも損失し低値となるため、あらかじめその存否を確かめ、存在するときには、4.1.1.2または4.1.1.3による必要がある。
B 試薬液の調製
1)標準水酸化ナトリウム液
 水酸化ナトリウムの0.1~0.2M溶液を作成し、標準試薬アミド硫酸(スルファミン酸)(NHSOH;減圧硫酸デシケーター中で約48時間乾燥したもの)を使用し、ブロムチモールブルーを指示薬としてその濃度を標定し1mlに相当する窒素(N)の量を算出する。
2)標準硫酸液
 0.5M(1/2硫酸)溶液を作成し、メチルレッドを指示薬として標準水酸化ナトリウム液で、または次の方法(塩化バリウム法)により、その濃度を標定する。
 作成した硫酸液10mlをトールビーカーに正確にとり、水で約300mlに希釈し塩酸約1mlを加えて時計皿で覆い沸騰するまで加熱する。別に加熱した塩化バリウム液を当量よりやや過剰に滴下し、水浴上で2~3時間加熱し沈殿を熟成させる。沈殿は細密なろ紙でろ過し熱水で洗浄し、乾燥・強熱したのち重さを正確に量り、これに係数0.4202を乗じて硫酸(HSO)の量とする。
3)塩化バリウム液
 塩化バリウム(BaCl・2HO)100gを水に溶かして1000mlとする。
4)指示薬
i)ブロムチモールブルー
 ブロムチモールブルー0.1gを20%アルコールに溶かして100mlとする。
ii)メチルレッド
 メチルレッド0.2gを90%アルコールに溶かして100mlとし、必要があればろ過する(これにメチレンブルー0.1gを90%アルコールに溶かして100mlとしたものを同量混合して用いてもよい)。
C 試料液の調製
 分析試料0.5~5gを分解フラスコに正確にとり、分解促進剤〔硫酸銅1部と硫酸カリウム9部とを混合したもの約10g、または二酸化セレン(SeO)1部と硫酸銅1部と硫酸カリウム8部とを混合したもの1~2g以下〕を加え、次に硫酸20~40mlを加えよく振り混ぜて分解台に移し、最初徐々に加熱して泡が生じなくなってから(泡の発生が激しいものはパラフィンの小片を加えて防止する)強熱して完全に分解させたのち放冷する。
(付記)
1.石灰窒素では、分析試料を分解フラスコに正確にとり、少量の水で潤し、次に硫酸20~40mlを加えてよく振り混ぜて分解台に移し、最初徐々に加熱して泡が生じなくなってから分解促進剤を加え、1~3時間強熱する。
2.尿素では、分析試料5gを分解フラスコに正確にとり、硫酸約25mlを加えよく振り混ぜて分解台に移し、最初徐々に加熱して泡が生じなくなってから強熱し、約10分後加熱をやめて放冷する。
D 定量
 試料液の全量、またはこれを水で250~500mlに正確に希釈した液の一定量を、蒸留フラスコに正確にとり、適量の水を加え次に強アルカリ性とするのに十分な量の水酸化ナトリウムの濃厚液と少量の粒状亜鉛とを加えて、標準硫酸液の一定量(通常10~20ml)を正確に入れた受器を接続した蒸留装置に連結し、加熱して蒸留フラスコの内容液の2/3を留出するまで蒸留したのち、留出液に指示薬としてメチルレッドを加えて標準水酸化ナトリウム液で滴定し窒素(N)の量を算出する。
 標準水酸化ナトリウム液1ml=同液の濃度(M)×14.007mgN
 水蒸気蒸留を行う場合には、試料液の一定量を200~250ml容の蒸留フラスコに正確にとり、水酸化ナトリウムの濃厚液を添加して、5分間に約30ml留出する程度の水蒸気で約15分間蒸留する。蒸留フラスコの液量が130ml以上になるときは、蒸留に際し蒸留フラスコを加熱して窒素の留出を完全にすることが必要である。
(付記)
 蒸留されるアンモニアの量が少ない(おおむねNとして20mg以下)場合には、標準硫酸液の一定量の代わりに4%ホウ酸液(ブロムクレゾールグリーン0.5gとメチルレッド0.1gを95%アルコール100mlに溶かした混合指示薬を0.5%加え、希水酸化ナトリウム液で微青緑色とする)10~15mlを用いて蒸留し、0.1M(1/2硫酸)の標準硫酸液で滴定し窒素(N)の量を算出してもよい。

4.1.1.2 デバルダ合金-硫酸法(硝酸性窒素を含有する場合)

A 適用範囲
 硝酸性窒素を含有する試料を対象とする。液状の肥料や塩化物を含有する試料にも適用できる。
B 試薬液の調製
C 試料液の調製
1)硝酸塩肥料
 分析試料1~3gを250mlのメスフラスコに正確にとり、水を加えて溶かし標線まで水を加え、その一定量(硝酸性Nとして50mg以下)を分解フラスコ(直接全量を蒸留する場合には容量800ml前後のものがよい)に正確にとり、塩酸(1+1)60ml、塩化スズ(Ⅱ)(SnCl・2HO)2gを加え振り混ぜて溶かし約20分間放置する。デバルダ合金3.5gを加えたのち、ときどき振り混ぜながら約40分間室温に放置する。次いで硫酸(1+1)70ml及び必要によって沸騰石1個を加えたのち弱火で加熱する。(泡の発生が強くなりすぎるときには、いったん加熱を止める。)硫酸の白煙が発生し始めたならば徐々に加熱を強め更に約90分間加熱する。放冷後、水200~300mlを加え可溶性塩類を溶かす。
2)複合肥料
 分析試料の一定量(通常0.5~1gとし、硝酸性Nとして50mg以下)を分解フラスコ(直接全量を蒸留する場合には容量800ml前後のものがよい)に正確にとり、上記1)の「塩酸(1+1)60ml」以下により試料液を作成する。
D 定量

4.1.1.3 還元鉄-硫酸法(硝酸性窒素を含有する場合)

A 適用範囲
 硝酸塩を含有する試料を対象とする。
B 試薬液の調製
C 試料液の調製
 分析試料0.5~1gを分解フラスコに正確にとり、水約30mlを加えてよく混合したのち還元鉄5g及び硫酸(1+1)30mlを加え、直ちにフラスコに長脚漏斗を挿入し、流水下で容器の外部を冷却しながら静かに振り混ぜる。少時静置し激しい反応が衰えたのち低温で徐々に加熱し、約15分間軽く煮沸する。暫時放冷後分解促進剤(4.1.1.1.Cによる)を加え、更に硫酸30ml、及び必要により沸騰石1個を加える。次に水分が蒸発し去り硫酸の白煙が生ずるまで徐々に加熱し、更に強熱して完全に分解させたのち放冷する。分解液は水で250mlのメスフラスコに移し、冷却後標線まで水を加える。
D 定量
 試料液(懸濁液)の一定量を蒸留フラスコに正確にとり、強アルカリ性とするのに十分な量の水酸化ナトリウムの濃厚液を加え、直ちに標準硫酸液の一定量を入れた受器を接続した蒸留装置に連結し、以下4.1.1.1.Dの項により蒸留及び滴定を行う。別に試薬(特に還元鉄)について空試験を行い、滴定値を補正して窒素(N)を算出する。

4.1.2 アンモニア性窒素

4.1.2.1 蒸留法

A 適用範囲
 アンモニウム塩を含有する肥料であって、尿素または石灰窒素のように加熱により分解する化合物を含有しない肥料に適する。
B 試薬液の調製
C 試料液の調製
1)アンモニウム塩類及び複合肥料
 分析試料の一定量(通常5g)を500mlのメスフラスコに正確にとり、水約400mlを加え1分間30~40回回転の振り混ぜ機で30分間振り混ぜたのち、標線まで水を加える。
2)複合肥料
 分析試料の一定量(通常5g)を小型乳鉢に正確にとり、少量の水を加えてよくすりつぶし、その上澄み液を500mlのメスフラスコに移し、更にこの操作を3回反復したのち乳鉢内の不溶解物をことごとくフラスコに移し、水を加えて約400mlとし1分間30~40回回転の振り混ぜ機で30分間振り混ぜたのち、標線まで水を加える。
D 定量
 分析試料(尿酸アンモニウム、リン酸アンモニウムマグネシウム、腐植酸アンモニウムなどを含有する場合)または試料液(懸濁液)の一定量(アンモニア性Nとして15~50mgがよい)を蒸留フラスコに正確にとり、適量の水と水酸化ナトリウムの濃厚液とを加えてアルカリ性とし(試料に有機物を含有する場合には水酸化ナトリウム液の代わりに酸化マグネシウム約2gあるいはそれ以上を加えて)標準硫酸液の一定量を正確に入れた受器を接続した蒸留装置に連結し、4.1.1.1.Dの項に準じてアンモニアをことごとく標準硫酸液中に留出させたのち、留出液に指示薬としてメチルレッドを加えて標準水酸化ナトリウム液で滴定し窒素(N)の量を算出する。

4.1.2.2 通気法

A 適用範囲
 アンモニウム塩を含有する肥料に適用する。
B 試薬液の調製
C 試料液の調製
D 定量
 分析試料(尿酸アンモニウム、リン酸アンモニウムマグネシウム、腐植酸アンモニウムなどを含有する場合)または試料液(懸濁液)の一定量(アンモニア性Nとして15~50mgがよい)を通気装置に正確にとり、水酸化ナトリウム液を加えて加温通気し(母液のアルカリ濃度はNaOHとして10%以下、温度は40℃以下)アンモニアをことごとく一定量の標準硫酸液中に集めたのち、これを指示薬としてメチルレッドを加えて標準水酸化ナトリウム液で滴定し窒素(N)の量を算出する。

4.1.2.3 ホルムアルデヒド法

A 適用範囲
 アンモニウム塩を含有する肥料に適用するが、アミノ酸などを含む動植物質肥料を含有する場合には本法を適用できない場合がある。
B 試薬液の調製
1)標準水酸化ナトリウム液
2)塩化カリウム液
 塩化カリウム75gを水に溶かして1000mlとする。
3)塩化アルミニウム液
 塩化アルミニウム(AlCl・6HO)240gを水に溶かして1000mlとする。
4)水酸化カリウム液
 水酸化カリウム170gを水に溶かして1000mlとする。
5)ホルムアルデヒド液
 37%ホルムアルデヒド液に同量の水を加える。
6)指示薬
i)ブロムチモールブルー
ii)メチルレッド
iii)チモールブルー
 チモールブルー(ナトリウム塩)1gを20%アルコールに溶かして100mlとする。
C 試料液の調製
1)アンモニウム塩類
 4.1.2.1.C.1により作成したのち、乾燥ろ紙でろ過する。
2)複合肥料
 分析試料の一定量(通常5g)を500mlのメスフラスコに正確にとり、塩化カリウム液約400mlを加え、1分間30~40回回転の振り混ぜ機で30分間振り混ぜる。この溶液に塩化アルミニウム液(試料液中のP 0.04gまたはP 0.1gにつき塩化アルミニウム液3mlの割合)を加え、指示薬としてメチルレット数滴を滴下し、直ちにフラスコを振り混ぜながら淡黄色になるまで水酸化カリウム液を滴下してリン酸及び過剰のアルミニウムを沈殿させたのち、標線まで水を加えて乾燥ろ紙でろ過する。
3)複合肥料のうちリン酸アンモニウムマグネシウムを含有し、上記2)によってはアンモニア性窒素の浸出が不十分な場合
 分析試料の一定量(通常5g)を500mlのメスフラスコに正確にとり、塩酸(1+20)約300mlを加え、以下前記2)に従って浸出、リン酸の除去を行ったのち、常温まで冷却して標線まで水を加えて乾燥ろ紙でろ過する。
4)ベントナイトを混入した複合肥料
 前記2)により塩化カリウム液で浸出したのち、標線まで水を加えて乾燥ろ紙でろ過する。このろ液の一定量(50~100ml)を250mlのメスフラスコにとり、次に前記2)の「塩化アルミニウム液」以下に従いリン酸などを除去する。
D 定量
 試料液100mlを三角フラスコに正確にとり(アンモニア性Nが50mgを超えるときは25~50mlを正確にとり水を加えて約100mlとする)、メチルレッドを指示薬として塩酸(1+200)で淡桃色に調節したのち、ホルムアルデヒド液10mlを加え、更に指示薬としてチモールブルー数滴を滴下し標準水酸化ナトリウム液で緑色が消失して青色(pH8.8~8.9)となるまで滴定する。この水酸化ナトリウム液の所要量より空試験に要した水酸化ナトリウム液の量を減じて窒素(N)の量を算出する。
  標準水酸化ナトリウム液1ml=同液の濃度(M)×14.007mgN
(付記)
 本法の滴定はなるべく蛍光灯の下で行うのがよい。

4.1.3 硝酸性窒素

4.1.3.1 還元鉄法

A 適用範囲
 硝酸塩を含有する肥料に適用するが、尿素、石灰窒素、または有機物のように加熱により分解しアンモニアを遊離する化合物を含有する肥料には適用できない。アンモニウム塩、亜硝酸塩などが存在する場合にはこれらを差し引かなければならない。
B 試薬液の調製
C 定量
 分析試料の一定量(Nとして20~100mgがよい)を蒸留フラスコに正確にとり、水約30mlを加え硝酸塩及びアンモニウム塩を完全に溶かし、還元鉄5g及び硫酸(1+1)約10mlを加え、フラスコの首に長脚漏斗を挿入し流水下で容器の外部を冷却しながら静かに振り混ぜる。少時静置し激しい反応が衰えたのち低温で徐々に加熱し、約15分間軽く煮沸したのち冷却する。次に適量の水及び過剰の水酸化ナトリウムの濃厚液を加えてアルカリ性とし、標準硫酸液の一定量を入れた受器を接続した蒸留装置に連結し、以下4.1.1.1.Dの項により蒸留及び滴定を行う。別に試薬(特に還元鉄)について空試験を行い、滴定値を補正して窒素(N)の量を算出する。
(付記)
1.試料中にアンモニウム塩が存在する場合には、別に4.1.2によりアンモニア性窒素を定量しこれを差し引かなければならない。
2.試料中に亜硝酸塩が存在する場合には、試料液にあらかじめ過マンガン酸カリウム液をやや過剰に添加してから定量を行い、別に5.2により亜硝酸を定量しその窒素(N)を差し引かなければならない。

4.1.3.2 デバルダ合金法

A 適用範囲
 硝酸塩を含有する肥料に適用するが、尿素、石灰窒素、または有機物のように加熱により分解しアンモニアを遊離する化合物を含有する肥料には適用できない。アンモニウム塩、亜硝酸塩などが存在する場合にはこれらを差し引かなければならない。
B 試薬液の調製
C 定量
 分析試料の一定量(Nとして20~100mgがよい)を蒸留フラスコに正確にとり、適量の水及びデバルダ合金3gまたはそれ以上を加え、次いで30%水酸化ナトリウム液10~25mlを蒸留フラスコの内壁に添って徐々に加え、なお必要があれば少量のシリコーン油を加えたのち、標準硫酸液の一定量を正確に入れた受器を接続した蒸留装置に連結し、以下4.1.1.1.Dの項により蒸留及び滴定を行い窒素(N)の量を算出する。
(付記)
1.試料中にアンモニウム塩が存在する場合には、別に4.1.2によりアンモニア性窒素を定量しその窒素(N)を差し引かなければならない。
2.試料中に亜硝酸塩が存在する場合には、別に5.2により亜硝酸を定量しその窒素(N)を差し引かなければならない。

4.1.3.3 紫外部吸光光度法

A 適用範囲
 硝酸塩肥料に適する。複合肥料にあっては硝酸性窒素5%以上の肥料に適するが、動植物質肥料などを含有し紫外部に吸収を持つものには本法を適用できない場合がある。
B 装置
 吸光光度分析装置 紫外部での測光ができる装置であり、吸収セルは石英製とする。
C 試薬液の調製
1)標準硝酸塩液
 特級硝酸カリウム(KNO;110℃で乾燥したもの)36.09gまたは特級硝酸ナトリウム(NaNO;110℃で乾燥したもの)30.34gを水に溶かして正確に1000mlとする(この液1mlは硝酸性Nとして5mgを含有する)。この液の一定量を数段階に正確にとり水で一定容積に正確に希釈して1ml中に硝酸性Nとして0.1~2mgを含有する液を作成する。
2)酢酸ナトリウム緩衝液
 酢酸ナトリウム(NaCH・CO・3HO)5g及び酢酸9.5mlを水に溶かして1000mlとする。
D 試料液の調製
1)硝酸塩類
 分析試料1~3gを水によく溶かして正確に250mlとし、必要があれば乾燥ろ紙でろ過する。
2)複合肥料
 分析試料2~5gを250mlのメスフラスコに正確にとり、水約200mlを加え1分間30~40回回転の振り混ぜ機で30分間振り混ぜたのち、標線まで水を加えて乾燥ろ紙でろ過する。
E 定量
1)硝酸塩類
 試料液(硝酸性Nとして600μg/ml程度がよい)について波長302nmの吸光度を測定する。別に標準硝酸塩液より作成した検量線から試料中の硝酸性窒素(N)の量を求める。
2)複合肥料
 試料液の一定量(硝酸性Nとして20~100mgがよい)を100mlのメスフラスコに正確にとり、活性炭約0.2gを加え更に標線まで酢酸ナトリウム緩衝液を加えたのち、直ちに乾燥ろ紙でろ過する。このろ液について、波長302,292及び312nmの吸光度をそれぞれ測定し、各測定値をa、b及びcとし、補正吸光度2a-(b+c)を算出する。別に標準硝酸塩液について試料液の場合と同様に算出した補正吸光度より作成した検量線から硝酸性窒素(N)の量を求める。

4.1.3.4 フェノール硫酸法

A 適用範囲
 硝酸塩を含有する肥料のうち硝酸性窒素10%以下のものに適する。
B 装置
 吸光光度分析装置
C 試薬液の調製
1)標準硝酸塩液
 特級硝酸カリウム(KNO;110℃で乾燥したもの)36.09g、または特級硝酸ナトリウム(NaNO;110℃で乾燥したもの)30.34gを水に溶かして正確に1000mlとする(この液1mlは硝酸性Nとして5mgを含有する)。
2)標準硝酸塩希釈液
 標準硝酸塩液の一定量を水で正確に10倍に希釈する(この液1mlは硝酸性Nとして0.5mgを含有する)。
3)硫酸銅-硫酸銀液
 硫酸銅5gを水約900mlに溶かし、これに硫酸銀4gを加えて溶かしたのち、水を加えて1000mlとする。
4)フェノール硫酸
 特級フェノール15gを特級硫酸100mlに溶かし、水浴中で約2時間加熱し、放冷後着色瓶に貯蔵する。
D 試料液の調製
 分析試料1gを250mlのメスフラスコに正確にとり、硫酸銅-硫酸銀液200mlを加え(多量の塩化物を含有する肥料にあっては硫酸銀の不足量を添加する)、1分間30~40回回転の振り混ぜ機で約20分間振り混ぜ、更に水酸化カルシウム約1g及び塩基性炭酸マグネシウム約1gを加えて約10分間振り混ぜたのち、標線まで水を加えて乾燥ろ紙でろ過する。もしろ液が着色するときは、活性炭少量(0.5g以下)を加えて再び乾燥ろ紙でろ過する。
E 定量
1)硝酸性窒素1%以上の場合
 作成直後の試料液10mlを100mlのメスフラスコに正確にとり、標線まで水を加える。この液10mlを小型蒸発皿に正確にとり、水浴上で蒸発乾固し、放冷後フェノール硫酸2mlを速やかに加え、直ちに蒸発皿を回転し残留物のすべてをフェノール硫酸と接触させる。約10分間放置後水約20mlを加え、残留物を砕いて溶かす。放冷後これを水で100mlのメスフラスコに移し、アンモニア水(1+2)で弱アルカリ性として黄色を辛うじて発現させたのち、更に3mlを過剰に加える。冷却後標線まで水を加え、30分間放置後波長410nm付近の吸光度を次記の示差法により測定する。
 標準硝酸塩液の一定量を250mlのメスフラスコに数段階(発色時において試料液中の硝酸性N量がその間に入り、また標準液間の硝酸性N量の差は0.1mg以下とする)に正確にとり、硫酸銅-硫酸銀液200mlを加え、以下前記分析試料の場合と同様に操作して発色させ、試料液中より硝酸性窒素の量が少ない標準液を対照液として試料液(吸光度は0.1~0.7の範囲がよい)及びその他の標準液の吸光度を測定し、試料液中の硝酸性窒素(N)の量を求める。
2)硝酸性窒素1%以下の場合
 作成直後の試料液10mlを小型蒸発皿に正確にとり、以下前項1)と同様に操作して硝酸性窒素(N)の量を求める。
 ただし標準液としては標準硝酸塩希釈液の一定量を250mlのメスフラスコに数段階に正確にとり、硫酸銅-硫酸銀液200mlを加え、以下前記分析試料の場合と同様に操作して発色させる。

4.1.4 尿素性窒素

4.1.4.1 ウレアーゼ法

A 適用範囲
 尿素及び尿素を含有する複合肥料に適する。
B 試薬液の調製
C 試料液の調製
1) 尿素
 分析試料5gを500mlのメスフラスコに正確にとり、標線まで水を加えてよく混合する。
2) 尿素を含有する複合肥料
D 定量
1)尿素
 試料液25mlを蒸留フラスコに正確にとり、水約25ml及び尿素を分解するのに十分な量のウレアーゼを加え、密栓をして40~45℃の水浴中で1時間作用させたのち冷却する。この分解液に酸化マグネシウム2~3g及び少量のシリコーン油を加え、標準硫酸液20mlを正確に入れた受器を接続した水蒸気蒸留装置に連結し、4.1.1.1.Dの項に準じてアンモニアをことごとく標準硫酸液中に留出させたのち、留出液に指示薬としてメチルレッドを加えて標準水酸化ナトリウム液で滴定する。別にウレアーゼの空試験を行い、滴定値を補正して尿素性窒素(N)の量を算出する。
(付記)
1.試料がアンモニアまたはその塩類を含有するときは、別に4.1.2.2または4.1.2.3によりアンモニア性窒素を定量し、前記の結果よりこれを差し引く。
2.使用するウレアーゼはその0.5g以下で本法により尿素0.25gを完全に分解するものでなければならない。
2)尿素を含有する複合肥料
 試料液(懸濁液)の一定量(尿素性N及びアンモニア性Nの合量20~100mgがよい)を蒸留フラスコに正確にとり、水を加えて約50mlとしメチルレッドを指示薬として0.5%水酸化ナトリウム液で中和し(pH5.6~5.8)、尿素を分解するのに十分な量のウレアーゼを加え、密栓をして40~45℃の水浴中で1時間作用させる。以下前項1)により、その結果を尿素性窒素及びアンモニア性窒素の合量とし、この値よりアンモニア性窒素の量(4.1.2.2または4.1.2.3による)を差し引いて尿素性窒素(N)の量を算出する。

4.1.5 シアナミド性窒素

4.1.5.1 硝酸銀法

A 適用範囲
 石灰窒素及び石灰窒素を原料とした複合肥料に適用する。ジシアンジアミドあるいはその他の混在物の多少により方法が変わることに留意しなければならない。
B 試薬液の調製
1)標準塩化ナトリウム液
 標準試薬塩化ナトリウム(NaCl)(500~650℃に40~50分間保ち硫酸デシケーター中で放冷したもの)の0.1M溶液を作成する。
2)標準硝酸銀液
 特級硝酸銀(AgNO)の0.1M溶液を作成し、クロム酸カリウム液を指示薬として標準塩化ナトリウム液を滴定しその濃度を標定する。
3)標準チオシアン酸カリウム液
 特級チオシアン酸カリウム(KSCN)の0.1M溶液を作成し、標準硝酸銀液の一定量に硝酸(1+1)5mlを加えた液を硫酸鉄(Ⅲ)アンモニウム液を指示薬として滴定し、その濃度を標定する。
4)アンモニア性硝酸銀液
 特級硝酸銀(AgNO)の約0.2M溶液を作成し、これにアンモニア水を加え一度生じた沈殿が溶けるまで更にアンモニア水を入れる。
5)指示薬
i)クロム酸カリウム液
 クロム酸カリウム液の飽和液を作成する。
ii)硫酸鉄(Ⅲ)アンモニウム液
 硫酸鉄(Ⅲ)アンモニウム10gを約100mlの水に溶かし、硝酸(1+2)30mlを加えて軽く煮沸する。
iii)フェノールフタレイン
 フェノールフタレイン1gを95%アルコールに溶かして100mlとする。
C 試料液の調製
1)石灰窒素
 分析試料2.5gを250mlのメスフラスコに正確にとり、2%酢酸200mlを加えて1分間30~40回回転の振り混ぜ機で30分間振り混ぜたのち、標線まで水を加えて直ちに乾燥ろ紙でろ過する。
2)石灰窒素を原料とした肥料でリン(リン酸)を含有する場合
 分析試料の一定量(シアナミド性Nとして150~500mgがよい)を250mlのメスフラスコに正確にとり、2%酢酸200mlを加えて1分間30~40回回転の振り混ぜ機で30分間振り混ぜたのち、フェノールフタレインを指示薬としてアンモニア水でアルカリ性とし、リン酸を沈殿させるのに足りる10%硝酸カルシウム液を加え、更に標線まで水を加えて直ちに乾燥ろ紙でろ過する。
D 定量
1)一般法
 作成直後の試料液25mlを250mlのメスフラスコに正確にとり、水を加えて約150mlとしフェノールフタレインを指示薬として少量の硝酸(1+10)を加えて酸性とし、次にアンモニア水(1+10)で中和し更にその10mlを過剰に加えてアルカリ性とする。次に標準硝酸銀液50mlを正確に加え、振り混ぜてシアナミド銀を完全に沈殿させ、標線まで水を加えて混合し、1時間後二重の乾燥ろ紙でろ過する。このろ液100mlをビーカーに正確にとり、硝酸(1+2)3mlを加えて酸性とし、指示薬として硫酸鉄(Ⅲ)アンモニウム液5mlを加え標準チオシアン酸カリウム液で滴定してシアナミド性窒素(N)の量を算出する。
  0.1Mチオシアン酸カリウム液1ml=1.4007mgN
2)ジシアンジアミドを多量に含有する場合
 作成直後の試料液の一定量(Nとして約50mg)をビーカーに正確にとり、フェノールフタレインを指示薬として少量の硝酸(1+10)を加えて酸性とし、次にアンモニア水(1+10)を加えてアルカリ性とし、液をよくかき混ぜながら徐々にアンモニア性硝酸銀液をやや過剰に滴下する。15分間静置して生成した沈殿をグーチるつぼに二重のろ紙を敷いて炉別し冷水で数回洗浄したのち、沈殿を硝酸(1+10)に溶かし(この硝酸の液量は20mlを超えてはならない)元のビーカーに洗い込み、水を加えて約150mlとする。これにやや過剰のアンモニア性硝酸銀液を加え、わずかにアルカリ性反応を帯びるまでアンモニア水(1+10)を加えて再びシアナミド銀を沈殿させ、液をよくかき混ぜて少なくとも2時間放置したのち、前記同様にグーチるつぼでろ過・洗浄して硝酸(1+10)に溶かす。以下前項1)と同様に硫酸鉄(Ⅲ)アンモニウム液を指示薬として標準チオシアン酸カリウム液で滴定してシアナミド性窒素(N)の量を算出する。
3)塩化物を含有する場合
 作成直後の試料の一定量(Nとして50mg以下)をビーカーに正確にとり、水を加えて約150mlとし、フェノールフタレインを指示薬として少量の硝酸(1+10)を加えて酸性とし、次にアンモニア水(1+10)で中和し更にその10mlを過剰に加えてアルカリ性とする。次に標準硝酸銀液約60mlを加え、液をよくかき混ぜて1時間放置したのち、沈殿をグーチるつぼに二重のろ紙を敷いてろ別し冷水で数回洗浄する。次にろ紙上の沈殿をろ紙とともに水で元のビーカーに移し、シアナミド銀の沈殿を少量の硝酸(1+2)に溶かす。以下前項1)と同様に硫酸鉄(Ⅲ)アンモニウム液を指示薬として標準チオシアン酸カリウム液で滴定してシアナミド性窒素(N)の量を算出する。
(付記)
 試料液に炭化物・硫化物など銀塩の沈殿を生成する物質の共存する場合には、これらの滴定法は適用できない。このような場合には3)における銀塩の沈殿を硫酸(1+3)約20mlに溶かし、水で分解フラスコに洗い込み、分解台に移して加熱濃縮し、更に分解促進剤(4.1.1.1.Cによる)を加えて強熱し完全に分解させたのち、以下4.1.1.1.Dによりシアナミド銀の窒素を定量してシアナミド性窒素(N)の量とする。

4.1.6 水溶性窒素

4.1.6.1 冷緩衝液法

A 適用範囲
 アルデヒド類加工または縮合尿素肥料及びこれを含有する肥料に適用する。浸出中の縮合物等の加水分解を防止するため、中性の冷緩衝液を用いる。
B 分析試料の調製
 試料は、850μmの網ふるいを通過する程度に圧し砕いて分析試料とする。
C 試薬液の調製
 リン酸塩緩衝液 リン酸一カリウム(KHPO)3.63g及びリン酸二ナトリウム(NaHPO)5.68gを水に溶かして1000mlとする(pH7.0)。
D 試料液の調製
 分析試料の一定量(アルデヒド類加工または縮合尿素肥料では1g、これを含有する肥料では2.5g)を250mlのメスフラスコに正確にとり、25℃のリン酸塩緩衝液200mlを加え1分間30~40回回転の振り混ぜ機で30分間振り混ぜたのち(浸出中は25℃に保つこと)、標線まで水を加えて直ちに乾燥ろ紙でろ過する。
E 定量
 試料液の一定量(Nとして0.1g以下)を分解フラスコに正確にとり、硫酸銅0.1gを加え、硫酸5mlを注加し、最初徐々に加熱して水分を蒸発させたのちいったん火を消して硫酸カリウムの粉末約1gを加え、再び加熱して十分に分解したのち約30分間強熱して放冷する。これを水で30mlに希釈して冷却したのち、以下4.1.1.1.Dにより蒸留及び滴定を行い、窒素の量を算出して水溶性窒素(N)の量とする。
(付記)
 浸出中加水分解のおそれのない試料にあっては、リン酸塩緩衝液の代わりに水を用いてもよい。

4.1.7 窒素の活性係数

4.1.7.1 緩衝液法

A 適用範囲
 ホルムアルデヒド加工尿素肥料及びこれを含有する肥料に適用する。
B 分析試料の調製
C 試薬液の調製
 リン酸塩緩衝液 リン酸一カリウム(KHPO)14.3g及びリン酸二カリウム(KHPO)91.0gを水に溶かして1000mlとし、この原液を水で正確に10倍に希釈する(pH7.5±0.2)。
D 定量
 分析試料1gを50ml容のビーカーに正確にとり、少量のアルコールで潤し、25±2℃の水20mlを加え、5分ごとにかき混ぜて15分間放置する。上澄み液をろ紙上に注ぎ、更に同温度の水で4~5回デカントしたのち、不溶解物をことごとくろ紙上に移し、更にろ液が250mlになるまで十分洗浄する。ろ紙上の不溶解物の窒素全量を4.1.1.1により定量し冷水不溶性窒素の量(a%)とする。
 次に、冷水不溶性窒素の量が0.12gに相当する分析試料を200ml容のトールビーカーに正確にとり、沸騰しているリン酸塩緩衝液100mlを加えてかき混ぜたのち、時計皿で覆う。これを、沸騰している水浴中で10分ごとにかき混ぜて30分間加熱したのち、直ちにろ過する。このろ過が4分以上かかるときは定量を中止し、別に再び分析試料をとって同様に操作し、加熱後水浴中からビーカーを取り出す直前にけい藻土1gをかき混ぜながら加えてろ過する。ろ紙上の不溶解物を沸騰水100mlで十分洗浄し、その窒素全量を4.1.1.1により定量し熱緩衝液不溶性窒素の量(b%)とする。
 {(a-b)/a}×100により窒素の活性係数を算出する。

4.2 リン(リン酸)

4.2.1 キノリン重量法

A 適用範囲
 リン酸塩を含有する肥料及びリン鉱石に適用する。リン含有量の高い試料に好適である。
B 試薬液の調製
1)キモシアク液
 モリブデン酸ナトリウム(NaMoO・2HO)70gを水約150mlに溶かす。またクエン酸(C・HO)60gを硝酸85ml及び水約150mlの混合液に溶かす。この液にモリブデン酸ナトリウム液を徐々に加えて混合する。別にキノリン(CN)5mlを硝酸35ml及び水約100mlの混合液に加え、これをさきに作成したモリブデン酸-クエン酸液にかき混ぜながら徐々に加えて一夜間放置する。ろ過後アセトン280mlを加え、更に水を加えて1000mlとし、ポリエチレン瓶に入れて冷暗所に貯蔵する。使用に際して必要があれば再びろ過する。
 なお用いるモリブデン酸ナトリウム中に不純物として含まれるタングステンの量が多い場合には、正の誤差を生じやすいため、補正を要することがある。この際モリブデン酸ナトリウム70gの代わりに、三酸化モリブデン(MoO)42g及び水酸化ナトリウム24gを用いてもよい。
2)硝酸マグネシウム液
 酸化マグネシウム160gをなるべく少量の硝酸及び水に溶かし、なおやや過剰の酸化マグネシウムを加え、煮沸してろ過し過剰の酸化マグネシウムを除去したのち、水を加えて1000mlとする。
3)ペーテルマンクエン酸塩液
 クエン酸(C・HO)173gを少量の水に溶かし、これに42gの窒素(N)に相当する比重0.96のアンモニア水(滴定により窒素の含量を正確に定めること)を冷却しながら徐々に加え、常温に冷却したのち水を加えて1000mlとする。
 この液は比重1.082~1.083(15℃)であって、かつその1mlが42mgの窒素(N)を含有していなければならない。
4)クエン酸液
 クエン酸(C・HO)100gを水に溶かして1000mlとし(この液はサリチル酸約0.5gを加えれば保存することができる)、使用に際してこの原液を水で5倍に希釈する。
C 試料液の調製
a リン(リン酸)全量
1)無機質肥料
 分析試料2.5~5gをトールビーカーに正確にとり、塩酸約30ml及び硝酸約10mlを加えて約30分間煮沸し、放冷後水を加えて正確に250~500mlとし乾燥ろ紙でろ過する。
 ただし熔成りん肥では分析試料2~5gをトールビーカーに正確にとり、少量の水で潤し、次に硫酸20~50mlを加え完全に分解するまで加熱し、わずかに冷却し水を加えて激しく振り混ぜ不溶解物を崩壊させ、冷却後更に水を加えて正確に500mlとする。
2)有機質肥料または有機物を含有する肥料
 分析試料2gを正確にとり、次に記載する方法により分解し、水を加えて正確に250mlとし乾燥ろ紙でろ過する。
 ただし、ふん尿などのリン含有量の低い試料の場合には、分析試料10~20gを正確にとる。
i)分析試料に硝酸マグネシウム液5mlを加え、蒸発して乾固し500℃前後で強熱したのち塩酸を加えて煮沸する。
ii)分析試料を分解フラスコにとり、硝酸5mlで潤し、次に硫酸20~30mlを加え激しい反応が終わるのを待って(もし必要があれば穏やかに加熱すること)、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウム2~4gを加えて煮沸し、液がほとんど無色となったのち、更に少量の硝酸塩を加えて(硝酸塩は少量ずつを数回に分けて加えてもよい)完全に分解させ、水約150mlを加え数分間煮沸する。
iii)分析試料をトールビーカーに正確にとり、硝酸20~30mlを加え、約30分間煮沸し(泡の発生が激しい場合にはあらかじめ一夜間放置するとよい)、放冷後過塩素酸約10mlを加える。これを最初は徐々に加熱し、次第に火力を強めて分解を続け、過塩素酸の濃厚な白煙が生ずるようになってから時計皿で覆い、更に15~20分間加熱して分解を終了する。(加熱し過ぎて乾固させると危険なので注意する)。未分解の黒褐色物が残っているときには、放冷後ビーカーの内壁を少量の水で洗い少量の硝酸を添加して加熱分解を繰り返す。
(付記)
 リン(リン酸)及び窒素を同時に定量する場合には、4.1.1.1.Cにより作成した硫酸分解液(二酸化セレンを用いたものを除く)をリン(リン酸)全量定量用の試料液として用いることができる。
b 水溶性リン(リン酸)
 分析試料5gを500mlのメスフラスコに正確にとり、水約400mlを加え1分間30~40回回転の振り混ぜ機で30分間振り混ぜたのち、標線まで水を加えて直ちに乾燥ろ紙でろ過する。
(付記)
 試料液を作成する際に、液温によって結果に差異を生ずる試料では、液温を標準温度に保ちながら処理しなければならない。
c 可溶性(クエン酸塩液可溶性)リン(リン酸)
1)水溶性リン(リン酸)を含有する場合
 分析試料2.5gを小型乳鉢に正確にとり、水20~25mlを加えよくすりつぶしその上澄み液をろ紙上に注ぎ、更にこの操作を3回反復したのち乳鉢内の不溶解物をろ紙上に移し、ろ液が約200mlとなるまで水で洗浄し、ろ液に少量の硝酸を加えて透明にしたのち水を加えて正確に250mlとする(この溶液を第1液とする)。
 次にろ紙上の不溶解物をろ紙とともに別の250mlのメスフラスコに入れ、ペーテルマンクエン酸塩液100mlを加え栓をしてろ紙が完全に崩壊するまで振り混ぜ、65℃の水浴中で15分ごとに振り混ぜながら1時間作用させたのち冷却し、標線まで水を加えて直ちに乾燥ろ紙でろ過する(このろ液を第2液とする)。
 定量に際してこの第1液及び第2液を等量ずつ合わせてとる。
2)水溶性リン(リン酸)を含有しない場合
 分析試料1gを小型乳鉢に正確にとり、ペーテルマンクエン酸塩液100mlの一部を加え、よくすりつぶしたのち残りのペーテルマンクエン酸塩液で250mlのメスフラスコに移す。これを65℃の水浴中で15分ごとに振り混ぜながら1時間作用させたのち冷却し、標線まで水を加えて直ちに乾燥ろ紙でろ過する。
(付記)
 ろ液にマグネシウムを含有する場合には、1時間加熱後水で希釈してから冷却しかつろ過後速やかに試料液の採取を行う必要がある。
d ク溶性(クエン酸可溶性)リン(リン酸)
 分析試料1gを250mlのメスフラスコに正確にとり、30℃のクエン酸液150mlを加え1分間30~40回回転の振り混ぜ機で1時間振り混ぜたのち(浸出中は30℃に保つこと)、速やかに常温に戻し標線まで水を加えて直ちに乾燥ろ紙でろ過する。
 ただし石灰窒素を含有する塩基性複合肥料にあっては、分析試料1gを小型ビーカーに正確にとり、水20~25mlを加えてかき混ぜ、静置してその上澄み液をろ紙上に注ぎ、更にこの操作を3回反復したのち不溶解物をろ紙上に移し、ろ液が約200mlとなるまで水で洗浄する。次にろ紙上の不溶解物をろ紙とともに250mlのメスフラスコに入れ、30℃のクエン酸液150mlを加え栓をしてろ紙が完全に崩壊するまで振り混ぜ、更に1分間30~40回回転の振り混ぜ機で1時間振り混ぜたのち(浸出中は30℃に保つこと)、速やかに常温に戻し標線まで水を加えて直ちに乾燥ろ紙でろ過する。
(付記)
 a~dにおいて作成した試料液に多量のケイ素(ケイ酸)を含有する場合には、定量に先だって、4.4.1.Cまたは4.4.2.Cに準じてケイ素を分離しなければならない。
D 定量
 試料の一定量〔Pとして4~13mgまたはPとして10~30mgがよく、試料液の作成に硫酸を用いた場合には硫酸が5mlに相当する量以下であり、かつ可溶性リン(リン酸)の場合にはペーテルマンクエン酸塩液が8mlに相当する量以下であること〕を300ml容のトールビーカーに正確にとり、硝酸5mlを加え、更に水で約80mlに希釈して時計皿で覆い約3分間煮沸したのち、時計皿及びビーカーの内壁を水で洗い、更に水を加えて約100mlとする。直ちにキモシアク液約50mlを加えて60~65℃の水浴中で時々かき混ぜながら15分間加熱したのち、更に時々かき混ぜながら室温まで放冷する。次にあらかじめ220±5℃で乾燥して重さを正確に量った、るつぼ形ガラスろ過器(1G4)または目皿を除きガラス繊維ろ紙(例えば東洋ろ紙GA-100)を敷いたグーチるつぼで沈殿をろ過する。水で3回デカントしたのち、沈殿をことごとくろ過器中に移し、更に水で7~8回洗浄する。これを220±5℃で(通風下がよい)30分間乾燥したのち、シリカゲルデシケーター中で室温まで放冷し(1.5~2時間)、リンモリブデン酸キノリニウム〔(CNH)PO・12MoO)〕として重さを正確に量る。
 P=〔(CNH)PO・12MoO)〕×0.01400
 P=〔(CNH)PO・12MoO)〕×0.03207
 ただし、リン(リン酸)全量の場合には、試料液を300ml容のトールビーカーにとり、水で約80mlに希釈して時計皿で覆い煮沸し始めるまで加熱したのち、「時計皿及びビーカーの内壁を水で洗い」以下によりリン(リン酸)を定量する。

4.2.2 キノリン容量法

A 適用範囲
 リン酸塩を含有する肥料及びリン鉱石に適用する。
B 試薬液の調製
1)標準水酸化ナトリウム液
 水酸化ナトリウムの0.3~0.35M溶液を作成し、4.1.1.1.B.1によりその濃度を標定し1mlに相当するリン(P)またはリン酸(P)の量を算出する。
2)標準塩酸液
 塩酸の0.15~0.18M溶液を作成し、標準水酸化ナトリウム液でその濃度を標定する。
3)キモシアク液
4)硝酸マグネシウム液
5)ペーテルマンクエン酸塩液
6)クエン酸液
7)混合指示薬
 フェノールフタレイン0.1gを95%アルコールに溶かして100mlとした液3容と、α-ナフトールフタレイン0.1gを95%アルコールに溶かして100mlとした液1容とを混合する。
C 試料液の調製
 4.2.1.Cによる。
D 定量
 4.2.1.Dにより操作し、生成・放冷したリンモリブデン酸キノリニウムの沈殿を目皿を除きガラス繊維ろ紙(例えば東洋ろ紙GA-100)を敷いたグーチるつぼでろ過する。水で3回デカントしたのち、沈殿をるつぼ中に移し、更に水で7~8回洗浄する。次にろ紙上の沈殿をろ紙とともに沈殿生成に用いた元のビーカーへ水で移して約100mlに希釈し、標準水酸化ナトリウム液のやや過剰の一定量を正確に加えて沈殿を完全に溶かしたのち(マグネチックスターラーを用いるとよい)、直ちに混合指示薬数滴を加えて標準塩酸液で滴定し、赤色が完全に消えたときを終点としてリン(P)またはリン酸(P)の量を算出する。
  標準水酸化ナトリウム液1ml=同液の濃度(M)×1.1913mgP=同液の濃度(M)×2.7297mgP

4.2.3 バナドモリブデン酸アンモニウム法

A 適用範囲
 リン酸塩を含有する肥料に適する。特にリン(P)として10%以下(Pとして25%以下)の試料に適する。鉄が極めて多い試料や有機物などによる着色がある場合には、これらを除くか、あるいは本法を適用できない場合がある。
B 装置
 吸光光度分析装置
C 試薬液の調製
1)標準リン酸
 硫酸デシケーター中で24時間以上乾燥したリン酸二水素アンモニウム(NHPO)3.714gまたはリン酸二水素カリウム(KHPO)4.394gを水に溶かして正確に1000mlとする(この液1mlはPとして1mgを含有する)。この液の一定量ずつを水で一定容積に正確に希釈して、1ml中にPとして0.05~0.35mgを含有する液を作成する。
 なお標準リン酸としてリン酸二水素アンモニウム16.21gまたはリン酸二水素カリウム19.17gを水に溶かして、正確に1000mlとした原液(この液1mlはPとして10mgを含有する)を水で正確に希釈して1ml中にPとして0.1~0.8mgを含有する液を作成してもよい。
 標準リン酸液を保存するにはそれぞれの液1000mlにつき硝酸2~3mlを加えるとよい。
2)硝酸マグネシウム液
3)ペーテルマンクエン酸塩液
4)クエン酸液 4.2.1.B.4)による。
5)発色試薬液
i)a試薬液
 メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)1.12gを適量の水に溶かし、硝酸250mlを加える。この液にモリブデン酸アンモニウム〔(NHMo24・4HO〕27gを水に溶かして加え、水を加えて1000mlとし着色瓶に入れて貯蔵する。
ii)b試薬液
 メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)1.12gを適量の水に溶かし、硝酸150mlを加える。この液にモリブデン酸アンモニウム〔(NHMo24・4HO〕50gを水に溶かして加え、水を加えて1000mlとし着色瓶に入れて貯蔵する。ただしこの試薬液は長期間の保存に耐えない。
D 試料液の調製
 4.2.1.Cによる。
E 定量
a リン(リン酸)全量及び水溶性リン(リン酸)
 試料液の一定量(Pとして0.5~3.5mgまたはPとして1~8mg)を100mlのメスフラスコに正確にとり〔水溶性リン(リン酸)定量の場合にピロリン酸などの非オルトリン酸を含有するおそれのあるときは、硝酸(1+1)4mlを加えて煮沸しオルトリン酸に加水分解させたのち〕、アンモニア水で中和し硝酸を加えて微酸性とし、適量の水で希釈してa試薬液20mlを加え、標線まで水を加えて振り混ぜ、約30分間放置後波長400~420nm付近の吸光度を次記の示差法により測定する。
 標準リン酸液を正確に10mlずつ100mlのメスフラスコに数段階〔試料液中のリン(リン酸)量がその間に入り、また標準液間のPの量の差が0.5mg(またはPとして1mg)以下とする〕にとり、適量の水で希釈し、試料液と同様に発色させ、試料液中よりリン(リン酸)の量が少ない標準液を対照液とし試料液(吸光度は0.1~0.7の範囲がよい)及びその他の標準液の吸光度を測定し試料液中のリン(P)またはリン酸(P)の量を求める。
   リン酸(P)=リン(P)×2.2914
   リン(P)=リン酸(P)×0.4364
b 可溶性(クエン酸塩液可溶性)リン(リン酸)
 試料液の一定量(Pとして0.5~3.5mgまたはPとして1~8mgであり、かつペーテルマンクエン酸塩液が2mlに相当する量以下であること)を100mlのメスフラスコに正確にとり、硝酸(1+1)4mlを加え更にペーテルマンクエン酸塩液が2ml相当量になるようにその不足分を追加して煮沸する。冷却後適量の水で希釈してb試薬液20mlを加え、標線まで水を加えて振り混ぜ、約30分間放置後波長400~420nm付近の吸光度をaに記した示差法により測定する。ただし標準液には硝酸(1+1)4ml及びペーテルマンクエン酸塩液2mlをそれぞれ加え、試料液と同様にして同時に発色させなければならない。
c ク溶性(クエン酸可溶性)リン(リン酸)
 試料液の一定量(Pとして0.5~3.5mgまたはPとして1~8mgであり、かつクエン酸液が17mlに相当する量以下であること)を100mlのメスフラスコに正確にとり、硝酸(1+1)4mlを加え更にクエン酸液が17ml相当量になるようにその不足分を追加して煮沸する。冷却後適量の水で希釈してb試薬液20mlを加え、標線まで水を加えて振り混ぜ、約30分間放置後波長400~420nm付近の吸光度をaに記した示差法により測定する。ただし標準液には硝酸(1+1)4ml及びクエン酸液17mlをそれぞれ加え、試料液と同様にして同時に発色させなければならない。
(付記)
1.a試薬液による発色液は発色後約6時間は安定である。b試薬液による発色液は試料液によっては不安定であるので、発色後30~120分間のうちに測定する必要がある。
2.~cにおいて採取した試料液中のケイ素(ケイ酸)の量はその液に含まれるリン(リン酸)量を著しく超えてはならない。
3.試料液が着色する場合には、試料液を酸性とし活性炭0.1g以下を加えて脱色・ろ過し、また試料液が硝酸酸性において混濁する場合には、遠心分離法により除濁することができる。ただし発色試薬液を加えることにより混濁を生ずる場合には、本法は適用できない。
 なお、水溶性リン(リン酸)の試料液が着色する場合には、試料液の一定量(Pとして0.5~3.5mgまたはPとして1~8mg)をトールビーカーに正確にとり、硫酸1~2ml及び硝酸1~2mlを加えて加熱分解したのち、少量の水で100mlのメスフラスコに移し込み、次いで前記aの「アンモニア水で中和し」以下により操作してリン(P)またはリン酸(P)の量を求めることができる。
4.リン(リン酸)全量及び水溶性リン(リン酸)の定量にb試薬液を使用してもよい。b試薬液使用に際しては、可溶性リン(リン酸)またはク溶性リン(リン酸)の定量におけるように硝酸(1+1)4ml及びペーテルマンクエン酸塩液2mlまたはクエン酸液17mlを添加したのち発色させる。

4.3 カリウム(加里)

4.3.1 テトラフェニルホウ酸ナトリウム重量法

A 適用範囲
 カリウム塩を含有する肥料及び肥料原料に適用する。カリウムの定量法としては最も正確さ、精密さが高いと考えられることから高成分のカリウム塩などの定量に好適である。
B 試薬液の調製
1)テトラフェニルホウ酸塩液
 テトラフェニルホウ酸ナトリウム〔Na(CB〕6.1gを250mlのメスフラスコにとり、水約200mlを加えて溶かし、これに塩化アルミニウム液10mlを加え、メチルレッドを指示薬として水酸化ナトリウム液で黄色となるまで中和し、標線まで水を加えてよく混合したのち乾燥ろ紙でろ過する。最初のろ液が混濁するときはその30~50mlを再びろ過する。ろ液全量に水酸化ナトリウム液0.5mlを加えて混合し、使用前にろ過する。
2)クエン酸液
3)エチレンジアミン四酢酸塩-水酸化ナトリウム液
 エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(Na1012N・2HO)10g及び水酸化ナトリウム8gを水に溶かし、冷却後混在するカリウム量に応じてテトラフェニルホウ酸塩液6~10ml(当量より4ml過剰程度)をかき混ぜながら加え、水を加えて100mlとする。時々混合しながら約30分間放置したのち乾燥ろ紙でろ過する(最初のろ液が混濁するときはその約20mlを再ろ過する)。
4)テトラフェニルホウ酸塩洗浄液
 テトラフェニルホウ酸塩液40mlを水で希釈して1000mlとする。
5)塩化アルミニウム液
 塩化アルミニウム(AlCl・6HO)12gを水に溶かして100mlとする。
6)水酸化ナトリウム液
 水酸化ナトリウム200gを水に溶かして1000mlとする。
C 試料液の調製
a カリウム(加里)全量
1)カリウム塩類
 分析試料2.5gを300ml容のトールビーカーに正確にとり、水約200mlを加え更に少量の塩酸を加えて酸性とし、時計皿で覆い約15分間煮沸して溶かし、冷却後水を加えて正確に250mlとし乾燥ろ紙でろ過する。
2)草木灰
 分析試料5gをトールビーカーに正確にとり、少量の水で潤し時計皿で覆い塩酸約10mlを徐々に加え、水を加えて約100mlとし約5分間煮沸し、次に蒸発乾固してケイ素の分離を行ったのち、水を加えて正確に250mlまたは500mlとし乾燥ろ紙でろ過する。
3)有機質肥料または有機物を含有する肥料
 分析試料5~10gを白金皿に正確にとり、低赤熱で炭化し、これを300ml容のトールビーカーに水で移し込み塩酸10mlを徐々に加え、水を加えて約100mlとし約5分間煮沸し、冷却後水を加えて正確に250mlまたは500mlとし乾燥ろ紙でろ過する。
4)複合肥料
 分析試料5gを300ml容のトールビーカーに正確にとり(有機物を含有するものは、あらかじめ白金皿にとり、低赤熱で炭化する)、塩酸10mlを加え、以下3)の方法により作成する。
5)カリウム鉱石類
 分析試料0.1~0.5gを白金皿(ポリ四フッ化エチレン製の皿でもよい)に正確にとり、水数滴を加えて潤したのち、46%フッ化水素酸5ml及び過塩素酸0.5mlを加え、熱板上で加熱して過塩素酸の白煙が発生するに至らせる。放冷したのち、46%フッ化水素酸5mlを加えポリ四フッ化エチレン製の時計皿をややずらしてかぶせ熱板上で加熱してほとんど乾固するに至らせる。放冷後塩酸(1+1)5ml及び少量の水を加え、熱板上で加熱し溶かす。この際分解が不完全で完全に溶けない場合には、上記の「46%フッ化水素酸5ml及び過塩素酸0.5mlを加え」以下を繰り返して完全に溶かす。放冷後100mlのメスフラスコに移し標線まで水を加える。
b 水溶性カリウム(加里)
1)カリウム塩類
 分析試料2.5gを300ml容のトールビーカーに正確にとり、水約200mlを加えて15分間煮沸し、冷却後水を加えて正確に250mlとし乾燥ろ紙でろ過する。
2)複合肥料
 分析試料5gを小型乳鉢に正確にとり、少量の水を加えてよくすりつぶし、その上澄み液を500mlのメスフラスコに移し、更にこの操作を3回反復したのち乳鉢内の不溶解物をことごとくフラスコに移し、水を加えて約400mlとし1分間30~40回回転の振り混ぜ機で30分間振り混ぜたのち、標線まで水を加えて乾燥ろ紙でろ過する。
(付記)
 複合肥料であってその原料〔ただし硫酸カリウムマグネシウム(硫酸加里苦土)を除く〕を単に配合したものでは、分析試料5gを500mlのメスフラスコに正確にとり、水約400mlを加え1分間30~40回回転の振り混ぜ機で30分間振り混ぜたのち、標線まで水を加えて乾燥ろ紙でろ過する。
c ク溶性(クエン酸可溶性)カリウム(加里)
D 定量
 試料液の一定量(Kとして12~25mgまたはKOとして15~30mgがよい)を100ml容のビーカーに正確にとり、テトラフェニルホウ酸塩液添加後の最終液量が50mlになるように適量の水を加え、次いで塩酸の量が0.2mlとなるように塩酸(1+9)を加え〔ただしク溶性カリウム(加里)の場合には、20mlを供試しかつ塩酸を添加しない〕、更に37%ホルムアルデヒド液5ml及びエチレンジアミン四酢酸塩-水酸化ナトリウム液5mlを順次加える。これにテトラフェニルホウ酸塩液を当量(K 8.3mgまたはKO 10mgにつき3mlの割合)より4ml過剰に、毎秒1~2滴ずつかき混ぜながら加える。時々かき混ぜて約30分間放置したのち、あらかじめ重さを正確に量ったるつぼ型ガラスろ過器(1G4)を用いてろ過し、テトラフェニルホウ酸塩洗浄液で沈殿を移し込み、同液約5mlずつを用いて5回、次いで水約2mlずつを用いて2回洗浄し。120℃で1時間乾燥したのち、テトラフェニルホウ酸カリウム〔K(CB〕として重さを正確に量り、カリウム(K)または加里(KO)の量を算出する。
   カリウム(K)=〔K(CB〕×0.1091
   加里(KO)=〔K(CB〕×0.1314
 ただし試料液に多量のケイ素(ケイ酸)を含有する場合には、試料液の一定量を白金皿に正確にとり、硫酸(1+20)2mlを加えて硫酸の白煙が発生するようになるまで加熱する。次に46%フッ化水素酸約5mlを加えて再び硫酸の白煙が生ずるまで加熱する。この操作を更に1回反復してケイ素(ケイ酸)をことごとく揮散させる。白金皿中の残留物を水で100ml容のビーカーに移し、次に前記の「テトラフェニルホウ酸塩液添加後の最終液量が50mlとなるように適量の水を加え」以下により操作し(ただし塩酸の添加は除く)、沈殿の入ったガラスろ過器の重さを正確に量ったのちアセトンで沈殿を溶かし去り、再びこれを乾燥し重さを正確に量って前者との差をテトラフェニルホウ酸カリウム〔K(CB〕の量とし、カリウム(K)または加里(KO)の量を算出する。
(付記)
 試料液に有機物を含有しテトラフェニルホウ酸カリウムの沈殿生成が妨害される場合には、定量に先だって試料液の一部を白金皿に正確にとり、蒸発乾固し低赤熱で有機物を炭化したのち、希塩酸で加熱溶出したろ液の一定量を供試する必要がある。

4.3.2 テトラフェニルホウ酸ナトリウム容量法

A 適用範囲
 カリウムを含有する肥料及び肥料原料に適用する。
B 試薬液の調製
1)標準カリウム液
 特級塩化カリウム(KCl;110℃で乾燥したもの)3.814gまたは特級硫酸カリウム(KSO;110℃で乾燥したもの)4.457gを水に溶かして正確に1000mlとする(この液1mlはKとして2mgを含有する)。
 なお標準カリウム液として塩化カリウム3.166g、または硫酸カリウム3.700gを水に溶かして正確に1000mlとした液を作成してもよい(この液1mlはKOとして2mgを含有する)。
2)クエン酸液
3)水酸化ナトリウム液
 特級水酸化ナトリウム30gを250mlのメスフラスコにとり、水約200mlを加えて溶かし、冷却後混在するカリウム量に応じてテトラフェニルホウ酸塩液30~50ml(当量より20ml過剰程度)をかき混ぜながら加え、標線まで水を加える。時々混合しながら約30分間放置したのち二重の乾燥ろ紙でろ過し(最初のろ液が混濁するときは、その約50mlを再ろ過する)、定量の都度次の方法により標定する。
 塩酸(1+9)3mlを100mlのメスフラスコにとり、水を加えて約30mlとし37%ホルムアルデヒド液5mlを加える。これに水酸化ナトリウム液5mlを混合しながら正確に加えたのち標線まで水を加える。この液50mlを三角フラスコに正確にとり、指示薬としてチタンイエロー数滴を加え、液温約30℃にて塩化ベンズアルコニウム液で淡赤色となるまで滴定する。この滴定値をamlとする。
4)塩化ベンズアルコニウム液
 塩化ベンズアルコニウム3.3gを水に溶かして500mlとし、定量の都度次の方法により標定する。
 塩酸(1+9)3mlを100mlのメスフラスコにとり、水を加えて約30mlとし37%ホルムアルデヒド液5mlを加える。これに水酸化ナトリウム液5mlを混合しながら正確に加え、次にテトラフェニルホウ酸塩液8mlを正確に加えたのち標線まで水を加える。この液50mlを三角フラスコに正確にとり、以下前項3)により滴定する。この滴定値をmlとすれば、塩化ベンズアルコニウム液1mlは4/(b-a)mlのテトラフェニルホウ酸塩液に相当する(この値をmlとする)。
5)テトラフェニルホウ酸塩液
 テトラフェニルホウ酸ナトリウム〔Na(CB〕12.2gを1000mlのメスフラスコにとり、水約800mlを加えて溶かし、これに塩化アルミニウム液20mlを加えメチルレッドを指示薬として20%水酸化ナトリウム液で黄色となるまで中和し、標線まで水を加えて乾燥ろ紙でろ過する(最初のろ液が混濁するときは、その約50mlを再ろ過する)。ろ液全量に20%水酸化ナトリウム液2mlを加えて時々混合しながら数時間以上放置したのち乾燥ろ紙でろ過し、定量の都度次の方法により標定する。
 試料液のカリウム含量に応じて標準カリウム液5~30mlを100mlのメスフラスコに正確にとり、塩酸(1+9)3mlを加え更に水を加えて約30mlとし37%ホルムアルデヒド液5mlを加える。これに水酸化ナトリウム液5mlを混合しながら正確に加え、次にテトラフェニルホウ酸塩液を当量(K10mgにつき7.2mlまたはKO10mgにつき6mlの割合)より8ml過剰に絶えず混合しながら正確に添加したのち、標線まで水を加えて乾燥ろ紙でろ過する。ろ液50mlを三角フラスコに正確にとり、以下前項3)により滴定する。この滴定値をml、K(またはKO)の採取量をmg、テトラフェニルホウ酸塩液の添加量をmlとすれば、テトラフェニルホウ酸塩液1mlはd/{e-2f(c-a)}mgのカリウム(K)または加里(KO)に相当する(この値をmgとする)。
6)塩化アルミニウム液
7)20%水酸化ナトリウム液
8)指示薬
i)メチルレッド
ii)チタンイエロー
 チタンイエロー0.04gを水に溶かして100mlとする。
C 試料液の調製
 4.3.1.Cによる。
D 定量
 カリウム含有量に応じて試料液の一定量(Kとして8~50mgまたはKOとして10~60mgがよい)を100mlのメスフラスコに正確にとり、塩酸の量が0.3mlとなるように塩酸(1+9)を加える〔ただしク溶性カリウム(加里)の場合には、25mlを供試しかつ塩酸を添加しない〕。次に4.3.2.B.5)の「水を加えて約30mlとし」以下により滴定しカリウム(K)または加里(KO)を定量する。この際滴定値をml、テトラフェニルホウ酸塩液の添加量をmlとすれば試料中のKまたはKOはF{y-2f(x-a)}mgとなる。
   カリウム(K)=加里(KO)×0.8301
   加里(KO)=カリウム(K)×1.2046
(付記)
 試料液に有機物を含有するため、テトラフェニルホウ酸カリウムの沈殿生成が妨害されるかまたは着色により滴定の終点が明らかでない場合には、4.3.1.D(付記)によるか、または試料液の一部をビーカーに正確にとり、活性炭及び希塩酸を加えて煮沸したのちろ過したろ液の一定量を供試する必要がある。ただし活性炭を用いるときは、その中にカリウムの混在するものがあるので、空試験を行わなければならない。

4.3.3 フレーム光度法または原子吸光測光法

A 適用範囲
 本法は感度が高いことから比較的カリウム含有量の低い肥料に好適であり、水溶性K12%(またはKO15%)以下のものの分析に適する。カリウム含有量の高い塩類などでは4.3.1または4.3.2によるのがよい。
B 装置
1)フレーム光度分析装置
2)原子吸光分析装置 カリウム中空陰極ランプ。
C 試薬液の調製
1)標準カリウム液
 特級塩化カリウム(KCl;110℃で乾燥したもの)1.907gまたは特級硫酸カリウム(KSO;110℃で乾燥したもの)2.228gを水に溶かして正確に1000mlとし標準カリウム原液を作成する(この液1mlはKとして1mgを含有する)。この原液の一定量を、最終希釈液量の1/10の干渉抑制剤液を加え、水で正確に希釈し1ml中にKとして10、20、30、・・・、100μgを含有する液を作成する。
 なお標準カリウム液として塩化カリウム1.583gまたは硫酸カリウム1.850gを水に溶かして正確に1000mlとした原液(この液1mlはKOとして1mgを含有する)を、上記と同様に正確に希釈して1ml中にKOとして10、20、30、・・・、100μgを含有する液を作成してもよい。
2)クエン酸液
3) 干渉抑制剤液
 炭酸カルシウム(CaCO)12.5gをビーカーにとり、水で潤したのち、塩酸105mlを徐々に加えて溶かす。少時煮沸したのち冷却し、水を加えて1000mlとする。
(付記)
 内標準としてリチウムを使う場合には、干渉抑制剤液を作成する際に塩化リチウム6.11gを加えておくとよい。この液1ml中にはリチウム1mg、カルシウム5mgを含有する。
D 試料液の調製
 4.3.1.Cによる。
E 定量
 試料液の一定量をメスフラスコに正確にとり、最終希釈量の1/10の干渉抑制剤液及び標線まで水を加え(1ml中にKとして10~80μg、またはKOとして10~100μgがよい)、フレーム光度分析装置または原子吸光分析装置により標準カリウム液の発光強度または吸光度と比較してカリウム(K)または加里(KO)の量を求める。
    カリウム(K)=加里(KO)×0.8301
    加里(KO)=カリウム(K)×1.2046
(付記)
1.内標準を用いるときには、リチウムを添加した干渉抑制剤液を正確にとり、標準液及び試料液中で正確に1/10の濃度となるようにする。定量の際にはカリウムと同時にリチウムの発光強度を測定し結果を補正する。
2.共存物質による妨害のみられない試料の場合には、試料液及び標準カリウム液への干渉抑制剤液の添加は省略できる。

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